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総合アパレル企業と百貨店の「持ちつ持たれつ」の関係性 コロナ禍で問われる生存戦略

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5年くらい前からオンワードホールディングス、ワールド、三陽商会、TSIホールディングスの百貨店・ファッションビル向け大手アパレル各社が、大規模な店舗閉鎖を行っており、メディアを賑わせています。

つい先日もこんな記事が掲載されました。

「アパレル大手5社で閉店3100以上 コロナが迫る大転換」
https://www.wwdjapan.com/articles/1133914

総合アパレル大手5社(オンワードホールディングス、ワールド、TSIホールディングス、三陽商会、レナウン)の2020年度の退店は、3100店舗(売り場)以上に達しそうだ。

総合アパレル5社が現在までに発表した店舗撤退は、オンワードHDが700店舗(21年2月期)、ワールドが358店舗(同3月期)、TSIが210店舗(同2月期)、三陽商会が160店舗(同2月期)、主要事業を小泉グループに譲渡したレナウン(5月に経営破綻)が1700店舗前後(20年12月期)。海外も一部含まれるが、大部分は国内の店舗だ。

とあります。

経営破綻し、譲渡されたブランド以外は本社も含めて消え去ることになるレナウンは除外して考えてみたいと思います。(10月30日に民事再生を断念して破産が決定)

「数百店が閉店しても大丈夫?」総合アパレル企業のカラクリ

Getty Images

5年くらい前から始まった大規模閉店報道に対して、業界とはあまり縁のない人も多いと思われるBLOGOSの読者の皆さんは「え?何百店も閉店したら店がなくなるんじゃないの?」と思われるのではないかと思います。また、「え?そんなに店舗数あったの?知らなかったよ」と思われたのではないかと思います。

例えば、2015年夏にワールドは「2016年3月末までに400~500店舗閉店」ということを発表しています。かなりの店舗数なので、ワールドの店舗はほとんどこのときになくなってしまったのではないかと思われた方も多いのではないかと思います。

しかし、ワールドは2020年9月時点でまだ2429店舗もあります。どうでしょう?店舗数だけでいえば、しまむら以上にあります。ここで上記の記事通りに来年3月末までに358店舗を閉鎖したところでまだ2000店舗ありますし、その間、新規出店もあるわけですから、2000店舗を下回ることはないでしょう。

オンワードホールディングスも同様です。新型コロナなど微塵も影を見せていなかった昨年10月に、

「オンワード、国内外600店舗閉鎖 ネット通販に投資」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50506830S9A001C1MM8000/

と発表されており、ここでは3000か所の売り場があると明記されています。

そして今回、また来年2月期で700店舗の閉鎖を発表しているわけですが、それでもどうでしょうか、1700店くらいは残ることになります。三陽商会、TSIホールディングスも同じ構図です。

読者の皆さんは、この店舗数の多さに驚くとともに、どこにそんなに店舗があるのか?と疑問に思われることでしょう。

皆さんがよく目にする洋服チェーン店といえば、ユニクロ、青山、AOKI、はるやま、コナカ、しまむら、無印良品、ジーユー、ハニーズなどではないかと思います。

しかし、ユニクロはフランチャイズを入れても国内には813店舗(2020年8月期)しかありません。ジーユーは海外を含めても445店舗しかありません。

「洋服の青山」で809店舗(2020年3月現在)です。国内に2000店舗あるのは、しまむらくらいです。(しまむら、アベイル、バースデイ、シャンブル、ディバロを合計で2057店)

ではどうして、800店舗くらいしかないユニクロや青山などの方が、多くの人にとって、ワールドやオンワードの店舗よりも記憶と印象に残っているのでしょうか。

それはこれらが、単独路面店が多いためです。無印良品だけは少ないですが、無印良品が印象に残りやすい理由は後述します。

それ以外は単独路面店が多いため、自動車やバス、タクシー、徒歩で移動しているときに「あ、あそこに〇〇があるな」と認識しやすくなっています。もちろん、ユニクロ、ジーユーは商業施設内にも多く出店していますが、単独路面店も多くあります。

ワールドやオンワード、三陽商会、TSIなどの大手総合アパレルは、ほとんど単独路面店がなく、百貨店やファッションビル、一部ショッピングセンター内の施設内出店がほとんどです。そのため、移動中に認識するということは極めてまれです。

しかし、無印良品も同様に施設内出店がほとんどですが、大手総合アパレルよりは店舗数が多く、ブランド名もマスに認知されています。この違いはなぜでしょうか。

百貨店など商業施設に複数出店する総合アパレル企業の戦略

それは大手総合アパレルが恐ろしくたくさんのブランドを持っているからです。オンワードは現在、メンズ・レディース・キッズを合わせて40くらいのブランドがあります。ワールドはもっと多くてピーク時には100を越えていました。三陽商会やTSIも同様です。

例えば、ナノ・ユニバース、ローズバッド、マーガレットハウエルという著名なブランドがありますが、これは3つともTSIのブランドです。業界外の読者の方はご存知でしたか?タケオキクチとイッツデモとオペークドットクリップとアダバットはどれもワールドのブランドです。

業界の人は知っていますが、業界外の人はブランド名を知っていても、それらが全部ワールドのブランドだったりTSIのブランドだったりするということはあまり知らないのではないかと思います。

一方、無印良品は単一ブランドです。どんな施設に出店しても「無印良品」です。そのため、消費者からするとブランド名の認知度は高まります。

Getty Images

オンワードやワールドなどの大手総合アパレルは単独路面店がほとんどなく、地方郊外において路面店は皆無に等しいのに、実は2000~3000店舗も展開できていた理由が皆さんはもうおわかりではないかと思います。その理由は、40とか数十、場合によっては100ものブランドがあったためです。

とても単純に図式化をすると、ピーク時のワールドのように100ものブランドがあると、1ブランドあたり30店舗ずつ出店すればそれで3000店舗の出店が可能になります。

40ブランドでも1ブランドあたり50店舗ずつ出店できればそれで2000店舗になってしまいます。ですから、これらの大手総合アパレルは軒並み2000店舗以上の店があったというわけです。

そして、店舗数の多さの割に社名が認知されていないのもこれが理由です。たくさんのブランドを所有していて、1ブランド30店ずつとか50店ずつしか商業施設内に出店していないから、ブランド名はともかくとして社名は認知されにくかったわけです。そして、1つの商業施設内に複数のブランド名で複数の店舗を出店していたということです。

どうですか?ナノ・ユニバースとローズバッドとマーガレットハウエルが同時に出店しているファッションビルを見たことがありませんか?そのビルだけでTSIは3店舗出店しているということになるのです。もちろん、オンワードもワールドも三陽商会も同様です。

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