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「住みたい街」ランキングが参考程度にしかならない理由

「住んでみたい街」ランキングで6年連続1位になった恵比寿(時事通信フォト)

 不動産デベロッパーや住宅情報サイトなどが定期的に発表している「住みたい街ランキング」。この手のトレンド調査が出る度に大きな話題となるが、人気上昇エリアの物件は本当に“買い”なのか──。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がアドバイスする。

 * * *
 私はマンション市場についてあれこれと発言することが本業である。そして、時に一般の方からマンション購入の相談を承ることがある。

 その際によく聞かれることのひとつに、「どこの街を選べばいいですか?」というのがある。かなり漠然とした質問だが、尋ねる側の本音を翻訳すると「どの街で買えば資産価値が下がりませんか?」ということである。

 マンションの価格というのは、景気が良いときは上がって悪くなると下がる。景気が悪くなっても価格の下がらないマンションなどあり得ないといってもいい。ただ、市場をエリア別に中長期でみてみると「高く買ったのに半値以下になった」エリアもあれば、「高く買ったけれども高いまま」の街もある。

 前者は郊外でニュータウン的に開発されたエリアで、後者は都心の人気地区である。例を挙げるなら表参道(港区)、番町(千代田区)、代官山(渋谷区)などだ。しかし、こういう街はマンションが高すぎて一般人には手を出しづらい。

 そんな超一等地でマンションを買えない方は、当然ほかの街を探さなければならない。多くの人は「人気の街でマンションを買えば価格は下がらない」と考えがちだ。そこでよく用いられるのは「住みたい街ランキング」的な指標だ。

6年連続1位「恵比寿」の評価

 今年9月にもこの手の指標が発表された。MAJOR7(メジャーセブン)というところが出した「住んでみたい街アンケ―ト(首都圏/関西)2020年」だ。

 MAJOR7というのは、住友不動産・大京・東急不動産・東京建物・野村不動産・三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンスの7社だそうだ。自分たちのことを「メジャー」と名乗るのは、日本人の一般的なメンタリティとしてやや戸惑いを感じるが、一応この7社の大半は日本のマンション業界ではメジャーな存在であることも確かである。

 同調査によれば、住んでみたい街で首都圏の1位~10位は以下の結果になったという。

1位/恵比寿
2位/目黒
3位/吉祥寺
4位/自由が丘
5位/横浜
6位/品川
7位/中目黒
8位/表参道
9位/二子玉川
10位/代々木上原

 ここで「街」というのはおそらく鉄道の駅名を指すらしい。「横浜」というのを行政区だと考えれば広すぎる。「市」ということなら日本で最大規模の行政区だ。ここでは「横浜駅の周辺」ということだと理解しよう。そう考えれば、どの街もいかにも人気が高くてマンションの資産価値は下がりにくそうである。

 一般の方々はこういう指標を見て、「では恵比寿で買えば間違いないのか」と考えがちである。まあ、そうともいえるし、そうでないともいえる。

「恵比寿」は6年連続で1位だそうだ。この中で順位が大きく変動したのは「品川」で、前年の2位から6位に順位を落とした。メディアの方はこういう指標を見て、「恵比寿の人気は底堅く、品川は人気が翳っている」と考えたりする。

 しかし、私のようなマーケットウォッチャーや不動産業界人は、はっきり言ってこういう指標なんて「どーでもいい」と思っている。

 不動産というものは、「どこにあるか」というのが最も重要な要素であることは確かだ。しかし「恵比寿」にあるからといってどんな物件でも買っていい、なんてことには絶対になり得ない。

 また、10位の「代々木上原」は1位の「恵比寿」よりも9ランク分劣っているかというと、そんなこともまったくない。つまり、我々業界インサイダーにとってこういう指標は「参考」程度以下の存在である。

 例えば、ある仲介業者がマンションデベロッパーのどこかに物件を持ち込み、「メジャー7のランキングで1位になった恵比寿の土地が出ましたが、御社のマンション事業用地にいかがですか」などと言ってきたら、「こいつは素人か」と思われて軽く見られるだろう。

 業界人にとって、恵比寿と言える場所で物件が出れば「メジャー7のランキングで1位になった」などと枕詞をつけなくても、無条件で資料を丁寧に読み込む。それはこのランキングで10位以内に入っているところなら、すべて同じだ。

 しかし「多摩ニュータウンの開発区域で…」とか「千葉の美浜区なんですが…」となると、「まあ、一応見てみるか」というスタンスになるのだ。

関西圏ランキングで京都市内が入っていない理由

 ちなみに、関西圏のランキングも見てみよう。

1位/西宮北口
2位/夙川
3位/梅田・大阪
4位/岡本
5位/御影
6位/芦屋川
7位/千里中央
8位/神戸三宮・三ノ宮
9位/天王寺
10位/芦屋

 駅別に人気度を測ればこうなるだろう、という街が並んでいる。お気づきだろうが、阪神間が8つで大阪市内が2つ。府県で分ければ7つが兵庫県である。

 ここで京都市内がひとつもないのはなぜか? 京都市内には鉄道の駅が少なく、かつ人気エリアには駅がない。しかし、下鴨や北白川といったエリアは夙川や御影に劣らない上質な住宅地を形成している。

 また、この中には兵庫の甲東園や大阪の帝塚山といった伝統的な住宅地が抜けているが、それはアンケートに答えた層がそういった街に対するイメージを持っていないからだろう。これらはいずれも「大人の住宅地」である。さらに言えば、マンションはほとんど開発されていない。だから、マンション供給の「メジャー7」が出すランキングには出てこなくても当然か。

 マンションに限らず、幅広い分野のランキングが日々世に出されている。しかし、その内容は「参考程度」に捉えるべきものがほとんどではないか。住宅や不動産に関するものも、私が見る限り大半がそのレベルだ。

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