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ポスト都構想~運命の日③~

 前回の住民投票と同様に賛否拮抗の結果となったことを受けて、反対多数なったものの、ほぼ同数の賛成の方々がおられることを忘れてはならない。早々に3度目の住民投票に言及する維新議員がおられることには呆れて返す言葉もないが、賛成された方々が半数おられることも踏まえて、どのような大阪を創り上げていくのか「ポスト都構想」を考えていく必要はある。

 賛成を主張する維新と対峙して反対を主張した自民党には、今後の大阪を導くにあたっての一定の責務があると考えるが、大阪府知事・大阪市長は変わるわけでもなく維新であり、議会の構成もそのままであることから主導権が維新にあることに変わりはない。この点においては、5年目の大阪会議の失敗を忘れてはならない。維新側が3度目の住民投票を標榜しているとするならば、いつでも流れを止めて「やっぱり都構想しかない」というロジックを組み立てることは難しくはない。

 ただ、大阪都構想実現の一つの目的である二重行政の解消ということについては、全国的に「指定都市都道府県調整会議(以下、調整会議)」というものが平成28年4月より必置義務が課される地方自治法改正がなされており、5年前の状況とは大きく異なる。二重行政解消の課題解決の手法、いわゆる対案というものは既に実現実行されているのだ。

 「今は、二重行政はない」と議会で答弁された松井市長と吉村知事の関係とは異なる知事・市長が誕生したとしても、調整会議で二重行政の課題については解決に向けての対応策が現実のものとして存在するのだ。この点については、マスコミから報道されることが少ないが、全国的に全ての政令市と都道府県との間に設置されており、広く周知する必要がある。

 また、大阪都構想実現のもう一つの目的である住民自治の拡充については、政令市・大阪市存続を活かして、行政区に権限・裁量予算をさらに付与することなどで体制を再構築することができるし、現状の区政会議を地域協議会に転換するなど、様々な手法が考えられる。地味な部分ではあるが、区政改革の長年の蓄積の延長線上で大阪市らしい住民自治の拡充は必ず達成できる。

 特別自治市制度や道州制なども念頭に展望を示すことも可能ではあるが、制度論に固執する必要は寧ろ無い。今、重要なのは政策論である。アフターコロナの新時代を如何に大阪から示していくのか。「命輝く未来社会のデザイン」を掲げる2025年大阪・関西万博を絶好の機会として、大阪発で世界に向けて新しいニューノーマルのライフスタイルを発信していく素地を構築していく必要がある。

 インバウンド効果に軸足を置き過ぎた観光関連産業への依存については、IR誘致の状況も見定めながらシフトチェンジが求められるかもしれない。国のデジタル化と合わせて、自治体として情報通信技術を駆使し、新しい時代に即応した新しい自治体像を見出していくことが大阪市にはできるはずである。

 短期的には、感染症対策を万全にすると共に、合わせて社会経済活動を如何に復活させていくかが重要である。また、南海トラフ巨大地震などに対応した災害に強いまちづくりの観点も忘れてはならない。これまで同様に政令市だからこそできた大胆な予算と技能を教育や福祉に向けていく。

 中長期の具体的なビジョンは、政治的な成果として利用するものではなく、市民が生活の向上を実感する指標として活用されるべきである。対立と分断を経た大阪市だからこそ、党派を超えて連携・調整し、強い協力体制と推進力で政策が実行されることを期待したい。

 大阪都構想は10年間の紆余曲折を経て、結論が出た。これ以上、都抗争を継続することは、市民にとって不利益以外の何ものでもない。これ以上、この制度論争に税金と市民の時間と職員の労力を費やしてはならない。今、喫緊の課題に対峙しなければならない。



 もしかしたら、時代の変遷の中で、必要な事業が制度の弊害によって実施できないようなこともあるやもしれないが、それは20年、30年以上先の話である。

 法的拘束力のある住民投票で二度も大阪市存続の結論が出されたことを真摯に受け止め、大阪・関西の発展のために実りある政策を大阪市が実行し、まさに関西の中核として周辺市に貢献する大阪市、関西の各政令市とも連携体制をとる良きパートナーとしての大阪市、何よりも大阪府とダブルエンジンとなって市民の幸せをもたらす大阪市でなければならない。

 10年間に及ぶ物語「大阪都抗争」は大阪の夜明けとともに終焉を迎えた。
 次なるストーリーの幕が開いた。

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