記事

【読書感想】民主主義とは何か

1/2

民主主義とは何か (講談社現代新書)

民主主義とは何か (講談社現代新書)

  • 作者:宇野 重規
  • 発売日: 2020/10/21
  • メディア: 新書


Kindle版もあります。

民主主義とは何か (講談社現代新書)

民主主義とは何か (講談社現代新書)

  • 作者:宇野重規
  • 発売日: 2020/10/21
  • メディア: Kindle版

トランプ大統領をはじめとする「ポピュリスト」の跋扈、旧社会主義諸国および中国など権威主義国家の台頭など、近年の世界の政治状況は、民主主義という制度の根幹を揺るがすかのような観を呈しています。日本の状況を見てみても、現行の政権が「民意」の正確な反映、すなわち「民主主義的な」政権だといわれると、頸をかしげる人も少なくないのではないでしょうか。

はたして民主主義はもう時代遅れなのか? それとも、まだ活路はあるのか?  それを議論するためには、まず何よりも、民主主義とは、そもそもどのような制度なのかを「正しく」知らなければならないでしょう。今では自明視されている「民主主義」という制度ですが、人が創ったものである限りそれもまた歴史的な制度として、さまざまな紆余曲折を経て現在のようなものになったのであって、決して「自然」にこのようなになったわけでではないのです。

そこで本書では、ギリシア・アテナイにおける民主主義思想の「誕生」から、現代まで、民主主義という制度・思想の誕生以来、起こった様々な矛盾、それを巡って交わされた様々な思想家達の議論の跡をたどってゆきます。その中で、民主主義という「制度」の利点と弱点が人々にどのように認識され、またどのようにその問題点を「改良」しようとしたのか、あるいはその「改革」はなぜ失敗してしまったのかを辿ることにより、民主主義の「本質」とは何なのか、そしてその未来への可能性を考えてゆきます。 またあわせて、日本の民主主義の特質、その問題点についても分析してゆきます。 民主主義という思想・制度を知るための、平易な政治思想史の教科書としても最適です。

 僕自身は太平洋戦争後の「民主国家」となった日本に生まれ、戦争を直接体験することもなく、半世紀くらいの時間を生きてきました。

 太平洋戦争を経験した世代が「敗戦によって、価値観が激変するのを体験した」のと比較すると、「民主主義が正しいのは当然」だという状況で生きてきたのです。

 ところが、「国や国民を分断しつつ、多数派の人気を得て権力の座につくポピュリズム政治家」や「新型コロナウイルスが広がっていくなかでの独裁的な政治形態の国(たとえば中国)での感染対策のスピードと効率の良さ」などを見て、「本当に民主主義って、正しいのだろうか? 有能なトップであれば、独裁制のほうが良いのではないか?」なんて、考えてしまうのです。

 それこそ、僕が30年以上前に読んだSF小説『銀河英雄伝説』で、ヤン・ウェンリー提督がつねづね言っていたように「専制国家のトップが常に有能とは限らないし、そうでないときの弊害が大きい」のと、「民主主義は、個々の国民がその政治について責任を持つという点で、専制政治にまさる」ということなのでしょうけど。

fujipon.hatenablog.com

 この本のタイトル「民主主義とは何か」というのを見て、「何をいまさら」みたいな気分になったんですよ。

 しかしながら、実際に読みはじめてみると、目から鱗が落ちるとはこういうことか、と思ったのです。

 われわれは、「民主主義」のことを、知っているつもりで、ほとんど理解していない。


 著者はこの本の最初に、こう問いかけてきます。

 例えば、次のどちらが正しいでしょうか。

A1「民主主義とは多数決だ。より多くの人々が賛成したのだから、反対した人も従ってもらう必要がある」

A2「民主主義の下、すべての人間は平等だ。多数派によって抑圧されないように、少数派の意見を尊重しなければならない。

 どうでしょう。どちらも正しそうです。

 次はどうでしょうか。

B1「民主主義国家とは、公正な選挙が行われている国を意味する。選挙を通じて国民の代表者を選ぶのが民主主義だ」

B2「民主主義とは、自分たちの社会の課題を自分たち自身で解決していくことだ。選挙だけが民主主義ではない」

 これも難しいところです。

 最後にもう一つ、考えてみましょう。

C1「民主主義とは国の制度のことだ。国民が主権者であり、その国民の意思を政治に適切に反映させる具体的な仕組みが民主主義だ」

C2「民主主義とは理念だ。平等な人々がともに生きていく社会をつくっていくために、終わることのない過程が民主主義だ」

 どちらの言い分も耳にしたことがあるはずです。

 民主主義は、その概念が生まれた(とされる)ギリシアのポリスの時代から、ずっと同じことを指しているのではなく、時代によって変化し続けてもいるのです。

 以前観た、『リンカーン』という映画を思い出します。

 この映画では、リンカーンが奴隷制度を終わらせるために、合衆国憲法修正第13条を下院議会で批准させるまでの議会での懸命の多数派工作が描かれているのです。

fujipon.hatenadiary.com

 素晴らしい映画なのですが、僕は観ていて、「民主主義というもの」について、考えさせられたんですよね。

 民主主義っていうのは、ひとつの国のなかで、さまざまな異論が出て、争っているような事項に関して、「国会で賛成多数であれば、規定の投票数を一票でも上回っていれば、それまで反対していた人も含めて、すべてがその決定に従わなくてはならないシステム」なんですよね。

 この映画でいれば、あれだけ「憲法修正案」に反対していた人たちも、それが「可決」されれば、おとなしく従わなければならないし、実際に反対派たちはそうしました。

 99対1ならともかく、51対49でも、49の側は、51に従わなければならない。

 この映画の憲法修正の場合には、3分の2をめぐる攻防ですけど。

あわせて読みたい

「民主主義」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    竹中平蔵氏は教え子が引退勧めよ

    田中俊英

  2. 2

    中国に反論せず 茂木外相の失態

    WEDGE Infinity

  3. 3

    朝日新聞170億円赤字 社長退任へ

    BLOGOS編集部

  4. 4

    眞子さま結婚に浮かぶ若者の苦悩

    木村正人

  5. 5

    いる? 宮崎謙介氏の報道に疑問も

    BLOGOS しらべる部

  6. 6

    西村大臣「リスク低くても制約」

    BLOGOS しらべる部

  7. 7

    よしのり氏が秋篠宮さまを擁護

    小林よしのり

  8. 8

    大塚久美子氏が辞任 戦略に矛盾

    東京商工リサーチ(TSR)

  9. 9

    揺れる電通 社訓・鬼十則刷新か

    文春オンライン

  10. 10

    コロナ自殺を増さぬよう経済回せ

    永江一石

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。