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エレベーター事故をスルーするノーリスク教の信者達

リンク先を見る 先週、シンドラー社製エレベーターの誤作動による痛ましい死亡事故が発生した。同社製エレベーターでは2006年にも誤作動による死亡事故が発生しており、その安全性が再びクローズアップされ大きく取り上げられた。
 事故の原因がエレベーターの構造的問題だったのか、それとも保守点検等の問題だったのかは定かではないが、今のところ「制御回路の不具合だった可能性がある」とだけ伝えられている。

 エレベーターは全国に70万台以上あるそうだが、そのエレベーターが1日に上下稼働する回数は少なく見積もっても数千万回に達し、1年間では数百億回にまで達するだろう。今回の事故が前回の死亡事故から6年経過していることを考えると、エレベーターの誤作動による死亡事故発生率は数千億分の1以下ということになる。しかしながら、それはあくまでも死亡にまで至る確率であり、誤作動による怪我や、単なる誤作動ならケタ違いに有るのだろうと思う。

 特に都市圏に住んでいる人なら、ビジネスやショッピング等で毎日のようにエレベーターを利用していると思うが、まさかエレベーターが、乗り降り中に突然動き出すなどとは誰も思っていない。一度、実際に誤作動事故にでも遭遇しない限り、リスクのある乗り物(機械)だとは意識することもできない。それが大部分の人々の認識だろうと思う。

 前置きはこの辺で置いておくとして、今回、なぜこの問題を取り上げたのかと言うと(察しのよい人なら既にお気付きのことだと思うが)「リスク」問題を考えるためである。無論、原発のリスク問題との対比だが、誰もこの問題を論じていないようなので、少し述べておこうと思う。

 先にも述べた通り、日本国中の人々は、《エレベーターは安全な乗り物》だと思っている。実際、エレベーターの落下事故というのは未だに起こったことがないらしく、かなり安全性の高い乗り物であることは間違いない。
 そんなエレベーターが数年ぶりに死亡事故を引き起こし、リスクが有る乗り物だということが再判明した。マスコミは当然の如く、この問題を大々的に取り上げた。しかし、人々はなぜか「エレベーターは危険だ!」とは言わない。「リスクが有ってはいけない」ということで、あれほど「原発反対!」を訴えかけていた人々の誰一人として、「脱エレベーター!」とは叫ばない。それはなぜだろうか?

(答え)自分自身には直接的に関係のない問題だから。

 「脱自動車」も「脱飛行機」もこれと同じ理屈であり、自分自身には被害が及ばない(と思っている)リスクについては、無問題と処す。それが、ノーリスク教の信者達の特徴でもある。
(ここで述べた「ノーリスク教の信者達」とは、原発事故に直接関係がなく、脱原発を訴えている人々のことを指す)

 彼らにとっては初めから「リスク」などはどうでもよく、自分自身に火の粉が飛んでくる可能性が無いと思えれば、それでノープロブレムとなる。
 彼らが語るところの「リスク論」はただの詭弁であり、本当のところは、「自分自身に被害が及ぶことはいけない」という意味での狭義のリスク論に過ぎない。つまり、主語は「国民」ではなく「自分」なのだ。

 彼らだけでなく、国民の多く(ほぼ全員)も、エレベーター等のリスク問題には非常に冷静であり、そのうち、技術が進歩して安全なエレベーターが出来上がると信じており、それまでの間に自分自身が事故に遭うなどとも思っていない。
 被害の大小に違いが有るとはいえ、今回のエレベーターのリスク問題は、基本的には原発問題と同じであると思えるのだが、なぜ人々は原発問題には冷静になれないのだろうか?

 ドイツ等の一部の国を除いて、諸外国の人々は原発問題にも至って冷静であり、日本の原発事故をプラスに捉えている国も多い。「プラス」と書くと語弊や誤解があるかもしれないが、あれだけの巨大な地震でも壊れなかった(事故の直接的原因は津波による電源トラブル)日本の原発を高く評価している国は多い。その証拠にアメリカでは、34年ぶりに原発を新設することになり、中国は100基以上の原発を増設予定だ。

 かつて、悪名高い『日独伊三国(軍事)同盟』というものがあったが、これになぞらえて『日独伊三国(脱原発)同盟』と揶揄している識者もおられるが、まさに言い得て妙である。
 この道を選択することは、経済敗戦への道となる可能性が極めて高いと思われるが、性懲りも無く日本の左翼系マスコミは再び国民に同じ道を歩まそうとしている。
【参考文献】脱原発のウソと犯罪(中川八洋著)

 エレベーターが危険だからといって、階段を利用する人は稀だと思うが、原発が危険だから、自然エネルギーを利用しようという人々は多い。
 リスクが有るという理由で、全国のエレベーターが使用禁止になり、階段を利用しなければならなくなると、人々の労力やストレスは甚大なものとなるだろう。階段を上り下りすることで転んで怪我をする(または死亡する)ケースは、おそらくエレベーターを利用している時以上に増加するはずだ。階段を利用することで骨折したというような話はそこらじゅうに有る。同じように、自然エネルギーを利用することによって起こる事故も有り、その事故発生率は原発を利用する以上に高くなる可能性も大いに有る。しかし、そういったリスクには全く無頓着というのも、ノーリスク教の信者達の特徴である。

 エレベーターにも階段にもリスクは付き物だが、「リスクが有ってはいけない」ということであれば、どちらも利用できないことになり、終いには、建物は1階建ての平屋しかいけないということになってしまう。
 少々、オーバーな話だが、東京スカイツリーやあべのハルカスなど、上へ上へと目指してきた日本の建造物も全て無駄になり利用できないということになってしまう。こうなってしまうと、まさに経済版『下山の思想』である。

 今回のエレベーター事故の場合、製造元のシンドラー社が原因究明と改善に努めるべきであることは言うまでもないことだが、エレベーターと同様、原発も技術の進歩によってリスクを限りなくゼロに近付けていくことは可能なことである。
 この世にリスクがゼロというようなものは無い。そのリスクを限りなくゼロに近付けていくという努力を放棄することが善であるなら、エレベーター事故が起こっても、その原因を究明すること自体が意味の無いものになってしまう。

 「原発とエレベーターを同じ次元で語ること自体、馬鹿げている」と言う人がいるかもしれない。ある意味、その通りだ。しかし、そんな馬鹿げた比較をしなければ、脱原発という発想が、およそ現実味のない空論(SF)であることに気が付かない人がいるということである。「2030年に原発ゼロを目指す」というのは、「2030年にエレベーターゼロを目指す」というのと、同じようなものである。
 「脱原発」と「脱エレベーター」、この全く違うように見える2つの言葉が、本質的にはほとんど同じもの(実現不可能)であるとするならば、この国で大勢を占めている言論が如何に間違ったものであるかが解るはずである。

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