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感染リスクの烙印を押され…国策だった「クルーズ船観光」は終わりを迎えるのか 『観光は滅びない 99.9%減からの復活が京都からはじまる』より #1 - 中井 治郎

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 2020年、新型コロナ禍で日本の観光産業の問題が浮き彫りとなった。これまでの観光政策に問題はなかったか。『観光は滅びない 99.9%減からの復活が京都からはじまる』から一部を抜粋し転載する。(全2回の1回/#2を読む)

◆ ◆ ◆

 日本の観光政策の皮肉な帰結ということでは、あのクルーズ船の受難を思い浮かべる読者も多いのではないだろうか。

 一時は外界から隔絶され最低限の医療援助や食料も不足しているのではないかと伝えられた船内で、日に日に確認される感染者の数だけが増え続ける。そんな様子がリアルタイムで世界中に報道されたあの船。コロナ禍によって、いまや世界でもっとも有名なクルーズ船となったダイヤモンド・プリンセス号である。


ダイヤモンド・プリンセス号 ©️共同通信社

 2020年2月3日に横浜港に入港。集団感染が確認されたのが2月4日。その15日後、ようやく下船が開始された2月19日の時点では、確認された船内感染者は500人を超え、中国本土以外の世界の感染者のうち過半数がこの一隻の船の乗客・乗員だった。

 新型コロナの脅威がそれぞれの国に間近に迫るのを感じていた海外メディアはセンセーショナルにこの異常な事態を報道し、「まるで新型コロナウイルスを培養する培養皿だ」とまで書き立てたことは国内でも話題になった。観光客を満載したこの船が中国・武漢に続く感染拡大の「第二の震源地」になるのではないか。そんな不安のなか、世界中の数十億人の人々が固唾をのんでたった一隻の船の動向を注視していたのである。

クルーズ船は人類史上最大の旅客移動手段

 それにしても、このような事件がなければクルーズ船観光というものはまだまだわが国の人々にとっては馴染みの薄い観光のスタイルであったかもしれない。

 巨大な旅客船によるクルーズは近年の観光産業のなかでももっとも成長が早い分野であるといわれている。世界のクルーズ人口は1990年に463万人であったものが2015年には2514万人にまで膨れ上がっていたが、とくに近年はアジアにおけるクルーズ利用者の増加が目覚ましく、2012年の約130万人から急成長しており、国土交通省は2020年には380万人の利用者を見込んでいた。

 近年は世界的なクルーズ観光ブームといえる状況にあった。そのような意味では航空機などよりも歴史は長くとも新しい旅行のスタイルといえるかもしれない。

 クルーズ船とは人類史上もっとも巨大な旅客移動手段である。だからこそ、それを語るときにはまずその巨大さから始めなくてはいけない。ダイヤモンド・プリンセス号も全長290m、総トン数は11万5875トン……と、数字だけをならべても多くの読者にはピンとこないかもしれないが、290mといえば、現在、日本でもっとも高い完成済みの建築物である大阪のあべのハルカス(高さ300m)や東京タワー(約330m)とほぼ同じということになる。

 そして乗客乗員は3700人。まさに移動する都市といっていいほどの規模である。

 このダイヤモンド・プリンセス号は04年に三菱重工業長崎造船所で建造されたものであるが、当時は姉妹船「サファイア・プリンセス」と並んで日本で建造された客船としては史上最大だった。運航はアメリカのクルーズ会社「プリンセス・クルーズ号」によって行われ、日本発着クルーズを開始したのは2013年からである。

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