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”Go To "の大罪。

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7月から始まっていた「Go To トラベル」に続き、ここに来て話題になる機会が増えている「Go To Eat」、さらに「商店街」やら「イベント」やら、何でも「Go To…」付けて盛り上げろ、というのが現在のお上の方針になっているようである。

だが、このキャンペーンが盛り上がれば盛り上がるほど湧き上がるのは、この先への懸念である。

当然ながら、キャンペーン反対の急先鋒だった「感染拡大が・・・」という類の意見も全く無視できるようなものではないし、この後の感染判明者数の数字によってはキャンペーンを止めるくらいのインパクトが生じても不思議ではないのだが、現時点ではそこまでの脅威にはなっていない、ということで、今日のところは脇に置く。

「Go To Eat」等で指摘されていたような”せこい裏技”を非難する声も一部で上がっているが、これも急ごしらえの制度であればどうしても避けられないもので、ルールの枠の中でやっている以上は、気が付いた奴、賢く使った奴が偉い、というだけの話だと思っている。

そんなことより、本当に心配しなければいけないこと・・・。

「Go To トラベル」に関しては、東京発着の旅行が対象に加わった10月以降、一気に利用者が伸びて全国津々浦々の観光地が潤っている、というニュースが報じられているし、それだけ見て、「良い政策だった」と悦に入っている輩も少なからずいるのかもしれない。

でも、ちょっと待て、と。

最近Facebook等でも、あまりにあちこちに旅行に行ったり、ホテルに泊まりまくったりしている人の姿をよく見かけるようになったこともあって、先の週末、試しに某OTAで価格を調べてみて唖然とした。

一時期一泊20,000円台に載せていた札幌市内のホテルが軒並み5,000~6,000円台/泊、中には、名門ホテルが3,000円~4,000円台の価格で出ている。

東京23区内だと、辛うじて10,000円台をキープしているホテルがあるものの、元の値段を考えれば3分の1以下だったりするし、比較的割安だった価格帯のホテルは軒並み5,000円を割る勢い。

さらに新聞広告を眺めると、全国津々浦々に向けて、あり得ない価格でのツアーが組まれているではないか・・・。

これは「価格破壊」などというレベルではない。「価格崩壊」である。

ここでの問題は大きく分けて2つ。

1つ目は、本来、「需要を喚起する」ことに目的があるはずのキャンペーンなのに、今の仕組みの下で一番得をするのはキャンペーンなどなくても利用するタイプのユーザーである、ということ。

さすがに観光庁も失敗した、と思ったのか、

「観光庁は30日、観光需要喚起策「Go To トラベル」について、1回の旅行で7泊8日までの連泊制限を設けると発表した。11月17日以降の予約・販売分から適用する。あわせてビジネス出張や、観光を主な目的としない旅行商品を事業の対象から外す方針だ。」(日本経済新聞電子版 2020年10月30日19時01分配信)

という方針を打ち出したが、ネット予約での宿泊を丸ごと対象から外すわけにはいかない以上、ビジネス目的か観光目的かなんて、そう簡単に見分けがつくはずもないし、仮にビジネス目的を除外することに成功したとしても、「毎月のように温泉巡りの旅に出るヘビーな旅行者」が補助金の恩恵を得られることに変わりはない。

別に「Go To トラベル」があってもなくても旅に出かけただろう需要者層にまで補助金をつぎ込むくらいなら、もっと他の使い道があっただろうに、というのは誰もが思うことだろう。

そして2つ目、今まで滅多やたらには旅行に行かなかった人々の需要を創出した、ということになれば、一見「これぞまさに・・・」と思ってしまうかもしれない。

しかし、そこで問題になるのが、今の安すぎる価格。マーケットメカニズムをぶち壊し、消費者物価の統計数値まで押し下げてしまうような叩き売り価格である。

自分は、まだ”インバウンド需要”が本格的に盛り上がる前、1万円前後で泊まれていた札幌のホテルが、ある時から15,000円になり、遂には20,000円を超えた強気の価格設定になり・・・という状況を、決して温かい目で見守っていたわけではない。だが、リーマンショック直後の景気が悪かった時期に採算ギリギリのところで回していたホテル業界が、ようやく利ザヤを抜くにふさわしい価格で商売できるようになったのだから仕方ないな、と思っていたところもあった。

それが、バナナの叩き売り・・・。

別に宿泊事業者、旅行事業者の懐を痛めているわけではないのだからいいじゃないか、という意見もあるかもしれない。

でも、滅多に旅行に行かない人が、たまたま一泊4,000円、あるいは3~4万円くらいのツアーで北海道3泊4日を満喫するような経験を味わってしまったら、元の値段に戻った瞬間、誰も行こうとは思わなくなる。

今年に関していえば、「Go To トラベル」が東京都民に適用される前から、どこのホテルも宿泊代金は一回り安くなっていた。

客室が埋まらないから採算ラインギリギリまで引き下げる努力はどこの事業者もしていたと思うし、自慢のバイキング朝食が出せない、眺めの良いバーも閉めたまま、といった状況で「定価」で売るわけにはいかない、という矜持もおそらくあったのだろう。

自分もそれに乗じて、遠出もしたし、近場のシティホテルも利用した。それくらいでちょうど良かったし、その状態で止めておけば、有象無象になりつつあった世界の中で、合理的な努力を積み重ねてきた施設、観光地だけが生き残り、嵐が去った後に”生存者利益”を謳歌できたはずだ*1

なのに、「Go To」はそこからさらに踏み込んで市場の秩序をぶち壊した。

その罪は実に重い。

既に始まって、先々の予約まで入って、喜んでいる関係者も多々いる中で、いきなりキャンペーンをやめろ、などという無粋なことを言うつもりはないが、当初予定していた期限が来たらきっぱりやめる。それだけは徹底しないといけない。

「そんなことをしたら経済が・・・」とかいう人も出てきそうだが、そういうことを言う人が、どれだけ本当の意味で「経済」というものを理解しているのか? 全くもって疑わしいと自分は思っている。

未来永劫、この業界に補助金を突っ込み続ける覚悟があるなら別だけど、それが正当化される根拠はどこにもないし、そもそも、そこまでの潤沢な支援が許容されるほどこの国の財政に余裕があるわけでもないのだから・・・。

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