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違法風俗の街からリトルチャイナに 明るさ取り戻した西川口が抱える課題【止まり木の盛り場学 第9回】

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惑わぬはずが惑いまくる「40男」コンビが昭和の盛り場の現在を伝える人気連載「止まり木の盛り場学」。今回は埼玉県は川口氏にある西川口へ向かいました。以前のイメージはどこへやら、現在はリトルチャイナと呼ばれるほどの中国人街に変貌している西川口。新たな住人と街の関係はどうなっているのでしょうか。

二昔ほど前の西川口は違法風俗店が乱立していたことで、一部の特定ファンにその名が知られていたが、それを心苦しく感じていた昔からの住人がいたことも事実。2004年に実施された浄化作戦によって、街は明るさを取り戻している。ちなみに、同時期の横浜黄金町でも違法風俗店「ちょんの間」が摘発されている。

殺害予告、ガラス破壊…売春街浄化後の「アートでまちおこし」はいかにして進んだか 横浜・黄金町の青線跡を歩く【止まり木の盛り場学 第3回】

その後の駅周辺では、代わって中国料理店が相次いで出店。現在はリトルチャイナとまで呼ばれるようになり、新たなにぎわいを見せる街に生まれ変わりつつある一方で、ゴミ出しルールを守らない人や、夜間の騒音などが目に付くようになったという。

西川口の盛り場はどうなっているのか、二人が訪ねた。

紋切り型のイメージで語られてきた西川口の今

渡辺:違法風俗店がなくなった後、多くの中国料理店が軒を並べるようになった西川口ですが、日本人でも気軽に中国料理店を利用できるようにする活動「西川口パンダプロジェクト」を進めている主宰者・中村貴広さんにお話を聞いてみたいと思います。

横田:西川口って、二駅先は都内(赤羽)ですし、都心まで30分くらいなのに家賃相場は高くない。ファミリーにも暮らしやすい街になってきていますよね。とはいっても飲み屋街もちゃんとある。どんなお話が聞けるか、楽しみです!

協賛店に配布しているパンダシールを指さす西川口パンダプロジェクト代表・中村貴広氏

渡辺:こんにちは。早速ですが、中村さんが立ち上げた団体について教えてください。

中村:西川口の中国料理店を盛り上げるというのが目的です。私自身、仕事で西川口によく来るのですが、仕事上がりに一杯やろうと中国料理店に入っても、会話もメニューも中国語だから、コミュニケーションが取れない、ということが続いて楽しめなかったんです。西川口は日本人と中国人が「共存」していても、まだ「共栄」までにはいっていないなと感じて、何か自分でできないかな?と思って。2019年4月から始めました。

渡辺:確かに、外観も中国語だけのお店が多いですね。でも、かえって本格的な雰囲気で、私は期待してしまったのですが、中国語しか通用しないとなると、ハードルは高いですね。

中国料理店のネオンがまぶしい

中村:解決策として、協賛店の店頭とメニュー表に、このパンダのステッカーを貼っています。中国語で書かれたメニューをすべて日本語に翻訳するのは現実的ではないので、安心マークとして店頭にパンダシールを、そしてメニュー表にも日本人にも好まれる味付けの料理にパンダシールを貼ってます。例えば、春巻きが日本人にも好まれる味付けなら、春巻きのメニューにパンダを貼ると。日本人が使いやすく、しかも中国料理店にも負担が少ない方法を取っています。

横田:なるほど。できることから始めたというわけですね。となると、パンダシールの意味をアナウンスしていくことも必要ですよね?

中村:そのためのチラシを店頭に置いてもらっているのですが、いつの間にかなくなっていたり、現場での運用がうまくいかない面も多くあります。このあたりはまだまだ課題が残っています。

報道もされたゴミ問題 対策は現在も継続中

渡辺:ゴミ問題はよく報道でも耳にしますが、具体的にはどんなことが起きてきたんでしょうか。

中村:店舗のゴミは、「事業ゴミ」として出すべきなのに、回収業者と契約せずに、家庭系ゴミとして出してしまったり、契約している近隣の店のゴミ捨て場へ勝手に出してしまうケースもありました。そしてそれにまつわる、いざこざとかですね。私たちは月に一回、ゴミ拾いのボランティア活動などもしています。ただ、ゴミ問題は根本的な解決にはなっておらず、放っておいたらきっと元に戻ってしまうでしょうね。でも上から言ってもよくないというのが僕の考え。日本人、・中国人、お互いの理解が必要だと思っています。

川口市役所のホームページから。事業系ゴミは持ち込みか、委託業者を介して処理する義務がある。事業系ゴミシールを貼るだけというケースが多い都内の仕組みと異なる

横田:となると中国側の活動のパートナーなどはいるんでしょうか?

中村:この店(取材場所の中国料理店)のオーナーの女性もコアなメンバーの一人ですよ。毎月、ゴミ拾いの活動をしています。

横田:マナーに難ありの店もあるけれど、同じ国の人たちでも問題を解決していこうと足を使って、地道に活動している方もいるのですね!

渡辺:中村さんの活動も中国料理店の経営者と密接に繋がらないとなかなか実現できなそうですが、もともと中国の方と交流はあったんですか?

中村:いえ、それが全然なかったんです。最初は普通に西川口のいろんな中国料理店に食べに行って、だんだん仲良くなりました。中国語もできないので、メンバーの人に翻訳してもらったりしてチラシを作ったりしています。いまは7店舗が協賛店です。西川口全体では60~70店舗の店があると言われていますね。

ゴミ捨て場には、不法投棄禁止を呼びかける中国語のポスターも

渡辺:活動は、では順調でしょうか?

中村:うーん(笑)。いま立ち止まって考えているところがありますよ、正直。繁盛してる店にとっては現状維持でいいんですよね。そうでない店はそれなりに話を聞いてくれるんですが、温度差があるんです。中国人相手に繁盛している店は、変わる必要がないんですよね。人気店はかなり混んでますよ。日本人が来店しなくても、まったく困らない。味付けも中国人好みと日本人好みは、かなり隔たりがあるんですよ。

渡辺:おいしければ国籍を問わずみんなが集まる、という簡単な問題ではないんですね。中村さんからみて、現状は、功罪それぞれありますか?

中村:それなりに街がにぎやかになって、それを面白く捉えられる人は来るだろうし、抵抗を感じる人は来なくなる、というだけじゃないでしょうか。地元でも色々意見はありますが、このあたりの土地を持っているオーナーにとっては、いい点もあります。違法風俗が増えて家賃相場が下がっていたのが、こうして中国の人たちが積極的に店を借りていますからね。

横田:マスコミが記事にするときは、ある種のサクセスストーリー仕立てになりますよね。例えば、「違法風俗がなくなって、移住してきたのは中国人。ゴミ問題などはあったが、日本人と中国人が一致協力して綺麗に! 共生社会の完成」みたいな。理想論としては、個人的にもそうなってほしいですが、その段階までは残念ながら行っていない、ということでしょうか?

中村:そうですね。将来もどうなるか私にはなんとも言えません。

渡辺:では活動の上での一番の課題点はどのあたりでしょうか?

中村:いろいろな活動をしようという動きは中国人社会にもありますが、一つにまとまっていないということですね。

横田:船頭さんが多い感じですかね? 活動はやはり、SNSを活用しているのでしょうか。私が前に別の中国人コミュニティを取材したときは、ウィーチャット(WeChat「微信」)が多用されていました。趣味でも仕事でも、なにかのテーマ別でいくつものグループがあって、多くの人が同時にいくつかに入り、情報交換や人を集めるときには必ずといっていいほど使われていました。

中村:あります。西川口の中国料理店の人たちもいくつかグループを作って活動しています。私も全部は把握していないほどですよ。さっきのゴミ拾い活動もそのSNSを活用していますね。中国はそもそも広いので、エリアによって、文化も言葉もまったく違う。中国は一つの塊ではない、ということを改めて感じてますね。この街一つでまとまると言っても、なかなか答えが見つかりません。これ、記事になりますか?(笑)

渡辺:大丈夫ですよ(笑) 

横田:ヘンにストーリー作って整理してしまうより、中村さんの迷いそのものを伝えられたらいいなと思っています。

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