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トランプ支持者の素顔、実は白人富裕層 - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

事前予測とは裏腹に史上稀に見る大接戦となっている米大統領選挙。選挙から一夜開けた11月4日の時点で獲得代議員数はジョー・バイデン氏の253人に対しトランプ大統領が214人となっている。バイデン氏はあと17人で大統領の座を射止めることになる。


ロサンゼルスの投票所(筆者撮影)

バイデン氏の勝利がほぼ確定しているアリゾナ州、ネバダ州を合わせると代議員は17人となるため、このままではバイデン氏の勝利は固いと見られる。トランプ大統領側は有利と見られていたウィスコンシン、ミシガンを落としたことが痛手となった。

しかしバイデン氏の代議員が270人に達しても、トランプ政権は敗北を認めることはないだろう。現在いくつかの州の開票差し止めを訴えており、郵便投票に不正があった、と裁判に持ち込むことは間違いないだろう。その場合、年内いっぱいもしくは来年まで次の大統領が決定せず、国が混乱することも予想される。

実際にトランプを支持しているのは白人富裕層

ではなぜトランプ大統領はあれだけの悪評を抱えながら、依然支持されるのか。ニュースでは熱狂的なトランプ支持者がよく取り上げられるが、低所得の白人労働層というイメージは正しくはあるが間違いでもある。実際にトランプを支持しているのは白人富裕層だ。

理由として、民主党政権になった場合、現在の富裕層への減税措置が廃止され、高い税率に戻ることが確実であること、法人税も引き上げられ、株式の配当にも影響が出る可能性があるからだ。

若者がバーニー・サンダース氏を支持した理由は「公立大学の学費無償化」「公的健康保険」「公立の保育園」「学資ローンの減免」などだ。米国の大学は私立ならば4年間で少なくとも3000万円程度、公立でもUCLAなどの有名校では2000万円程度が必要、と言われる。

安い公立大学もあるが、多くが2年制で3年次からは別の大学に編入する必要がある。

また医療保険は内容によって大きな差があり、最高のケアを受けるためには1人あたり月に1000ドル以上かかるのが普通だ。安い保険では受診できる病院が限られる、医師がレントゲンやその他の検査の必要性を訴えても保険会社の許可が下りなければ不可、などのデメリットが多い。

しかし富裕層は子弟を奨学金なしに有名私大に通わせることができるし、最高の健康保険を持っているから最高のケアも受けられる。それができない人々に自分たちの税金が回されることを実は快く思っていない。

トランプは嫌だが共和党は支持

そのため富裕層は決してトランプを支持するわけではないが、民主党よりも共和党政権の方が自分たちに有利、という理由からトランプに投票する。筆者の友人は「一番良いのはトランプが再戦された後に弾劾されてペンスが大統領に就任すること」だと語っていた。

トランプは嫌だが共和党は支持、という層が多いことが世論調査からは抜けていた。

もう一つ、「自分は愛国者だ」と思っている人に、トランプに投票した人が多い。トランプの政策は酷評されはしたが、「国益を犯す外国人の排斥、国力増強、貿易戦争に打ち勝つ」など愛国的なものが多い。

なぜ米国が世界の警察として治安を負担しなければならないのか、貿易赤字を背負って他国の経済的発展を支えなければならないのか、と疑問に感じていた人は多い。トランプが次々に打ち出す政策は、彼らにある種のカタルシスを与えたことも事実だ。

興味深かったのは、「日本はどちらの大統領を望んでいるのか」と問われ、「メディアなどの報道を見る限りバイデン当選を好意的に見ているようだ」と答えたところ、「バイデンが大統領になれば親中国になる。バイデンの息子は中国ビジネスで多額の利益を得ている。

そうなれば日本にとっては不利なはずなのに、なぜ日本はトランプ再選を望まないのか」と言われた。

確かに安倍前首相とトランプ大統領の蜜月ぶりなど、日米関係を考えれば日本政府はトランプ再選を願っても良さそうだ。しかしそれを言うのは憚られる雰囲気があるのか、あるいはトランプよりバイデンの方が読みやすい、つまり相手をしやすい、という思いがあるのか。

考えてみれば日本はトランプ政権からそれほど不利益を被っていない。国際的にもイスラエル、北朝鮮などはトランプ再選の方が自国に有利と考えているはずだ。

トランプは国を分断した、と批判されるが、これも考えてみれば感情論であって事実に即しているとも言い難い面がある。貧富の差では、99%運動(国の人口の1%が国の財産の半分を所有している、という格差解消運動)が始まったのはオバマ政権時代だし、人種差別は米国建国時から常に存在している。

共和党支持が多い中高年に対し民主党支持が圧倒的な若者世代、という構図も目新しいものではない。

歴史が検証するトランプ政権

バイデン氏は大統領候補者討論の中で石油会社を「環境を汚染する企業」と語ったが、脱炭素を性急に進めれば多くの失業者が出てそれこそ国を分断する一大議論に発展する可能性がある。

それぞれの政策には元々賛否両論があり、それが時には抗議デモを生んだり人々の不満を燻ぶらせることになるが、トランプ時代にはそれが顕著に出ただけ、という見方もある。

唯一はっきりと失敗したのはコロナ対策だが、これは米国に限らず多くの欧州諸国も失敗している。そしてもし政権が厳しい外出制限などを率先して行ったとしても、国民の不満が爆発していただろうことに変わりはない。つまりコロナ対策と経済の両立を考えると正解は存在しないに等しい。

11月3日、勝者が確定しなかったために暴動などの大きな騒ぎは起こらなかった。開票作業が進みバイデン氏が当確となっても、トランプ政権は理由をつけてゴネるだろうし、そのときになってまさに国を両断するような騒動が持ち上がる可能性は否めない。

しかしトランプ政権の4年間が本当に「壊滅的」で国力を衰えさせることになったのか、そうでないのかは、今後の歴史の中で検証されていくことになるだろう。

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