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書店を救え!対アマゾン反乱軍の大躍進

巨大なアマゾンに対抗するオンライン書籍販売の新たな挑戦。

米国でのことですが、まるで巨象とアリの闘いかと思われたものが、コロナウィルスによるパンデミックが追い風になって、スタート1年も経たないのに、売り上げは1日当たり100万ドルを突破、勢いを駆ってこのほど英国進出を果たしました。

しかも、その理念がいい。「売り上げ減に苦しむ街中の書店に財政的支援をする」。その名は、ズバリ<BookShop>。一体、どういう仕組みなのか?興味を惹かれて、サイトに行ってみました。

その<about>ページ。その冒頭には大きな文字による「BookShopはアマゾン帝国に対する反乱同盟軍を演じることを望んでいる」というシカゴトリビューンの記事見出しと「BookShopのおかげで、もうアマゾンから本を買う理由は何もない」とするライフスタイル提案サイトInside Hookの記事見出しが掲げられているのが目に付きます。

その下に、理念が述べられています。「ローカルの独立した書店を財政的に支援する使命を持ったオンライン書店だ」「書店は健全な文化に欠かせないものだと信ずるからだ」「あなたがオンラインで本を買うことで同時に書店をサポートする簡単で便利な方法を作ったのだ」

あなたの近くの本屋を探して見よ、とあるので、読売新聞のアメリカ総局のZIPコード(郵便番号)を入れたら、「徒歩15分以内」の条件で3軒見つかりました。

一番近い1軒をクリックすると、BookShopのサイト内に設けた簡易ホームページが現れ、料理や食品についての本が写真付きでズラリ。そのうちの一冊を選ぶと、まず、定価49.95ドルが4ドル値引きの45.95ドル、出版社、出版日、ページ数、サイズ・重さ、英語、ハードカバー、カテゴリー:ベジタリアンーーといった基本情報が並びます。

次に著者の紹介、レビューがそこそこの長さで載っています。これらはIngramのカタログから編集すれば簡単に作れるようですが、少なくとも日本のアマゾンのページよりずっと充実していて、ちょっとした立ち読み感覚が味わえる作りです。

そこでcheck outに進むと、拍手の図案とともに「あなたは14.99ドルを地元の書店に積み立てました」と出ました。この数字は定価のちょうど30%に相当します。

これが、BookShopの書店援助の一つの方法。つまりこのサイト内の簡易ホームページで本を選んで購入すると「定価の30%」が書店の収入になるのです。

書店収入には別のルートもあります。アフィリエイトからのものです。BookShopはいろんなメディアにアフィリエイトを募っていて、NYタイムズの6月の記事では、その段階で8000を超えていたそうですから、多分、今は1万を遥かに超えているはず。そんなに急速に増えたのは、売れた時に払われる手数料がアマゾンの4.5%の倍以上の10%に設定されているからでしょう。

で、アフィリエーター経由で売れた場合には、BookShopでは定価の10%を別枠で積み立てます。「半年毎に参加書店に均等配分する」のだそう。その額は、今現在「$7,765,465.88 」とあります。米国の参加書店は、英国進出を伝えた最近のGuardianの記事によれば900店以上とのことですから、仮に今時点で900店で均等割すると8624ドル、100万円近くになります。バカになりませんね。しかも、今後は増える一方かも。

そして、BookShopが購入者に送る領収書の情報は、客がオプトインすれば、そのメールアドレスを含めた内容が客の住まいの近くの書店に送られ、その後のDM送付などでリアル書店のファンに繋げる仕組みも考えてあります。

さて、BookShopは、在庫も、その注文を受けての発送、返品受付などの仕事も大手書籍卸のIngramに一任しているとのことです。また、出版社には定価の50%を払っていますから、BookShopの取り分は微々たるものと推定されますが、何せ社員5人の小世帯なので回っているのでしょう。

その創立者にしてCEOはAndy Hunter氏と言います。自身のLinkedInページに写真がありましたので拝借します。とても男前です。たくましき肉体派に見えますがマサチューセッツ大学の哲学専攻出身です。

[画像をブログで見る]

その彼がなぜBookShop開業に至ったか。先のNYタイムズによれば、大要こういうことだそう。

ーーブックショップのアイデアを思いついたのは、10年近く前、非営利のデジタル出版社で文芸誌『エレクトリック・リテラチャー』の編集長をしていたとき。独立系書店がネット通販に適応できずに苦しんでいたから。しかし、その計画を支持する人はほとんどいなかった。

ーーそして2018年初頭、その後、独立系メディア「カタパルト」やウェブサイト「Lit Hub(リテラリー・ハブ)」の発行人を務めるようになったHunter氏は、ABA(アメリカ小売書店協会)の代表者と会合を持つ。そこで、BookShopのアイディアを出し、賛同を得た。

そして昨年11月20日に、書店向けの手紙で2020年1月に開業するとして、その参加を呼びかけたのです。Guardianの記事によれば、当初の参加は250店。2月の売り上げは「月間」5万ドル、しかしコロナ禍が始まると、巣篭もり生活を強いられた人からの注文が増え、3 月には「1日あたり」5万ドル、4月は1日あたり15万ドル、6月までに1日あたり100万ドルと驚異的な売り上げ拡大が続いたのです。

「我々は朝はできるだけ早く起き、夜はできるだけ遅くベッドに入った。うまく機能させるために。(Yehもっと良くしようぜ Yehもっと正しい形にするんだーと歌い出す)White knuckle rideそのものの生活だった」とHunter氏は振り返ります。

「でもとても満足してた。店主が『あなた方が来てくれたことを神に感謝します。家賃も健康保険料も払えた』というようなことを店主が言ってくれたから」とも。

そして今月2日、130店が参加して英国でのビジネスが始まりました。Guardianによればイングランドの田舎町の書店主がこう言ったそうです。

「これまでダビデと巨人のゴリアテ(アマゾン)の闘いみたいだったが、(ダビデの武器の投石機に代わって)突然バズーカ砲を持たされたようで少し面食らっているくらいだ」

そして英国のある出版人は「英国の書店の歴史の中で、確実に革命的瞬間だ」と。

BookShopサイトのFAQの中にはこういう一節もありました。

「今後は世界中の書店を応援したい」ーー日本にもこの男前がバズーカ持参で上陸する日が来るかしらん。アマゾンのせいで、日本の街中から書店が消えてしまう前に。

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