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ディズニーはなぜ成功したのか。パフォーマンス能力と財務手腕の分有~ 政治家はパフォーマンスに秀でていなければならない(2)

政治的な能力に必須のものとしてパフォーマンス能力と行政手腕の二つがあり、情報化が進展している今日ではパフォーマンス能力が必須であることを以前、このブログで指摘しておいた。そのうち実は前者、つまりパフォーマンス能力こそが必要条件で、行政手腕はむしろ十分条件に属すると、一般とは逆の指摘もしておいた。メディアによる情報がものを言う時代には、かつてと異なり先ず求められるのはパフォーマンス能力なのだ。

そして、こういった能力は政治を担う人間のみに必要とされるとものではない。一般的な組織、システム構築の際にも必須なものでもある。ただし、こんな優れた能力を持ち合わせた人間、めったにいるものではない。それゆえ組織やシステムが構築される際には、しばしばこの二つの機能は異なった人間によって分有されることになる。今回はこの「分有パターン」について考えてみたい。

二人のディズニー

典型的なのはディズニー社(Disney Company)だ。ディズニーはウォルト・ディズニーという類い希なる才能の持ち主が作りだしたアメリカの良質文化と賞賛されるが、実はウォルト一人で可能になったものではない。ウォルト自身は夢想家でいろいろなアイデアを生み出すことができ、しかも圧倒的なパフォーマンス能力も持ち合わせていたという点では確かに天才だ。しかしながら実務能力についてはサッパリだった。

たとえば35年、映画史上初めての長編アニメ『白雪姫』が作成されたときのこと。この作品は絶賛を浴び、ウォルトのショウビジネスでの地位を決定的にしたのだが、この後のやり方がメチャクチャだった。『白雪姫』自体はハイリスクな企画だったのだけれど、これが成功することでディズニー社(当時Walt Disney Production)の資産は一気に膨れあがる。

一般的にはここでその利益を基に、そこそこの映画を量産するという体制を整えていき、安定した収入を獲得しようとするもの(このやり方の典型はスピルバーグ)。ところがウォルトは夢想家だけにそうはならなかった。もっと素晴らしい作品を作り、もっと高い評価と名声を獲得しようとしたのだ。そうやって作られた次作が『ピノキオ』だった。

本作は今でこそ高評価が得ているが、上映された当初は散々で(作品の暗さ、おどろおどろしさに大衆はそっぽを向いた)、そのくせべらぼうな制作費を投入していたがゆえに大赤字となったのだ。で、こうなったらならば少しは反省するもので次は地味なもので収益化を図ろうとするのがふつうだが、ウォルトの場合は「だったら、もっとよいものを作ればいい」と、さらにその思いに拍車がかかるということになり、次に台詞が一切なく映像に合わせてクラッシック音楽が流れる『ファンタジア』を制作。

映画館には多くのスピーカーを配置したサラウンドシステムまで用意したのだが、高尚すぎてまったく客は入らなかった(『ファンタジア』が制作費を回収したのは、数年おきのロードショーを繰り返した後の七十年代だった)。ディズニー社は蓄積をすっかり吐き出してしまったのだ。

普通ならこれでディズニー社もお陀仏になるところ。ところがそうはならなかった。その理由は行政手腕ならぬ財務手腕に長けた男がいてウォルトの首に縄をつけていたからだ。その人物はウォルトの兄、ロイ・ディズニー。ロイは子どもの頃から兄弟の中で唯一ウォルトの面倒を見ていた。しかも、銀行員を辞めさせて自分の会社に連れ込んだこともあり、ウォルトにとっては頭が上がらない存在。

だから、ある程度のわがままは言えても、最後はロイに止められてしまう。その最後通牒がファンタジアの失敗だったのだ。これ以降、ウォルトはロイの指示に従いダンボという低廉な作品を作成し(作品の画質が落ちているのが一目瞭然)、その後会社の経営を安定させるために米軍に協力する映画(当時は第二次世界大戦)を量産することになったのだ。

結局、この二人のタッグは65年、ウォルトがこの世を去るまで続いた。だがウォルトが逝くとまもなく、ディズニーはほとんど作品を作ることがなくなり、ディズニーランドで日銭を稼ぐ企業になる。そして70年ロイがこの世を去ることで、その後どんどん斜陽化し83年には乗っ取り寸前にまで達してしまうのだ(ちなみに、その後ディズニーはV字回復を遂げるが、これはやはり統率力に優れるCEOマイケル・アイズナー&作品作りに類い希なる才能を発揮するジェフリー・カッツェンバーグと財務能力に優れるフランク・ウエルズのコンビが現れたからだ。だが、これもウエルズがヘリコプター事故によって死亡したことで崩壊したのだけれど)。(続く)

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