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- 2020年11月05日 14:22
【Amazon Fresh】、アマゾン食品スーパーの問題点!ネットスーパーが臨界点を超える時?
同調査では2025年までにオンライン・グローサリー(ネットスーパー)は食品売上全体の21.5%に達し2,500億ドル(約26.2兆円)にも上ると予想している。パンデミックの影響によりネットスーパーの売上高が、パンデミックを想定していなかった当初の予想より60%も増加するとしているのだ。
6万人近くを対象にした調査の結論としてパンデミック後は、実店舗とネットスーパーをシームレス且つストレスフリーで展開する食品スーパーが成功すると結んでいる。
パンデミックを追い風にしてネットスーパーの成長を加速させる店舗がアマゾンの食品スーパー「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」だ。
アマゾンは9月、南カリフォルニアのウッドランドヒルズ地区に1号店を一般公開し、先月末にはアーバイン地区に2号店をオープンした。
アマゾン・フレッシュの品揃えは一般的な食品スーパーに、アマゾン傘下のホールフーズ・マーケットのプライベートブランド「365」やアマゾンのプライベートブランドも扱っている。
また生鮮品では精肉・シーフード・コーナーで対面販売を取り入れている。アマゾンの最先端スーパーのレイアウトは一般的なスーパーマーケットと大差はない。
アマゾン・フレッシュは一般的なフルサービスのレジをもちながら、スマートショッピングカート「アマゾン・ダッシュカート(Amazon Dash Cart)」を導入している。
ダッシュカートはコンピュータービジョンを内蔵した4つのカメラに重量センサー、タッチスクリーンを搭載した世界最先端となるショッピングカートだ。
ダッシュカートを利用することでレジ行列に並ぶことなく買い物ができ、買い物中も常に合計金額を確認できるようになっている。
アマゾン・フレッシュはアマゾンが構築するエコシステムにとって重要な役割を果たす店舗となる。買い物のエコシステムとはオムニチャネルだ。
アマゾン・フレッシュは毎日の生活に必要な食品を販売するスーパーの役割だけでなく、ネットで購入した商品をお店でピックアップする「ボピス(BOPIS:Buy Online Pickup In Store)」やネットで購入した商品をお店で返品する「ボリス(BORIS:Buy Online Return In Store)」のハブ(拠点)になっているのだ。
アマゾン・フレッシュでは食料品の買い物のついでにアマゾンで購入した家電製品や衣料品、オモチャなどピックアップしたり返品したりできるのだ。
夕食の食材やランチなどの食品の買い物に行くスーパーマーケットは来店頻度が高い業態なのでネット注文のピックアップには最適となる。
当日や翌日受け取りの急ぎ便を無料で利用できるプライム会員にとってアマゾン・フレッシュはサンドイッチやポテトチップ、コーラを購入しながら、高額なアップル製品も直接、受け取れるので便利且つ安心なのだ。
EC繁忙期のクリスマスや年に1度の大セールとなるプライムデーではアマゾンのピックアップ拠点となるアマゾン・ロッカーはすぐに一杯になり使えなくなる。
忙しい時期に注文品をロッカーに入れっぱなしにすることができないため、注文品をロッカーに保管しておく期間も3日間程度と極端に短くなるのだ。
アマゾン・フレッシュではアプリを介してチェックイン機能を使うことで、ロッカーが一杯で使えなかったり、短い保管期間も回避できるようになっている。
アマゾン・フレッシュのカーブサイド・ピックアップとボピスを利用することで売り場での買い物時間を減らし家電製品等の高額品も安心して受け取ることができるのだ。
ネットスーパーとして、またスマートカートを使った売り場での時短ショッピングでも、さらにオムニチャネルで重要なピックアップ拠点のハブとしてアマゾン・フレッシュは優秀にみえる。
しかしアマゾン・フレッシュにも死角がある。アマゾン・フレッシュはリアル店舗の「売り場」と、ネットスーパーとしての「倉庫」を兼用していることで店内でボトルネックが生じている。
食品スーパーにとって最も忙しくなる週末、皮肉にも買い物客とピッカーの衝突が起きているのだ。争っているわけではない。週末はピッカーが増えることでお客の邪魔になるのだ。
しかもネットスーパー利用者が増えるほどピッカーが注文品として売り場から商品をピッキングし、青果など生鮮食品等で欠品や品薄が生じてしまうのだ。
同時に商品補充も行えば、売り場でさらなる渋滞を招いてしまう。
ハイテクを搭載したダッシュカートは通常のカートに比べて極めて重い。押したり引いたりするのはそれほど重さを感じないが、カートを小回りさせるとき特に重量を感じる。
大勢のピッカーが忙しくしている週末、ダッシュカートで買い物するとカート渋滞に巻き込まれる。小回りを余儀なくさせる。女性はこれがきつい。売り場での顧客体験が悪化する瞬間だ。
ネットスーパー市場が大きくなればなるほど、売り場と倉庫を兼用するスーパーではこういった葛藤が増えることになる。
アマゾン・フレッシュはオープンして間もないが、週末の午前中はすでに臨界点に達している。改善を急がないと顧客の売り場離れという笑えない事態がでてくるのだ。
トップ画像:オープンから10日ほど経過したアマゾン・フレッシュ・アーバイン店(2号店)。11月1日(日曜日)の午前10時過ぎに訪れたのだが、店に入るのに(入店規制で)30~40人の行列ができていた。

これが買い物客とピッカーの衝突が起きそうになる、真実の瞬間。青果コーナーには画像で確認できるだけでも、行手に4人(画像外にさらに2人)がピッキングしている。買い物客にとってショッピングカートとピッカーが大きなストレスになる。特に重いダッシュカートで小回りしようとすると苦痛だ。

作業中のピッカーに声をかけて(これも買い物客にはストレス)どいてもらったのだが、野菜を選ぼうにも品薄状態になっている。日曜の午前10時過ぎで、この状態ではダメだ。

週末の午前中にも関わらず商品によっては欠品にもなっていた。商品補充で買い物客にピッカーに補充スタッフという、さらなる渋滞を招いてしまう。

青果コーナーの隣りにある精肉・シーフードでもピッカー渋滞だ。よく見ると対面販売でもピッカーが並んでいた。買い物客の立場からすれば、行列にスタッフが並んでいるのは釈然としない。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。先週末もアマゾン・フレッシュに視察に行ってきました。11月1日(日曜日)の午前10時過ぎに訪れましたが、店に入るのに30~40人の行列ができていました(入店に20分~30分はかかったはず)。
で、後藤はスタッフの許可をえて行列をスキップし即入店しました。なぜ行列に並ばずに優先して入れたのか?の理由については下に画像をアップしたので見てください(笑)。2号店は2度めの訪問ですが、1号店とは違ってピッカーのフレンドリーさがあまり感じませんでした。
青果コーナーではピッカーの渋滞が起きていただけでなく、女性ピッカーに睨まれたような印象も受けました。ダークストアとして早くからオープンしていた1号店は招待客のみの限定オープンもあって、一般公開時には顧客ファーストが徹底されていました。渋滞はありましたが、フレンドリーだったので気になりませんでした。が、2号店は買い物客に慣れていないのか、ピッカーはあまり買い物客に注意が向いていない印象です。
オープン間もないアマゾン・フレッシュ2号店でそうなのですから、近い将来、売り場と倉庫を兼用するネットスーパーには臨界点の問題が噴出します。

入店時に30人~40人の行列ができていたにもかかわらず、スタッフの許可を得て即座に入店できたのはボピスがあったからだ。アマゾン・フレッシュをピックアップ拠点として利用すれば、優先的に入店できる。ちなみにダッシュカートには手前に買い物袋を引っ掛けるハンギングフックが付属されている。