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訂正-アングル:日産が主力市場で本腰、自動車にもネット販売の波


白水徳彦

[北京 9日 ロイター] - 実物を見て、触って、試乗するのが当たり前だった自動車の買い方が、新型コロナウイルスの影響で急速に「デジタル化」しつつある。消費者の変化に自動車各社が対応を迫られる中、日産自動車<7201.T>が本格的なオンライン販売に乗り出した。

とりわけ力を入れているのが主力市場の中国と米国。販売手法の大きな転換になることからディーラーの中には反発する声もあるが、日産にとっては業績が悪化する中でコスト削減につながる。また、新車のラインアップが少ない日産車を売るのに苦戦しているディーラーの間でも、修理など「アフターケアの収入が保証されるなら」と歓迎する声が聞かれる。

<12日の決算発表で>

ショールームに足を運びたがらくなった消費者行動の変化に、会社はどう適応しようとしているのか──。日産のある上級役員が同社の経営陣に説明を求めたところ、アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)が7月下旬の取締役会でプレゼンテーションをした。

そのときのやり取りを知る複数の関係者によると、グプタ氏はインターネットを使った新車販売を強化すると説明。「車選びから納車まで、徹底したデジタルの旅を築きつつある」と話した。ネットで車を比較・検討し、試乗したいモデルを客の手元まで届け、一度も店舗へ行かずに購入プランを作れるようになると語ったという。

ウェブサイトを通じた日産の新車販売は伸びている。複数の関係者によると、中国・欧州・北米における今年上半期の販売は自社サイト経由が11%を占めた。関係者の1人によると、前年同期はそれほどネット販売の状況に注意を払っていなかったが、約半分の4─5%だったという。

「コロナの時代に本格化した新たな購買行動は、これから先もずっと続くものと考えている」と、この関係者は話す。「感染症の大流行は働き方、移動の仕方を変えた。その変化は自動車の買い方にも当てはまる」。

日産は11月12日に7─9月期の決算発表を予定している。ネット販売に関するこうした詳細はその際に公表する見通しだ。同社は今年度、通期で4700億円の営業赤字を見込んでいる。

日産本社の広報担当者はロイターの取材に対し、オンラインで買い物をする需要は新型コロナで一段と強まっており、日産はディーラーとともに顧客の要望に応えていくと回答した。

複数の関係者によると、日産がまず注力しているのが中国と北米だ。自動車の2大市場であると同時に、ネットショッピングの先進国でもある。米国では店舗在庫だけでなく、一定地域の在庫をすべて検索できるシステムを構築した。

中国はそこまでの在庫検索ができないものの、消費者がネットを使った買い物に慣れている。複数の関係者によると、今年は9月までに売れた約75万8000台のうち、17%がオンライン経由だった。

オンライン上で獲得した顧客と日産が位置付けるこうした消費者は、同社の公式サイト(中国では「車巴巴(チェババ)」、米国では「Nissan USA」)を訪れ、連絡先を残す。そして契約の最後まで、あるいは部分的にオンラインを使って自動車を買う。

<直観に頼らないマーケティング>

しかし、オンライン販売へのシフトは、慣れ親しんできた店舗販売戦略からの大きな転換であり、自動車業界にとって困難を伴う。ときに政治力を持ち、メーカーと深い関係を築いてきたフランチャイズのディーラーから強い反発を受けかねない。

新型コロナの感染拡大前から販売が落ち込み、苦戦していた日産にとっては、とりわけ大きな賭けとなる。日産はカルロス・ゴーン前会長の積極的な拡大路線で悪化した財務の立て直しを急ぎ、新車のラインアップが不足している。

関係者2人によると、日産経営陣は収益性の観点から販売のデジタル化を効果的だとみている。輸送費やマーケティング費など販売関連コストの無駄を削ぐとともに、データ収集力を向上できると考えている。

たとえば、今年夏に立ち上げた電気自動車「アリア」の特設ページ。世界で来年発売予定のこのスポーツ・ユーティリティ車(SUV)のウェブサイトには、開始から4日間で120万人が訪れた。関係者によると、訪問者が残した情報から、ラウンジのような室内空間とネットワーク接続サービスが、この車の最も人気の高い特徴であることが分かった。欧州で人気のボディカラーが、「暁(あかつき)」と日産が呼ぶ銅色と黒色のツートンであることも分かった。

また、欧州では56%が四輪駆動を、18%が二輪駆動を好み、残りはいずれも選択しない、あるいは回答をしなかった。米国では好みがほぼ拮抗した。

各地域の需要に合わせて部品やシステムをより正確に発注することができるようになったと、この関係者は説明する。「われわれのマーケティングは、直感に左右されにくくなっている」と、別の関係者は言う。「データに基づき、より正確なものになりつつある」。

<最後の価格交渉で店舗へ>

米デトロイトのコンサルティング会社アーバン・サイエンスで中国市場を担当するチーキャン・リム氏は、伝統的な自動車メーカーはオンライン販売で電気自動車メーカーに後れを取っていると指摘する。先頭を走るのは米テスラ<TSLA.O>のほか、NIOやXpeng、WMといった中国勢だという。

伝統的なプレーヤーの中では日産、トヨタ自動車<7203.T>、ドイツのフォルクスワーゲン<VOWG_p.DE>といった量産メーカーが中国で最も進んでおり、ネット販売の強化に向け具体的に取り組んでいると、リム氏は話す。「たとえばフォルクスワーゲンは、ディーラーに動画をライブ配信するやり方を教え、試乗しながら映像を流すこともある」。

日産の取締役会に近い関係者によると、販売のオンライン化を進める主な狙いは、契約までに客がディーラーを訪れる回数を減らすことにある。平均数回のところ、1、2回まで減らしたいという。

北京市で体育教育のコンサルタントとして働くジャン・ウエイチェンさんは今年の夏、初めて自動車を購入した。彼が選んだのは日産のセダン「シルフィ」で、購入プロセスの最終段階までディーラーへ足を運ぶことはなかった。

ジャンさんが店舗へ行ったのは実物を確認し、最後の価格交渉をするため。それまでに友人のシルフィ(訂正)に試乗したり、日産がウェブサイト上で展開するバーチャルリアリティ(仮想現実)を体験するなどして研究を済ませていた。サイトから割引クーポンも取得した。

「すでにネットであらゆるものを買っている。それが今の生活スタイルだ」と、ジャンさんは言う。「次に車を買い換えるときもまたオンラインで買いたいと思う」。

<ディーラーとの共存は可能か>

ここで1つ疑問が浮かんでくる。ショールームに億円単位の資金を投じたディーラーが、ネット販売を脅威とみなす可能性はないのだろうか。

事情に詳しい関係者2人によると、7月下旬の取締会でグプタCOOはそうした質問を受けた。新しい販売モデルは店舗のディーラーと密接に連携したハイブリッド型であり、フランチャイズ加盟店を切り捨てたり、仕入れ価格と販売価格の差額であるマージンを引き下げるようなことはしないと、グプタ氏は答えたという。

さらにグプタ氏は、ディーラーは納車をし、メンテナンスと修理サービスも提供する必要があると述べ、そこが店舗を持たないテスラなど新興勢力に対する強みだと見ていたという。

ロイターが取材した複数のフランチャイズ店経営者によると、多くの日産ディーラーがネット販売の強化に異論を唱えていない。

「感染症が拡大する中で消費者はネットというチャンネルに依存しており、それはディーラーも同じだ」と、中国南部の広州市にある大型店の店長、イン・ユーフェンさんは言う。「賛成か反対か、我々が決める話ではない。圧倒的多数の顧客はネットで買いたがっている」。

ここ数カ月、日産車を売るインさんの店で購入した人の約3割はネット経由だったという。前年の約2割から増えたものの、インさんは脅威とは思っていない。 「販売価格の最終決定権は私たちにある。手数料やボーナスには影響しない」と語る。

複数の店舗を統括する大手ディーラーの幹部によると、今の環境下で日産車を売るのは簡単ではなく、ディーラーの多くはメーカーに販売プロセスの権限を移譲することに異論がなかった。

「稼げない今、ディーラーは日産から必要以上の在庫を引き受けたいとは思っていない」と、この幹部は説明する。「日産がさらに販売プロセスをコントロールしようが、修理や整備などのアフターケアの収入を保証してくれるなら気にしない」と話す。「日産よ、好きにネット販売をやればいい」──。

*本文22段落目の「セルフィ―」を「シルフィ」に訂正します。

(白水徳彦※ 日本語記事作成:久保信博 編集:石田仁志)

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