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住民投票~運命の日②~

 住民投票実施の主導権は維新にあった。首長を取り、議会での第一会派として大きな勢力を持ち、今回は、公明党の賛同も得て進めてきたことを考えれば、住民投票が実施されるのであれば「賛成多数になる見込みがある」確認がなされた上でのことであると見るべきである。

 では、その「賛成多数」「可決見込み」の状況はどのように変化し、僅差ながら「反対が上回る」ことになったのであろうか。



 最大の要因は、5年前と異なり「大阪市廃止」の文字が行政側において記載されるようになったことであると考える。前回は、投票用紙においても「大阪市における特別区の設置に~」賛否を問うものであったが、今回は「大阪市を廃止して特別区を設置することに~」という記載になり、住民投票についての表記が「特別区設置の住民投票」から「大阪市廃止・特別区設置の住民投票」と変更されることとなった。

 一方、賛成する側は、維新を中心として「大阪都構想」の文字は広報物に多用するものの「大阪市廃止」の文字は一切使用していない。5年前から直近に至るまで「大阪市は廃止・解体されない」「大阪市がなくなるわけではない」と主張してきたことと矛盾する現実が「大阪市廃止」の文字で明らかになった。反対する側の主張を「デマ」だと大きく文字を躍らせながらも、実は賛成側自身が真実を適切に伝えていかなかったことを市民は敏感に察知したのではないだろうか。

 また、論点の一つとなった「住民サービス」の財源論においても、反対側は(数値についての議論はあったものの)具体的に示してきたが、賛成側は「二重行政の解消でこれまで財源を生み出してきた」と制度変更によって生じる具体的な数値は示さず、この間の維新市政の実績の訴えが中心となっていた。吉村知事や松井市長の支持率としては依然高いものの、それがそのまま賛成票につながることはなかった。

 反対票を投じた方々も、必ずしも全て「現状維持」「変わることに不安を感じた」ということではない。変えるべきものが「大阪市」という自治体そのものではなく(政策など)別のものであることを認識していたと思うし、都構想の実現によって、大阪市をなくしてまで得られるものが何なのかが明確に見えなかったのだ。

 事前の世論調査でも「説明が十分でない」という声が7割以上あり、その割合は投票日に近づいても落ちることはなかった。副首都推進局の職員による「賛成に誘導する」発言があったり、財政局から1つの大阪市を分割することによる「行政コスト増」の数値が住民投票の期間中に示さりたり、制度の具体は十分に示されることもなく結論ありきで進められていることに対する反発があったのではないだろうか。公明党が賛成に転じたことも含めて、政局で実施されている住民投票であることを市民は感じ取っていたのではないだろうか。

 逆に言えば、賛否において維新と相対することになった自民党の動きや主張が反対票を伸ばしたというわけではない。自民党支持層でも4割弱が賛成しているように、自民党が勝ったという結論では決してないことも忘れてはならない。

 賛否の詳細を5年前と見比べてみると、実は大きく変わっていない。もちろん、地区により、あるいは年代によって少し変化はあるが、目立った変動はない。この点において「大阪市廃止」の事実がより明確になった今回ではあったものの、市民の感覚は5年前から大きくは変わっていないのかもしれない。







 いわゆる「大阪都構想」というイメージ先行の制度変更。可決成立が規定事実であるかのような錯覚があった9月時点の状況は、「大阪市廃止」の現実と共に5年前の住民投票の際の状況に時計の針を戻したのかもしれない。

(添付画像は、市民団体作成の資料をネット上より頂いたもの)

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