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「誤報が多い」…ウォール・ストリート・ジャーナル記者たちが抗議文を出した理由 - 近藤 奈香

 アメリカを代表する経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」が揺れている。

【画像】トランプを支持する“メディア王”マードック氏

「発行部数232万部を誇る世界最大の経済紙が社説などでトランプ寄りの姿勢を強め、編集部内でも対立が激化しているのです」(在米ジャーナリスト)

 10月16日の社説では、民主党大統領候補のジョー・バイデン前副大統領の次男に関する疑惑を取り上げて〈ワシントン政界関連で見られる地位悪用の典型的な例だった〉と指弾した。


©iStock.com

 この疑惑は大衆紙「ニューヨーク・ポスト」が報じたもの。2014年にウクライナのガス会社顧問が次男に、バイデン副大統領(当時)との面会を仲介してもらったことへの御礼のメールを送ったという内容だ。

「記事を担当した一人はFOXニュース出身の若手で、メールの出どころは『次男の物と思われる廃棄されたパソコン』。バイデン側は面会の事実はないと否定し、記事の信憑性に疑念が持たれ、フェイスブックなどは記事を拡散する投稿を制限し、他メディアは後追いしなかった」(同前)

“トランプ応援団”ぶりはこれだけではない。2016年の大統領選にロシアが干渉した疑惑が浮上すると、「民主党とロシアが共謀していたのか捜査すべき」と訴え、社説でトランプ氏の疑惑を捜査する特別捜査官に辞任を呼びかけた。

 なぜWSJは民主党を攻撃するのか。その要因とみられるのが、“世界のメディア王”として知られるルパート・マードック氏(89)だ。ニューヨーク・ポストも、WSJの発行元も、彼が率いる米ニューズ・コーポレーションが所有する。

「マードック氏は前回の大統領選挙でトランプ氏のアドバイザーを務め、一貫して支持してきた。そのため、トランプ大統領誕生後、WSJでは報道方針で対立した記者の解雇や移籍が相次いだのです」(国際部デスク)

 今年6月にはマイク・ペンス副大統領(61)が「コロナ感染の第二波は存在しない」と題して、現政権のコロナ対策は成功していると主張する署名記事を掲載。しかも公表された数字と異なるものを確認せずに載せ、訂正に追い込まれた。

記者ら280人が連名で抗議文を提出

 その1カ月後、ついに社内から反発の声があがった。記者ら280人が連名で「社説やオピニオン欄に誤報が多い」という抗議文を発行人に提出したのだ。

 さらに7月末、マードック氏の次男、父と違ってリベラル派のジェームズ・マードック氏(47)は親会社の取締役を辞任。「多様な視点を反映する名目のもとで偽情報を正当化すべきではない」と他紙で語った。

 大統領選後、WSJではひと波乱ありそうだ。

(近藤 奈香/週刊文春 2020年10月29日号)

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