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NiziUも被害…「韓国で活動するなら勉強しろ」「追放要求」K-POPアイドルが“歴史問題”に巻き込まれている! - 高月 靖

 NiziUの正式デビューを間近に控え、盛り上がる日本の芸能メディア。日本市場を目指して日本人グループを誕生させたK-POPのローカライズ戦略は、着実に成果を上げているようだ。

【写真】NiziUリマの両親の離婚を歴史問題に絡めて写真入りで伝える韓国現地メディア


12月2日の正式デビューを控えたNiziUのメンバー(NiziU公式Twitterより)

 韓国の一部メディアはNiziUのリマの曽祖父が戦中に財をなした実業家の横井英樹であることから、彼女を「戦犯のひ孫」呼ばわりしたこともある。だが今月2日に両親の離婚が発表されると、「リマが汚名を晴らした」などという報道も飛び出した。何かにつけK-POPの海外進出は、韓国メディアでも注目度が高いようだ。

K-POPの国際化が生んだ「韓国人を激怒させた騒動」

 そんなK-POPアイドルの国際化は、日本だけに限らない。最近ではブラジル、ベルギー、インドネシアなど、メンバーの出身国はいっそう多様化している。

 中国ももちろん、K-POPが当初から最も主要な海外市場に位置づけていた国の1つだ。2005年にデビューしたSUPER JUNIORのハンギョンを筆頭に、これまで少なくとも30人以上の中国本土出身者がアイドルグループのメンバーとして舞台に上ってきた。

 ところが10月下旬以降、そんな中国人K-POPアイドルたちが多くの韓国人を激怒させる騒動が起きている。原因はほかでもない、朝鮮戦争の中国参戦を巡る歴史認識問題だ。

次々に“政治ツイート”する中国人メンバー

 朝鮮戦争は1950年に勃発し、1953年に休戦。中国は1950年に北朝鮮を支援するため参戦し、米韓と戦った。今年2020年の10月25日は、中国の朝鮮戦争参戦70周年の記念日にあたる。

 それに先立つ同月23日には北京の人民大会堂で記念式典が開かれ、習近平国家主席が「米軍の不敗神話を中国と北朝鮮が打ち破った」「偉大な“抗米援朝”戦争は、帝国主義の侵略と拡大を抑えた」と演説。また習国家主席は同月19日にも、「平和を守り(米韓の)侵略に立ち向かうため、“抗米援朝”と国家防衛という歴史的決定を下した」と語った。“抗米援朝”とは文字通り“アメリカに抵抗して北朝鮮を助ける”ことを指す。

 こうした発言に同調したのが、中国人K-POPアイドルたちだ。彼らは同月23日に中国版Twitterとも呼ばれるSNS“微博”で、「#義勇兵の抗米援朝出国作戦70周年記念」のハッシュタグとともに参戦70周年に対する祝いの言葉を書き込んだ。

 2012年に男性グループEXOでデビューしたレイ、EXOを2016年に脱退して現在中国で活動中のルハンは、「歴史を記憶し、英雄たちに敬意を表しましょう!」などのコメントを投稿。また2009年に女性グループf(x)でデビューしたビクトリアも、「歴史を記憶して平和を大切にし、英雄に敬意を表しましょう!」と綴った。

 そのほかのアイドルも、みな文面は大同小異だ。元女性グループI.O.Iのキョルギョン、女性グループ宇宙少女でデビューしたソンソ、ミギ、ソニ、男性グループUNIQのジョイシェン、ムンハン、イボなどが、参戦70周年を祝うコメントを残したと伝えられている。

「いま芸能活動で金儲けをしている国では?」

 いうまでもなく米韓の歴史観は、中国と真逆だ。習国家主席の発言に対して、まず米国務省のスポークスパーソンが10月24日にTwitterで「毛沢東に支援された北朝鮮が、1950年6月25日に韓国を侵略した」とツイート。続いて韓国のカン・ギョンファ外相も同月26日、「国連安保理決議でも朝鮮戦争が北朝鮮の侵略で勃発したことは明示されており、議論の終わった問題」と応酬した。

 “抗米援朝”の記念日を祝った中国人K-POPアイドルに対しても、当然ながら韓国では強硬に反発する声がわき上がった。

 保守系大手紙「朝鮮日報」は「“抗米援朝”を忘れるなという中国出身アイドル、韓国で活動するなら歴史をより勉強してほしい」と題した記事(2020年10月28日付)で、次のように述べている。

「彼らの政府がスターリンや金日成と組んでその“英雄”たちを朝鮮半島に送り、武力で地球上から抹殺しようとした国こそ、いま彼らが芸能活動で金儲けをしている国ではないのか?」

日本の芸能人が「独島は日本領と言ったら黙ってる?」

 さらに韓国大統領府ウェブサイトの“国民請願掲示板”には、中国人アイドルたちに対して政府の対応を求める請願が相次いで投稿されている。“国民請願掲示板”は、20万人以上の賛同者が集まると大統領府が正式に何らかの回答をする仕組みだ。

 10月26日には「中国の朝鮮戦争歴史歪曲に同調する中国人芸能人たちの韓国での活動に制裁を求めます」との請願が登場した。投稿者は「破廉恥な中国の歴史歪曲に同調した彼らが図々しく韓国で活動できないよう、韓国での活動に重い制裁を科すことを願います」と訴えている。賛同者数は、11月8日時点で約2万8000人だ。

 ネットのコミュニティでも、「中国の操り人形が仕事の芸能人は追い出すのが相応しい」「ビザを取り消して追放すべき」「教育の問題だ。彼らは幼い頃から誤った教育を受けてきた」と厳しい声が集まっている。

 また日本を引き合いに出す書き込みも少なくない。

「日本出身の芸能人が独島は日本領だとか、日帝支配が朝鮮半島を改革したと言ったら、黙って見ているか? 中国出身アイドルも同じだ」

「中国の歴史歪曲も日本と同じくらい深刻だ」

 といった調子だ。韓国政府に対しても「日本の問題には迅速に取り組むのに、中国には沈黙ムード。理解できない」と、相手が日本の場合と比べて対応が消極的すぎるとの意見がある。

「改元」で炎上した日本人K-POPアイドル

 中国人アイドルの発言が韓国で物議をかもすのは、これが初めてではない。

 2016年に南シナ海でのフィリピンとの領有権問題を巡ってオランダ・ハーグの仲裁裁判所が中国に不利な判決を下した際、f(x)のビクトリア、女性グループFIESTARのチャオ・ルー、同じくmiss Aのフェイらが“微博”で抗議コメントを投稿。韓国も東シナ海で中国と領有権問題を抱えており、彼女たちの政治的な発言には否定的な視線が集まった。

 また2019年からの香港民主化デモに際しては、多くの中国人アイドルが中国政府やデモ隊を鎮圧する香港警察への支持を表明した。

 男性グループGOT7のジャクソン、SEVENTEENのTHE8、ジュン、PENTAGONのイェナン、EXOのレイ、女性グループ(G)I-DLEのウギ、f(x)のビクトリア、元I.O.Iのキョルギョン、宇宙少女のソンソ、ミギ、ソニらがそうだ。だが韓国の世論は民主化デモに同情的であり、その鎮圧を支持する中国人アイドルたちはまた批判の矢面に立たされた。

 一方でK-POPアイドルが中国で炎上する例も少なくない。

 10月7日には防弾少年団=BTSのRMが米韓の関係者が集まる席上、朝鮮戦争について「私たち両国が共有する苦難の歴史を常に記憶しなくてはいけない」と発言。これに対して中国側は「侮辱だ」と反発、中国の大手物流企業がBTS関連商品の配送を停止するといった事態に発展した。また2016年には女性グループTWICEの台湾人メンバー・ツウィが台湾の国旗を手にテレビ出演したところ、やはり中国側の強硬な反発で謝罪に追い込まれた一件もある。

 日本人メンバーを巡っては、2019年に平成から令和への改元について公式SNSで言及したTWICEのサナが、韓国人ファンから「公式アカウントで天皇の話をするのは非常識」などの反発を招いた例も。

 K-POPの海外展開にともなう炎上騒ぎの火種は、いたるところに転がっているようだ。

(高月 靖/Webオリジナル(特集班))

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