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検察支配企むチュ長官に検事反旗

秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官 出典:@ChooMiAe

朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・文政権が疑惑の指揮権発動で最後の抵抗勢力「検察」支配推進。

・人事で報復示唆する法務部長官に検事300人が反旗。

・検察総長は将来の大統領候補。日韓関係を展望する上でも注目。

2017年に誕生した文在寅政権は、積弊清算の名のもとで、国会、裁判所、軍をほぼ手中に収めた。いまその権力を総動員して、最後の抵抗勢力である検察の支配に進んでいる。それは文在寅政権にまつわるすべての不正疑惑を隠蔽しなければ、左派従北長期政権を確立できないと考えているからだ。

またもやユン検察総長を狙ったチュ長官の指揮権発動

そうした中で、10月19日、韓国の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が、1兆6000億ウォン(約1460億円)を食いつぶしたライムファンド詐欺事件捜査に絡んで、3回目の指揮権を発動した。民主化後の韓国で、捜査指揮権が発動されたのは、わずか4回だが、そのうちの3回はチュ・ミエ法務部長官が発動したものである。

その狙いは、尹錫悦(ユン・ソンヨル)検察総長を捜査から排除するだけでなく、彼を事件に巻き込み検察庁から排除することにある。そのために、ユン検察総長の義母にまつわる関連疑惑と、ユン総長の側近だったユン・テジン検事長の兄であるユン・ウジン元龍山(ヨンサン)税務署長関連疑惑を蒸し返して追及しようとしている。10月29日にはユン署長の自宅が家宅捜査された。10年の時効まで残すところ約4か月だった。

▲写真 尹錫悦(ユン・ソンヨル)検事総長 出典:韓国検察庁

この件は、ユン検察総長任命のための国会人事聴聞会で、野党から追及を受けたとき「いかなる問題もない」と、与党がすでに嫌疑なしとお墨付きを与えた問題なのだが、いまそれを蒸し返して攻撃の材料にしているのだ。

ユン・ソンヨル検察総長は、指揮権を発動された直後の10月22日、国会法制司法委員会で大検察庁の国政監査に出席し、「検察総長は法務部長官の部下ではない」とした上で、指揮権発動に対しては「法務部長官が具体的な事件で総長を指揮するならば受け入れることもできるが、『検察総長は外れろ』というのは検察庁法に反する」と反撃した。ユン総長の指摘通り、これまでの法務部長官は、検察の捜査独立を保障した検察庁法を尊重していたために、むやみに指揮権は発動しなかった。

こうしたことから、文在寅政権がチュ・ミエ長官を突撃隊長として進めている「検察改革」が、人権の尊重、法のもとでの公平と平等、司法独立という、自由民主主義発展を目指すものではなく、「検察を自分たちの召使いにする陰謀」との声が高まっている。

▲写真 文在寅大統領(2020年11月3日) 出典:The Office of President Moon Jae-in

詐欺師の主張を根拠にした指揮権発動

チュ・ミエ長官の指揮権発動で注目しなければならない一つの点は、いずれの指揮権発動も、まず「詐欺犯」が登場し、与党寄りのメディアがその人物の主張を報道した後に、行われている点だ。

6月のハン・ミョンスク(韓明淑)元総理関連の指揮権発動では、「企業狩り」犯罪や、さまざまな詐欺、横領などの前科で、懲役20年を超える刑を言い渡され、現在も服役している人物の主張に基づいていた。

7月の、与党関係者とKBSやMBSのテレビメディアが組んだ、「チャンネルA記者とハン・ドンフン検事長の癒着でっち上げ事件」時の指揮権発動も7000億ウォン規模の詐欺事件で懲役14年6か月を言い渡され服役している金融詐欺犯、イ・チョル元VIK代表の主張が発端だった。

今回の指揮権発動も、収監中の「ライムフアンド詐欺事件」の中心人物であるスターモビリティー元会長キム・ボンヒョンの獄中からの手紙が動機となっている。

裁判証言とは正反対のキム・ボンヒョンの手紙

キム・ボンヒョンの獄中からの手紙には、検察の取り調べ過程で、韓国大統領府政務首席秘書官のカン・ギジョンを捕まえるのに協力してほしいと依頼されたとのことや、野党側へのロビー活動を話したが、黙殺されたとの内容が書かれていた。そして検事を接待したとの内容も記されていたという。

しかしキム・ボンヒョンは10月下旬、関連事件の他の裁判で証人として出廷し、カン・ギジョンに5000万ウォン(約460万円)を渡したと話していた。この裁判証言が出た時は、「ウソをついている」と非難していたチュ・ミエ長官だが、獄中からの手紙で野党側へのロビー活動が記されると、ここぞとばかりに、この手紙を捜査指揮権行使の根拠に使った。

裁判での証言は、ウソがあれば偽証罪に問われるが、手紙は偽証罪に問われない。どちらに真実性があるかは明らかなのだが、チュ・ミエ長官は自分たちに都合の良い手紙の内容をだけを取り上げて指揮権を発動したのだ。

検事300人が、チュ・ミエ長官に反旗

今回の指揮権の発動がこのように、あまりにも露骨で悪質だったために、多くの検事たちの怒りを誘発した。

最初に声を上げたのはイ・ファヌ(李煥羽)という済州道地検の検事だった。彼は10月28日に検察内ネットワークで、チュ・ミエ長官が人事権・指揮権・監察権などを乱用していると批判し、「検察改革は根本から失敗した」と投稿した。

これに対してチュ長官は、すぐさまSNSで「そうしたカミングアウトには、改革だけが答えだ」と応酬した。これはイ・ファヌ検事に対して人事で報復するという意味である。

このチュ長官のSNS投稿に堪忍袋の緒が切れた検事たちは、イ・ファヌ検事を支持して立ち上がり、「私もイ・ファヌだ!カミングアウトする」というコメントを次々と投稿した。その人数は10月31日までに300人を超えたという。全検事2150余名のうちの10%以上がチュ長官の批判に立ち上がったのだ。

チュ・ミエ氏の政界進出を後押しした民主党出身のチョン・ジョンベ(千正培)元法務部長官の婿も「私もカミングアウトします」と宣言して合流した。パク・ギュウン水原高等検察庁検事は「これまでの検察改革は、一言で言えば執権勢力と一部検事たちの合作のもとで行われた詐欺だったようだ」と述べ文政権を糾弾した。

過去の政権で検事たちが連判状を書いた時も、これほどの人数が賛同したことはなかった。検察内部に通じる検察出身のある弁護士によると、検事の95%がこの行動に内心賛成しているという。

検事たちは「北朝鮮じゃあるまいし、怖くて何も言えない世の中になったようで悲しい」「抑圧と恐怖は改革ではない」と嘆いている。

この検事たちの共同行動が、今後どのような広がりを見せるのかはわからないが、文在寅大統領に、チュ・ミエを取るか、ユン・ソンヨルを取るかの決断を迫ったことは確かだ。

もしもユン・ソンヨルを切れば、ユン・ソンヨル待望論に火をつけることは間違いない。ユン・ソンヨル氏はすでに大統領候補に名前が上がり、リアルメーター調査では、トップを走る李在明や李洛淵に5%差に迫る支持率17%(一部調査ではトップの23%)で3位に付けている。

今後の日韓関係を展望する上でも、文在寅政権対検察の対立に注目する必要がある。

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