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焦点:米経済に有益な医療制度、トランプ案かバイデン案か


[1日 ロイター] - 米大統領選の民主党候補バイデン前副大統領は、医療制度改革法(ACA、通称オバマケア)を拡充したい考えだ。一方、トランプ大統領はオバマケアを全面的に廃止、代わりの制度を導入することを目指しているが、その具体的な枠組みはまだ固まっていない。

どちらが米経済にとって好ましいかを巡り、現在も続いている論争は、ある面では費用を巡る議論とも言える。「バイデンケア」は、向こう10年で連邦政府の医療関連支出を2兆ドルないしそれ以上増やす見通し。トランプ氏の方式では、政府支出は横ばいか減少する。

ただバイデンケア支持者は、特に経済が苦境に陥っている局面で政府支出が増えれば景気刺激効果があるし、新型コロナウイルスのパンデミックのさなかにより多くの人が医療保険に加入できるメリットがあると強調する。これに対してトランプ氏が掲げる制度なら、将来の成長を抑えるような債務拡大や増税を避けられるというのがこちらの推進派の言い分だ。

2010年にオバマケアが可決された時点で約4650万人いた医療保険未加入者は、足元でおよそ3000万人に減少している。

シンクタンク「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」の推計では、バイデンケアを実行すれば医療保険未加入者をさらに1500万-2000万人少なくできる。トランプ氏は、未加入者を減らそうとしないだろう。

現在、米国の医療関連支出は国内総生産(GDP)の17%相当と、先進国でも随一の高さだ。さらには支出を上積みしても、必ずしも他国より国民の健康状態が改善するとは限らない点が、議論を一層複雑にしている。

<バイデンケアは低所得層を底上げ>

バイデンケアは税制優遇措置を通じて医療保険購入を補助し、より多くの国民に加入を促すことを狙っている。また勤め先で民間医療保険が提供されていても、公的医療保険に入りたい人には「選択肢」を付与する方針。オバマケアで拡大されたメディケイド(低所得者向け公的医療保険)に対する州による対応の違いで、まだ対象から除外されている低所得者世帯が、保険料なしで加入できる可能性も出てくる。

健康と家計の安定のいかなる向上も、特にパンデミックで手ひどく痛めつけられた中南米系や黒人を中心とする数百万もの低所得層に最も大きなプラス効果をもたらしそうだ。ミシガン大学公衆衛生大学院のヘレン・レビー氏は、経済を動かし続けるのを後押しすることを考えるなら、こうした人々が資産を蓄積できるのがまさに大事だとの見方を示した。

データを見ると、マイノリティーは白人よりも新型コロナの感染率と死亡率がともに高いことが分かる。恐らくこれは、感染リスクが高い仕事で働く人が多いからだろう。

ただ新型コロナを別にしても、マイノリティーは白人より慢性疾患にかかりやすく、死亡年齢が低い。カイザー・ファミリー財団の調査では、マイノリティーの医療保険加入率はオバマケア導入後に大幅上昇したとはいえ、相対的にはなお低い。

バイデン氏は、自身の医療保険制度の財源として富裕層への課税を強化し、医療保険拡充の効果によって医療費全体は抑制し続けることができると説明している。

確かに医療保険加入者が増えれば、経済にプラスになってもおかしくない。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のジェラルド・コミンスキ教授(公衆衛生政策)は、保健未加入者が病気になれば救命救急外来などでの費用が高くなる現実があると指摘する。未加入者にとってそうした費用は大きな負担になるし、払えない場合はサービスを提供する病院の財政が逼迫し、結局納税者にしわ寄せが行ってしまう。

オバマケアの下で保健未加入者が減った州の住民は、メディケイドを拡大しなかった州の住民に比べ、給与担保融資に頼ったり自己破産したりすることが減ったほか、より良い条件で融資を受けられるようになり、家賃滞納で住居を立ち退かされる度合いも減った。ミネソタ大学のセイヤ・ニクペイ教授は「エコノミストの視点からすると、国民が医療保険に入るべき理由は壊滅的な損害から身を守ることに尽きる」と話した。

<トランプ方式はコスト重視>

トランプ氏は大統領就任直後から議会にオバマケア廃止法案の可決を働き掛けてきたが、再選を果たせば今後も何らかの形でそうした試みを続けていくだろう。

連邦最高裁は大統領選投票日の1週間後に、オバマケアの是非を判断するための審理を開く。廃止が妥当との見解を示せば、アーバン・インスティテュートによると2100万人の医療保険が危機に陥る。もっとも大半の専門家は、最高裁がオバマケア否定に回るとは予想していない。

もし連邦最高裁が廃止を支持しても、トランプ氏はその後に置き換える医療制度の具体的な計画を策定していない。1つの青写真になりそうなのは、保守系シンクタンクのヘリテージ財団などが打ち出した提案だ。これはオバマケアに振り向けられている予算を、各州が住民の民間医療保険購入を支援し、低所得世帯向けの保険を提供するための資金に回そうという内容だ。別の保守系シンクタンク、アメリカン・アクション・フォーラムの分析では、これによって保険料は18-24%下がる。保険未加入者の数は変わらない見込み。同分析をまとめたダグ・バッジャー氏は、現行のオバマケアあるいはオバマケア向け予算を増やす提案よりも、マクロ経済効果は大きいと指摘。「一般の米国民」の懐が潤う保険料引き下げこそが最善の景気刺激だと主張する。

これには異論もある。バイパーティザン・ポリシー・センターのシニアバイスプレジデントで以前、共和党議員のスタッフだったウィリアム・ホーグランド氏は、バイデンケアによる医療支出増大に懸念を示しながらも、医療保険の利用機会を広げるために対価を払う価値はあり、それが経済の足場を強化するとの見解だ。「私は、国民が健康になり慢性疾患が減少すれば、生産性は向上し、そうなれば経済成長が高まるという論にくみする」と話した。

(Ann Saphir記者)

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