記事

家族が家族を手にかける、コロナ禍で犯罪大幅減でも「殺人が増加」する日本の闇

3/3

自宅にいると憎しみが募るのか「殺人事件」の被疑者の半数は親族

最後に、犯罪の種類によってコロナの影響が異なっている点を理解するため、犯罪によって犯人と被害者との関係がどう違っているかを示すデータを紹介しよう。

図表3のグラフは、犯罪不成立、訴訟・処罰に至らないような事件を除いた検挙件数について、被害者と被疑者との関係別に構成比をみたものである。



「殺人」と「傷害」は、親族およびその他の面識のある者に対する犯罪である比率が高い。特に「殺人」は5割以上が親族に対して犯されている。

一方、「窃盗」などの財産犯、および性犯罪は、面識のない者に対して犯される場合が多い。ただし、財産犯のうち「恐喝」、性犯罪のうち「強制性交等」については、面識のある者に対して行われる比率が高い。

「殺人」が親族間で多くなるのは歴史的趨勢であり、これを「ヴェルッコの法則」という。家族の間には深く根差した利害の葛藤があり、家族同士がお互いに腹を立てる割合は時期や場所にかかわらず一定している。これに対して、男性の知人同士のマッチョな暴力を激化させるのは支配権争いの要素が強いため社会環境による影響を受けやすく、また、治安の改善でそうした要因で起こる殺人は減少する。このため、この法則が成り立つものと考えられている。

親族、顔見知りの犯行が多い「殺人」は、コロナの流行で外出を控え、自宅にいることが多くなればなるほど、発生する可能性は高くなると思われる。コロナで「殺人」が減られないのはそうした要因が働いていると考えられる。

一方、もっぱら面識がない被害者に対して犯されることが多い「窃盗」は、留守家庭が減り空き巣に入りにくくなったという影響だけでなく、見知らぬ者同士の触れ合い自体がコロナで大きく縮小したので、それにともなって犯罪件数も全体として大きく減少していると見られる。

----------
本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
1951年神奈川県生まれ。東京大学農学部農業経済学科、同大学院出身。財団法人国民経済研究協会常務理事研究部長を経て、アルファ社会科学株式会社主席研究員。「社会実情データ図録」サイト主宰。シンクタンクで多くの分野の調査研究に従事。現在は、インターネット・サイトを運営しながら、地域調査等に従事。著作は、『統計データはおもしろい!』(技術評論社 2010年)、『なぜ、男子は突然、草食化したのか――統計データが解き明かす日本の変化』(日経新聞出版社 2019年)など。
----------

(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)

あわせて読みたい

「犯罪」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    菅首相発言が「絶対アカン」理由

    郷原信郎

  2. 2

    菅首相は玉木氏提案を受け入れよ

    早川忠孝

  3. 3

    家計が炎上した年収1000万円夫婦

    PRESIDENT Online

  4. 4

    今の改正案では医療崩壊を防げぬ

    玉木雄一郎

  5. 5

    広島県の大規模PCR検査は愚行

    青山まさゆき

  6. 6

    PCR検査で莫大な利益得る医院も

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    橋下氏 いま日本は「欠陥の車」

    橋下徹

  8. 8

    慰安婦判決は異常 迷走する韓国

    コクバ幸之助

  9. 9

    KDDI「povo」への批判はお門違い

    自由人

  10. 10

    車移動に回帰? ペーパー講習混雑

    井元康一郎

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。