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バイデン氏の当選確実、ゴルフ中に敗北知ったトランプ氏 - 佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

米主要メディアは7日、大統領選で民主党のバイデン前副大統領が現職のトランプ大統領を破り、当選を確実にしたと一斉に報じた。バイデン氏は最終的に大統領選挙人を306人獲得し、大勝となることが濃厚だ。トランプ氏は「選挙は全く終わっていない」として法廷闘争に固執する姿勢を変えていない。バイデン氏は同日中に勝利宣言し、国民に「融和と結束」を訴える見通し。

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CNNが一番に勝利を速報

米メディアなどによると、バイデン氏の当確はCNNが7日午前11時24分に速報、その後、ABCなど3大テレビ、フォックスニュース、AP通信、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどの主要メディアが相次いでバイデン氏の勝利を伝えた。

バイデン氏とトランプ氏は接戦の6州の集計が長引き、獲得選挙人数でバイデン氏253人、トランプ氏214人の状況が丸1日以上にわたって続いてきた。この6州は東部ペンシルベニア(選挙人20)、南部ジョージア(選挙人16)、ノースカロライナ(同15)、西部アリゾナ(同11)、ネバダ(同6)、アラスカ(3)。

しかし、CNNの速報で、バイデン氏がペンシルベニアを制することが確定的となり、大統領選挙人を20人上積みして273人(過半数270人)とし、当選が決定的となった。バイデン氏はその後、ネバダでも勝利し、これまでに獲得した選挙人は279人。同氏はアリゾナ、ジョージアでも優位にあり、最終的には306人の大勝になることが濃厚だ。

バイデン氏の得票は7450万票を上回り、史上最多となった。これはコロナ禍により、郵便投票など期日前投票が急増し、投票率が67%と飛躍的に上昇したためだ。この100年で最高の投票率だ。トランプ氏の得票も7千万票を超えており、今回の選挙に対する国民の関心がいかに高かったかが浮き彫りになった。

バイデン氏の勝因

バイデン氏は今回、2016年の前回の大統領選で、民主党のクリントン氏が失った中西部のミシガン、ウィスコンシン、東部ペンシルベニアを奪回し、同党の“青の壁”を取り戻した。さらに伝統的に共和党が強かったアリゾナ、ジョージアでも勝利する公算が大きい。

今回はトランプ氏の4年間の審判となる信任投票だった。バイデン氏の勝因の背景にはトランプ氏の「分断と対立」をあおる手法に国民がうんざりし始めたことがある。いわゆる“トランプ疲れ”だ。その意味で、バイデン氏は「トランプでなければ誰でもいい」という反トランプ票の受け皿になった。前回、トランプ氏を支持した白人女性らが今回はバイデン氏支持に回ったのが好例だろう。

バイデン氏勝利の直接的な原動力となったのは、なんと言っても新型コロナウイルスへの対応をめぐるトランプ氏の失策だろう。同氏は「春になればウイルスは奇跡的に消え去る」などと楽観論を繰り返し、国立感染症アレルギー研究所のファウチ所長ら医療専門家、科学者らの助言を無視した。同氏は自らのコロナ対応の失敗を棚に上げ、選挙後にファウチ氏を解任するとまでと公言した。

トランプ氏は10月初めに自らウイルスに感染し、入院した。だが、3日で強行退院して選挙戦に復帰、遊説に飛び回った。同氏は自らの強さを「スーパーマン」と誇示し、マスクもせずに密集した集会を開催、支持者らを熱狂させた。ウイルスを軽視するこうした大統領の失政もあって、米国の感染者は1日13万人を超え、死者は23万人を上回った。コロナ禍でトランプ氏の集票の頼みの綱だった経済の落ち込みが痛かった。

トランプ氏の黒人差別撤廃運動への無理解と強硬方針も有権者離れを促進した。人種差別への抗議デモに参加した人たちを「暴徒」と呼ぶ一方で、白人至上主義者を擁護し、オバマ前大統領ら民主党勢力を“影の政府”と呼んで非難し、「Qアノン」などの陰謀論者を「愛国者」と称えた。

2つに割れる側近たち

現職の大統領として再選に失敗したのは第二次世界大戦以来、トランプ氏がカーター(民主党)、ブッシュ(父、共和党)両氏に続いて3人目。トランプ氏が最も嫌悪する「敗者」になった。

トランプ氏がバイデン氏に敗れたことを知った時、バージニア州スターリングにある「トランプ・インターナショナル・ゴルフクラブ」でプレー中だった。ワシントン・ポストによると、同氏は在任中、247回のラウンドを行ったが、これは1週間に2回のペース。同ゴルフ場では97回プレーしたという。同氏はこの知らせに急きょ、プレーを中断し、ホワイトハウスに戻った。

同氏は郵便投票をかねてから「不正の温床」と非難。今回も「勝っていた自分の得票が魔法のように消えてしまった。詐欺行為だ」などと怒りを表明したが、遅れて開票された郵便投票はバイデン氏支持票が多く、ペンシルベニアやジョージアなどでトランプ氏を逆転する“レッドミラージュ”(赤い蜃気楼)現象が起きただけだ。トランプ氏が言うように不正が起きた証拠はない。

トランプ氏は「選挙は全く終わっていない」「合法的な選挙なら容易に勝っていた」と負けを認めず、最高裁にまで持ち込んでも勝敗を争う考えを変えていない。しかし、こうした試みが成功する見通しは暗い。陣営が集計停止を求めて提訴したミシガン州やジョージア州では既に訴えが退けられた。

大統領のホワイトハウスへの居座りに固執する姿勢は身内の共和党内でも批判的な声が強い。「危険で衝撃的」(サントラム元上院議員)、「愚かだ」(ケーシック元オハイオ州知事)などといった具合だ。米紙によると、トランプ氏の選挙後の対応をめぐっては側近らが二つに割れているという。1つは家族を中心とする徹底抗戦を主張するグループ。もう1つは大統領の“名誉ある撤退”を探るグループだ。

トランプ氏の長男ジュニア氏や次男のエリック氏らはツイッターで、「大統領支持に立ち上がって不正と戦おう」などと呼び掛けているが、同調者は少ない。“名誉ある撤退”を探るグループには共和党の有力者らも含まれているとされるが、このまま大統領の「負け戦」に付き合えば、自分たちが返り血を浴びることになりかねないと懸念しているようだ。

こうした中で注目を集めているのはペンス副大統領の対応だ。次の大統領選挙の共和党の有力候補なだけに、「トランプ氏を見限って次に備えるべきだ」(アナリスト)という意見も強まるかもしれない。しかし、一方で「大統領を見捨てた」(同)と受け止められる可能性があり、ハムレットの心境だろう。

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