芸歴57年、西川きよし(74)が漫才分野初の文化功労者に選出。10月27日の会見で「小さなことからコツコツと頑張ってきてよかった」と座右の銘を持ち出し声を詰まらせた。
「きよしの漫才師としてのキャリアは相方・横山やすし(1996年没)の不祥事で事実上解散した89年まで。今や漫才の実績は昨年紫綬褒章を受章したオール阪神・巨人のほうが上だが、彼ら後輩としても『まずはきよし師匠に貰ってもらわなくては後が続かない』といったところ。やはり今も上方漫才界における存在感は別格」(在阪芸能記者)
長男の忠志はじめ、3人の子も芸能界に進んだ ©文藝春秋
66年にやすしに誘われコンビ結成、翌年に上方漫才大賞新人賞を受賞。80年代初頭の漫才ブームでは大阪側の牽引車となった。
「天才と評されたやっさんのボケと、きよしの柔らかいツッコミによるしゃべくり漫才で、関西弁に抵抗のあった関東人も夢中にさせた功績は大きい」(同前)
86年には「中学出がどこまでできるか」と参院議員選挙に挑み当選。3期にわたって議員を務めた。また、67年に結婚したヘレン夫人(74)との仲も至極円満でノースキャンダル。
「結婚当時は、吉本新喜劇のマドンナだったヘレンに対しきよしは格下。吉本は結婚を機にきよしに引退を迫ったといわれるが拒否。ヘレンは夫を信じて苦しい時代から支え続けた。結婚53年の今も理想の夫婦とされている」(同前)
公私ともにスキがないきよしだが、思わぬウイークポイントもあるという。関西のテレビ関係者が話す。
きよしの思わぬ弱点とは?
「フリートークです。6年前に始まった散歩番組『おしゃべりあるき目です』(朝日放送)は素人とのやりとりがキモだったが、2年弱で終了。真面目な人ゆえ相手に失礼があってはと固くなってしまう。このへんがズバッと素人の懐に飛び込む笑福亭鶴瓶とは対照的。現在MCを務める『ごごナマ おいしい金曜日』(NHK)も、局アナらのサポートがあって成立している」
きよしも自らの弱点を知ってか、バラエティなどでは基本的にひな壇の特等席に座り、“イジられ役”をよしとしているという。
「後輩芸人も阪神・巨人には怖くて突っ込めないが、きよしには別。タメ口は利くし、からかってはイジる。きよしも怒らないどころか、収録後に『ありがとう!』と目を剥いて感謝。中堅の千鳥は“きよし転がし”の上手さが関西で頭角を現す一因にもなった。後輩の跳躍台としての役割も果たすところが、“俺が俺が”の明石家さんまなどとは違う懐の深さ」(同前)
後輩育成にも“寄与し”ているきよし師匠。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年11月12日号)