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ゾクゾクしてトランス状態になれる!?「ASMR」動画のYouTube検索が止まらない

YouTubeの検索ワード数ランキングで世界第3位*1となった「ASMR(エー・エス・エム・アール)」というワードをご存知だろうか? 自律感覚絶頂反応(Autonomous Sensory Meridian Response)の頭文字を取った言葉だ。

*1 Top 20 YouTube Searches of 2020 So Far(2020年7月時点)

「ASMR」は「トリガー(引き金)」となるものを聞く・見る・感じると起きる複雑な感情の状態をいい、一部の人だけに起きる現象だ。

頭のてっぺんからゾクゾクする感覚が起こり、それが首や手足へと広がる。その感覚が波のように押し寄せることで、トランス状態に陥ったかのような没入感、高揚感、リラックス感が伴うのだ。

「ASMR」という言葉が生まれたのは10年ほど前で、以来、人々の関心が爆発的といっていいほど高まっている。発端となったのは、2009年にささやき声だけが流れる短いYouTube動画が広く拡散されたこと。「ASMRtist(エーエスエム・アーティスト)」と呼ばれる人たちが投稿する「ASMR動画」が陶酔効果を誘うと、数万超えの再生回数を集めている。

Whisper 1 - hello!


あいにく、人々の熱狂ぶりに科学的な研究は追いついておらず、論文の数もまだまだ少ない。そこで筆者たちは、この不思議な事象への理解を深めるため、研究ネットワークを立ち上げ、クラウドファンディングで資金集めを行っている*2。ASMRについてすでに分かっていることについて、以下にまとめたい。

*2 ASMRNet: Establishing a global research network and prioritised agenda for ASMR

トリガーとなるものには一貫性がある

先述の通り、ASMRは誰もが体験するものではないが、体験者たちからの報告には一貫性が見られる。

第一に、ASMR現象は通常、子ども時代に現れることが多い。よくある例としては、背中に指で文字を書いて、「当ててみて!」と言われたときなどに感じるゾクゾク感などがある。ASMRが何か特殊な感覚なのだと気づいた人たちにも、「誰もが同じ体験をしていると思ってた」という人もいれば、「自分だけに特有の感覚だと思っていた」という人、両方いるのが興味深い。

photo:ChesiireCat / iStockphoto

第二に、当事者それぞれに特有の感覚はあるものの、ASMRのトリガーには一貫性が見られる。トリガーとしてよくあるのが、やさしいタッチ、ささやき声、穏やかな話し方、間近で人から注目される、繊細な手の動き、バリバリという音など。こうしたトリガーが組み合わさってASMRを引き起こすこともよくある。例えば、髪を切ってもらう、誰かが洗濯物をたたむ作業を見るなど。なので、ASMR動画でもこうしたトリガーを組み合わせたものが人気だ。

間近で人から注目されるASMR動画

髪を切る設定の動画が眠りを誘う?!

脳の画像研究から分かっていること

ASMRに関する脳の画像研究はこれまでに三つ行われている。

1つ目は、ゾクゾク感が起きている時に脳のどの部位が活性化するかをみるもの。ASMR体験者10人に参加してもらい、fMRIマシーン*3に入ってASMR動画を見せたところ、ゾクゾク感を感じている間は、感情・共感・親和行動に関わる脳の部位が活性化することが分かった*4。

photo: Viktoria Ruban / iStockphoto

サンプル数も少なく暫定的な結果ではあるが、研究者らはASMRを、人の世話をする・身だしなみを整えるといったふるまいになぞらえ、ASMRによって社会情緒的なつながりに関わる神経経路が活性化すると示唆した。これは、ASMRを感じる人は他者とつながりを感じやすいとする別の研究*5によっても裏付けられる考え方である。

*3 MRI(核磁気共鳴)を利用して、ヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法。

*4 An fMRI investigation of the neural correlates underlying the ASMR(2018)

*5 More than a feeling: Autonomous sensory meridian response (ASMR) is characterized by reliable changes in affect and physiology(2018)

他の2つの研究は、ASMRを感じる人と感じない人両者の“脳が休んでいる状態”の差異を見るもので、ASMRを感じる人たちの神経回路網はより曖昧で混ざりあっていることが分かった。つまり、感覚から引き起こされる感情的な反応を抑える力が弱まってASMRが起きていると推測されるのだ。というとネガティブに聞こえるかもしれないが、必ずしもそうではない。私たちは皆、外の世界から情報(景色、音、匂い)を取り込んで、心を揺さぶる体験を引き起こすわけだが、その体験は人によって異なるものなのだから。

内なる世界と外の世界のつながりを抑制できなくなると、より強烈ではっきりとした感情を体験する。例えば、大好きな音楽を聴いて鳥肌が立つとか、アートを見て畏れのような複雑な感情を抱くなどだ。実際、ASMRを感じる人たちは複雑な多感覚体験ー音楽を聴いて背中がゾクゾクするとか共感覚を覚える等ーを経験する可能性が高いことが分かっている。その一方で、ASMRを感じる人たちは音恐怖症(ミソフォニア)*である可能性も高いとされており、これは決して喜ばしいことではない。

*特定の音に対して怒りや憎しみといったネガティブな感情が起きる症状。

共感性の高さがなせるわざ

研究者らはASMRを感じる人とそうでない人の“神経系以外の差異”を理解しようと努めてきた。ここまでの研究から言えることは、ASMRを感じる人たちは没入感が強く、その場の雰囲気にどっぷりのめり込む傾向がはるかに強いということ。

シャカシャカした音がASMRを引き起こすことも
YuliaLisitsa/ Shutterstock

また、ASMRを感じる人は性格特性として「新しい経験にオープンである」のスコアが高めで、これは想像力や知的好奇心のたくましさ、アートや美しいものを鑑賞するのが好きというかたちで現れる。また共感性も高く、「他者を思いやり心配する」「想像や架空の世界にどっぷり浸かる能力」の2つの項目が高い傾向にある。

セラピーツールとしての期待

ASMR動画についたコメントを一目見れば、それらが本当に当事者たちの助けになっていることが分かるだろう。気分が良くなり、不眠症を和らげ、孤独感を打ち消す効果もあるとされており、これらを裏付ける科学的な予備的証拠も入手できている。

ASMRを感じる人たちはASMR動画を見ると心拍数が大幅に下がり、ストレス軽減レベルはマインドフルネスや音楽療法で得られるものに匹敵するほどだった。しかし、ASMR動画がセラピーツールの一つとなり得るのかまではまだ分かっていない。

ASMRについては解明されていないことの方が多く、研究されるべきテーマはごまんとある。さらなる研究を重ねることで、なぜASMR現象を体験するのは一部の人だけなのか、答えを出せる日を期待したい。

著者
Giulia Poerio
Associate lecturer, University of Essex
※ 本記事は『The Conversation』掲載記事(2020年9月15日)を著者の承諾のもとに翻訳・転載しています。
The Conversation
「ASMR」についてのTED トーク
ASMR: The Whispered Revolution of Relaxation

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