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【読書感想】美意識を磨く

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Kindle版もあります。

美意識を磨く (平凡社新書0952)

美意識を磨く (平凡社新書0952)

  • 作者:山口 桂
  • 発売日: 2020/08/12
  • メディア: Kindle版

アートはビジネスに役立つ?エリートは美意識を鍛えるべき?
近年、ビジネスにおけるアートや美意識の役割が注目されている。世界一位のオークション会社クリスティーズの東洋美術部門スペシャリストとして、歴史的名品とトップコレクターに長年接してきた著者がオークションの最前線で磨いてきたアートを見る眼とは?
現代美術作家杉本博司氏推薦!美意識を磨き、アートと生きることを楽しむ手引き書。

 これからのビジネスには、アートのセンスが必要だ!という内容の本を最近よく見かけるのです。この本のように、ベストセラーになっているものもあります。

fujipon.hatenadiary.com

 もはや「論理的思考」で他者と差別化するのは難しい時代になっていて、サイエンスでは説明できない直感力ともいうべき「アート」が、これからの勝負どころになる、ということなのです。

 しかしながら、「アートのセンス」あるいは「美意識」って、どうやって身に付ければいいのか?という疑問はありますよね。

 著者は、浮世絵研究者の父親と神社のひとり娘という母親のあいだに生まれ、幼少時から能や歌舞伎やお茶や浮世絵に親しんできたそうです。

 しかしながら、そういう環境にかえって反発した時期もあり、クリムトの『接吻』に強く惹かれたり、広告代理店で激務をこなしたりした末に、クリスティーズに採用され、現在は、クリスティーズジャパン代表取締役社長を務めておられます。

 著者のエピソードを読むと、「食は三代」ではないですが、本人は反発していたとしても、子どもの頃から日本の美術や芸能に触れてきたというの大きいし、「美意識」というのは、そう簡単に習得できるようなものではないよなあ、と考えずにはいられないところもあるのです。

 資本主義を突き詰め、人口知能が進化してくると、学校で勉強するだけでは差がつかず、「生まれ」というか「文化資本」みたいなものが重要視される世界になる、というのは、そういう階級の生まれではない僕にとっては「なんだかなあ」という気がします。

 もちろん、「美意識」を美術品を鑑定したり、芸術を観賞する力、というのではなくて、「物事を多面的に、独自の基準をもってみる力」だと定義すれば、美術館や劇場でなくても、身につけられるものなのかもしれませんが。

 著者は「若い頃から自然と身に付けてきた絵の観かた」を紹介しています。

 何か展覧会に行ったとする。最初の部屋を観終わったら、その部屋で一番気に入った作品をメモして、その絵に関する感想も記しておく。色が綺麗だ。構図が大胆だ、ちょっと変だ、厚塗りの絵具に迫力があるなど、何でもよいから印象に残ったことをメモに残し、再びその絵を確かめに行き、次の部屋に移る。

 次の部屋も足早に回ったら、前室と同じように、最後にその部屋の自分イチ押しの絵を決めて感想を記し、その絵の前に戻って、自分が書いたメモを見ながら再度眺めて、追加の感想があったらメモを加える。

 この作業を、展覧会のすべての展示室でやるのである。そして、全作品を観終わったところで、例えば五部屋あったら、自分が選んだ五つの「イチ押し作品」に1~5位まで順位を付けてみる。そして時間とお金に余裕があったら、展覧会図録を買って帰り、絵の記憶が薄れない内に自分が選んだ「ベストファイブ」についての解説文を読む。

 こんな調子で年間五回、展覧会に行ったとすれば、今度はすべての展覧会からの「年間ベストテン」を決めて、今年の第1位「自分的イチ押し大賞」を決定するのである。

 そうすればまた別の展覧会に行った時に「そういえばこの絵、あの時トップスリーに選んだ絵に似ているな」と感じることがあるかもしれない。それは、例えば同じ画派のグループに属する画家の作品かもしれないし、もしかしたら作家の活躍した時代や街が、一緒かもしれない。また、自分が好きな絵が分かってくると、どうも苦手、という絵も分かってる……それも一つの有益な感性である。

 また、同じ一人の画家の作品でも、人物画よりも橋や建物を描いたものの方が好きだ、ということもあるだろう。この鑑賞法には、少しずつ自分の「好み」が見えてくる、いってみれば謎解きの要素がある。人は普通に展覧会に行っても、自分が一体どういう絵が好きか、その作品が好きなのはなぜか、とまではなかなか考えないものである。好きだから好きだ、自然とそうなる、と曖昧なままにしている人が多い。

 これを読んで、僕は作家の山本文緒さんの『日々是作文』(文春文庫)というエッセイの中にあった文章を思い出したのです。

日々是作文(ひびこれさくぶん) (文春文庫)

日々是作文(ひびこれさくぶん) (文春文庫)

  • 作者:山本 文緒
  • 発売日: 2012/09/20
  • メディア: Kindle版

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