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医薬品登録販売者の虚偽証明は西友だけなのだろうか?

行政規制の手法が事前規制から事後規制へと重心が移行することにより、どのような影響が国民生活に及ぶのか・・・ということを考えさせられる事件が続きました。ひとつは田中文科相による大学設置不認可問題であり、もうひとつは大手スーパー西友さんにおける医薬品登録販売者の資格取得のための虚偽証明書発行問題です(たとえば中国新聞ニュースはこちら)。事前規制の緩和により、医薬品登録販売者なる資格が誕生したことに起因する不祥事です。大学設置不認可問題は、まさに事前規制(審議会手続きにおける準則主義への移行)と事後規制(第三者認証制度の活用)とのバランスをいかに認可判断のうえで考慮すべきか、という問題でありますが、本日は西友さんの問題を取り上げたいと思います。

一般用医薬品指定の95%を占める大衆医薬品販売につきましては、2006年の薬事法改正により、薬剤師さんがいなくても登録販売員の方が常時店舗販売に従事していることで可能となりました(規制緩和)。そこで大手スーパーなどでも店舗展開戦略がさかんになりましたが、その登録販売者の受験資格として、薬剤師の下での1年間の販売実務経験等が求められています。西友さんでは、この実務経験の証明書を、所定の実務経験のない社員に対しても、実務経験があったものとして内容虚偽の証明書を発行していた、とのことです。すでに200名以上の社員の受験において虚偽証明書が発行されているそうで、現在も社内で調査中とのこと。

新聞報道によりますと、今年8月に匿名情報が厚労省に寄せられ、これを契機に行政の調査が開始されたそうです。こういった不正は情報提供(おそらく内部告発)によって明るみになってしまうわけですから、やはり不正はなかなか隠し通すことがむずかしい時代になったと思います。西友さんによると「各店舗の販売責任者の認識にズレがあった」と述べておられますが、全国の各店舗で同様の虚偽証明書が使われているので、一人や二人の販売責任者の認識問題では済まないものと推測されます。

これほどまでに全国規模で不正な証明書が作られていたわけですから、たとえ組織トップが認識していなかったとしても、多くの現場管理責任者が不正な行為だと認識していたはずであります。しかし、現場において「バレたら新聞ネタになるから、みんな黙っとけよ」といった意識があったのでしょうか。西友さんの疑惑の受験者自体が200名を超えるほどなので(つまり受験者自身も疑惑を知っているはずなので、不正が発覚する可能性は高いわけですから)、そもそもバレたらたいへん、という意識がなかったのではないかと。むしろ現場の管理責任者からしますと、それほど悪気があって行っていたものとは、どうも思えません。むしろ、法令違反とは承知していても、なにか自分の行動を正当化してしまう事実が存在していたのではないでしょうか。「こんなもん、自己申告なんだから」といった軽い気持ちもあったと思いますが、一番リアルに考えられる正当化理由は、「ほかのスーパーやディスカウントショップでも同じようなことをやっているではないか。これくらいやらないと、店舗拡大戦略のうえで他の大手小売りに負けてしまうし、第一、商品を販売できる者が少なくなり、顧客の皆様にご迷惑をかけてしまうではないか」といったところではないかと思います。

西友さんが、経営トップからして故意的に不正証明を推奨していたとすれば問題外でありますが、このコンプライアンス経営のご時世、おそらくそんなことはありえないと思いますので、やはり現場管理責任者の「ほかの企業だって、普通にやっていたではないか」という正当化理由が大きいのではないかと推測いたします。ただ、この正当化理由が本当だとしても、社内調査の結果を公表する段階で正直に公表できるかどうかは未知数です。具体的にどこの大手小売業者がやっていた、と特定の企業名を公表することは差し控えたいでしょうし、そんなことを公表すると自社の社会的評価をかえって低下させてしまう可能性があります。ということは、社内の誰かが営業戦略を実行することに熱心なあまり、ついつい悪いことだと承知しつつ、不正を犯してしまった、と調査結果で述べることになりそうです。当ブログでも何度か「他社をかばうコンプライアンス」というテーマで取り上げたことがありますが、こういったところにも真実をきちんと公表できない企業の悩みが伺えるところです。

ただ、BtoCの典型である西友さんにとって、「消費者の生命、身体の安全を軽視する企業姿勢」は大きな問題だと世間から受け止められるわけでして、どこまで自浄能力を発揮して社内調査を誠実に行うのか、これからの課題になりそうです。おそらく、こういった不祥事が表沙汰になっても、社内では「有事の感覚」の方と「まだまだ平時の感覚」の方に意識が分かれているのではないかと想像いたします。

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