- 2020年11月07日 12:52 (配信日時 11月07日 11:15)
自己肯定感がマシマシになる『鬼滅の刃』の名言7つ
1/2大ヒット作『鬼滅の刃』の魅力の一つは、各キャラクターの力強いセリフです。心理カウンセラーで、『「鬼滅の刃」流 強い自分のつくり方』の著書がある井島由佳さんが、その中でも理不尽に押しつぶされそうなときに効く言葉を厳選、解説してくれました。
※煉獄杏寿郎の煉は「火」に「東」が正式表記。鬼舞辻無惨の辻のしんにょうの点は一つのほうが正式表記。

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並外れたレジリエンス
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、わずか10日間で興行収入107億円を突破し、日本で上映された映画の中で最速の記録を出しました。そして、動員人数が790万人を超すという勢いは、コロナ禍の閉塞感を打ち破ってくれているように見えます。
『鬼滅の刃』は“ブーム”となり正に社会現象を引き起こし、年齢・性別を問わず多くの人に感動を与える作品となりました。
『鬼滅の刃』旋風を巻き起こした理由は幾つかありますが、物語の背景とキャラクターのセリフは要因の1つと考えられるでしょう。
新型コロナウイルス感染症がもたらした負のスパイラルは多岐にわたりますが、理不尽な状況にぶつかるという経験は、少なからず読者の皆さんが通ってきた道にもあったのではないでしょうか。
『鬼滅の刃』の舞台は、鬼という大厄災が降りかかる理不尽極まりない世界。押しつぶされそうなとき、主人公の竈門炭治郎たちキャラクターは、自分や他者に働きかけ立ち上がっていきます。彼等は非常に強いレジリエンス(再起力)を持っているのです。レジリエンスを構成する要素(力)は、感情調整力、衝動調整力、共感力、楽観力、原因分析力、自己効力感、リーチアウト力(働きかけ力)です。
力強いセリフの中から、レジリエンス(再起力)を学べる7つを紹介します。
1.苦しいときは、自分で自己肯定感・自己効力感を高める
「真っ直ぐに前を向け‼ 己を鼓舞しろ‼ 頑張れ炭治郎頑張れ‼ 俺は今までよくやってきた‼ 俺はできる奴だ‼ そして今日も‼ これからも‼ 折れていても‼ 俺が挫けることは絶対に無い‼」
(3巻第24話「元十二鬼月」より) 竈門炭治郎
主人公炭治郎の自分を認める力、自分を信じる強さが表れている言葉であり、自己効力感の高さを示しています。
通常、他者から褒めたり信じてもらえたりすることが、肯定感や効力感を高めていきますが、常日頃から自分自身に言い聞かせることで、窮地のときに他者に頼らずとも自分を高めていくことが可能となります。
また、「頑張れ」は人から言われるとプレッシャーとなることがありますが、自分で自分に言い聞かせるからこそ鼓舞することにつながり、心理学的には自己成就的予言になります。自己成就的予言とは、「○○となる」と思って行動していると、実際にその通りの結果になることです。炭治郎のように、自分を認める言葉を自分にかけてあげることで、苦しい状況から打開していくきっかけがつかめていけるでしょう。
2.経験を信じて進む
「あなたは上弦の鬼と戦って生き残った これは凄い経験よ 実際に体感して得たものはこれ以上ないほど価値がある 五年分十年分の修業に匹敵する 今の炭治郎君は前よりももっとずっと強くなってる」
(12巻第101話「内緒話」より) 甘露寺蜜璃
「大したことはしてきていない」と自分を過小評価してしまうときがあります。どのような仕事でも、振り返ってみれば通ってきた道があり経験があるはずです。それが自分で選びとった経験ではなく、たまたまやってきたことであったとしても、それを思い出すことで、自信を取り戻すことができることもあります。

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知識だけではなく経験。練習だけではなく本番を迎えてきた事実。その中で行動することができていたのなら、その経験値は確実に貯まっているものであり、自分を適正評価してよいのではないでしょうか。それに、自分の問題点も、過去の経験から原因分析をすることができます。
特にこの言葉は、後輩や部下に言ってあげると「認められた」と感じて、炭治郎のように自信を取り戻すきっかけになっていくでしょう。
3.喪失感を強さに変える
「失っても失っても 生きていくしかないです どんなに打ちのめされようと」
(2巻第13話「お前が」より) 竈門炭治郎
恋人を失った青年に炭治郎がかけた言葉です。禰豆子以外の家族を鬼に殺された炭治郎が自分に言い聞かせるように紡いだ静かな覚悟と言えます。
人間の悲しみやつらさにはさまざまなものがありますが、とりわけ「喪失経験」はライフイベントの中でも大きなダメージを残し、感情調整が困難なときがあるもの。
「喪失」には、人や物、出来事などいろいろなかたちがあります。失ったその痛みから立ち直るには、他者と関わることと行動を起こすこと。どんなにつらく苦しくても、生きている自分があり、時間は止まらない。つらいことを忘れるのではなく、抱えながら前に進む。思い出と覚悟が自分を前に押し出してくれます。
4.心を燃やして前を向く
「胸を張って生きろ 己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと 心を燃やせ 歯を喰いしばって前を向け 君が足を止めて蹲(うずくま)っても時間の流れは止まってくれない 共に寄り添って悲しんではくれない」
(8巻第66話「黎明に散る」より)煉獄杏寿郎
先の「失っても」を後押ししてくれる、杏寿郎の切なる信念の言葉です。『劇場版 無限列車編』でも聴ける名セリフです。
杏寿郎の一連の言葉は、これ以後の炭治郎や嘴平伊之助、我妻善逸の行動に大きな影響を与えました。鬼舞辻無惨と最後の戦いに挑んでいた炭治郎は、難しい状況の中で「それでも俺は 今自分にできることを精一杯やる 心を燃やせ 負けるな」(22巻第192話)と言い聞かせますが、杏寿郎の願いと思いが重なったものとなりました。
胸を張る・歯を喰いしばる・前を向く・心を燃やす。どれも俯かず前に進んでいくための態度です。つらいとき、悲しいときに俯き、蹲っていても何も変らないから、物事を良い方向へ変えられると信じ、未来に希望を持つ楽観力を心のエネルギーとして滾(たぎ)らせて立ち上がることの大切さを説いています。
一見、強い人にしかできないような言葉に聞こえますが、これまでのセリフと同様に、全て「言い聞かせて」いるのです。自己暗示のようにも見えますが、それが自己宣言になり、自己成就につながっていきます。自らに言い聞かせることは、思考転換を図り受け止め方を変えていく認知変容でもあります。
強い人ができることではなく、強く有りたい、強くなっていこうとするからこそ、出てくる言葉なのです。
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