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バロンズ:米大統領選前、米経済はV字回復も問題残す

Barron’s : U.S. Experiences V-Shape Recovery Right Before The Election.

バロンズ誌。今週のカバーにパウエルFRB議長を取り上げる。パウエル氏は2018年2月にFRB議長に就任し、金融政策の正常化に踏み切った。しかし、わずか7カ月後の2019年7月に3回にわたり予防的な利下げを実施。新型コロナウイルスのパンデミックでは、2020年3月に①ゼロ金利政策の再開、②無制限の資産買入を経て大規模な再導入、③緊急貸出制度の決定(7月には12月末までの延長を決定)――などを断行した。

さらに、8月のジャクソンホール経済会議では”長期的な目標と金融政策戦略”を改定し2%超のインフレを採用、政策自体の方向性を変更した。そのパウエル氏が率いる米連邦公開市場委員会(FOMC)は米大統領選直後の4~5日に開催され、一連の政策を据え置く見通しだ。誰が大統領に就任しようとも、パウエル氏は2022年2月までFRB議長を務める。トランプ再選あるいバイデン政権誕生でどのように政策を舵取りしていくのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ ウォール・ストリート、今週は米経済に焦点を置く。抄訳は、以下の通り。

米経済のバンジージャンプ回復は目覚ましいものの、不十分―The Economy’s Bungee-Jump Recovery Was Impressive—but It’s Not Enough.

4年前の本コラムで、フォード大統領の言葉「悪夢はもうすぐ終わる」との言葉を引用した。そのような間違いが繰り返されることはない。

米大統領選を11月3日に控え、本コラム執筆時点で8,500万人が期日前投票を行った。しかし約5,500万件もの郵便投票の開票作業は州によって時間が掛かる見通しで、これまで選挙関連の訴訟は約230件に至る。10月にダウは6.5%安、ナスダックは5.5%安と3月以降で最大の下落となったが、米株相場にとっての問題は選挙結果が遅れることだけではない。足元、新型コロナウイルス感染者の増加が嫌気され、西欧のロックダウン再開に加えVIX指数を40台と6月以来の水準へ急伸させた。その上、米債市場はヘッジとして機能せず米10年債利回りは一時0.868%と6月初め以来の水準へ上昇する有様だ。

米株相場が不確定要因に反応し急落する陰で、米経済は7~9月期に約2.2兆ドルの景気刺激策の恩恵や経済活動の再開も手伝い、バンジージャンプのようなV字回復を果たした。コロナ以前の水準を回復しなかったとはいえ、特に個人消費は前期比年率59%増を目覚ましい回復を遂げたものだ。

チャート:米実質GDP伸び率、前期の31.4%減から急回復

(作成:My Big Apple NY)

アライアンスバーンスティーンの元首席エコノミストであるジョー・カーソン氏は、コロナ禍による景気後退を「戦後初のサービス主導のリセッション」と呼んだ。そのカーソン氏は足元、リンクトインで消費者の支出先が観光、旅行、娯楽などから財へシフトしたと指摘する。しかし、財へのシフトは長続きしそうもない。一度ラップトップや自転車や芝刈り機を購入すれば、暫く買い替える必要がないためだ。ここがサービスと異なる点で、今日あなたがレストランに行ったとしても、翌日またお腹が空くはずだ。

GDPの6割、労働者の85%をサービス部門が占めるなか、サービス部門が完全に再開するまで持続的な回復は発生しない」――カーソン氏は、こう語る。また同氏は、経済活動が一部再開する状況下で、サービス部門の雇用は2020年初めと比べ1,000万人下回ったままとも指摘する。

新型コロナウイルス感染者数の増加により、ビジネスが制限されかねないにも関わらず、追加的な経済対策成立の目途は立っていない。ムニューシン財務長官とペロシ下院議長は、米大統領選前の成立はないとの判断を下した。財政支援なしでは、ワクチンや治療薬の開発進展を含め、サービス部門が部分的に閉鎖される状況では持続的な回復へ導けそうもない。

頼みの綱は、FRBだ。4~5日開催のFOMCでは現状の超緩和策をを維持する見通しである。目下のところ、2000年のフロリダ再集計の事態を迎えることが問題だ。当時、株価は下落を続け最高裁が判断を下すしブッシュ氏が勝利宣言するにあたって12月まで待たねばならなかった。一つ違いがあるとすればFedの金融政策で、1999年から2000年に掛け利上げを行っていた

チャート:2000年当時のS&P500

(作成):My Big Apple NY)

強気派にとっての希望の光は、米株市場が不確実性を嫌気し下落した前週末に時間外取引で米株先物が反発したことだ。エバーコアISIによれば、選挙前の調整終了のサインであり、もしこの指摘が的中すれば2016年当時のような米株相場のカムバックが期待されよう

――2000年当時はFedの利上げに加えITバブル崩壊過程とあって、11月7日の投票日から12月20日まで11.7%下落しました。また、今年の選挙人投票日は12月14日であって、2000年の12月18日より4日早くなります。従って、選挙人の投票日を意識し最高裁が当時の12月12日より早期に判断を下してもおかしくありません。とはいえ、今年は1960年以降で最も米国が分断される状況。最高裁の判断が出て白黒はっきりしたとしても、大規模デモが発生しないとも限らず。ブラック・ライブズ・マター当時のような混乱が発生すれば、都市部を中心にサービス部門を下押ししかねないと同時に、オンライン小売がその分を相殺できるのか。少なくとも抗議デモが全米年で展開されれば、サービス部門の雇用回復を下押ししかねません。

(カバー写真:jack hebert/Flickr)

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