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政策コストは受益者負担が原則

昨年6月に成立した改正「動物の愛護及び管理に関する法律」(以降、「動物愛護法」)の第二段階目の施行(令和3年6月1日)に備え、従業員一人当たりの犬や猫の飼育上限頭数などの「飼養管理基準」を定める環境省令案が、10月16日から11月17日までパブリックコメントに付されている。

かかる基準の新規導入は、繁殖を専門とするブリーダーでも、犬猫等の販売業でも、殺処分回避のために保護犬等を引き取り市民に譲渡するシェルター団体の皆さんでも、それら動物を自らの手元に留め置く際の動物の生きる環境の質を保つためであり、それ自体、動物の生命の尊厳の観点から重要で、初めて基準設定するのは当然と言えよう。

しかし、パブコメ前の9月だったと思うが、殺処分となるはずの保護犬を、ある県当局から引き取り、病気などを治した上で希望する市民へ譲渡する地道な活動を続けているあるNPOの友人から、「このままでは、譲渡団体の限られた職員数の実態に照らしてみて、いささか非現実的な規制が十分な経過措置なしに導入され、その規制による人件費負担増を回避するために、逆にそうした善意の団体が、引き取る保護犬や猫の数を抑えざるを得なくなり、結果として殺処分が増えてしまう恐れがある」との警告の声をもらった。

その時私は、そのNPOの友人に環境省の担当室を紹介し、話を聞いてもらう段取りを行うに止まったが、その後も気になり、先日、改めて環境省の担当幹部から話を聞く機会を作って勉強してみた。結果、規制に伴うコストアップをどのようにして誰が負担するべきか、という「規制に伴う負担の帰着」という点で、規制当局が問題の本質を正しく捉えていないまま、営利、非営利関係なく同じ規制を導入しようとしていることを知って驚いた。

すなわち、ブリーダーの皆さんや販売業者の場合には、営利活動であり、規制に伴う人件費増、コスト増は、手数料や販売価格に上乗せして回収することが可能だが、保護犬や猫の譲渡は有料ではない(飼養管理費用の一部を譲渡先から受け取る場合もあるが、利益は出ない)ため、転嫁はできない。

そして、そもそも保護犬・猫を無料で引き取ってもらい、希望する市民に譲渡することで誰が恩恵にあずかっているか、と言えば、それは、保護犬・猫を引き取ってもらい、そのことによって自ら殺処分をしなくて済むようになる都道府県なのではないか。

そして本来都道府県は、そうした譲渡団体に対し、本来自分たちでやるべき譲渡のための費用を委託費として支払うのが筋だと思う。

つまり、都道府県にとっても、動物愛護の精神から見て動物の殺処分は避けるべき事であり、本来自分たちの手によって希望する市民へ保護犬等を譲渡すべきであり、それを自らできないなら、その意思と能力を持つ譲渡団体と対等なパートナーシップを組み、委託費を支払って殺処分することなく譲渡団体の活動を通じて、保護された犬などを譲渡するべきではないか。

実際、熊本県は、2016年の熊本地震後、保護犬の譲渡に向けた引き取りに対し、1頭一万円を上限に補助金を交付、一時収容する施設の整備費も補助していた、と聞く。まさに、「対等かつ大切なパートナー」を事前に登録団体として県があらかじめ確保し、保護犬たちの第二の人生を切り開いてきているという。

となれば、今回の環境省による飼養管理基準導入に際しては、価格に転嫁可能な営利活動を営むブリーダーや販売業者には、その規制コスト負担はしてもらえば良いが、保護犬等の引き取りに伴う規制コストは、善意で引き受ける譲渡団体が負担するのではなく、これを契機に「受益者」として殺処分を逃れることとなる都道府県が費用負担することとすべきではないか。

そして、環境省は、譲渡を前提とする保護犬等を譲渡団体が引き取る場合は、熊本県のように、譲渡団体に対して委託費を支払うものとするのが筋であり、全ての都道府県にそのようにすべきことを徹底すべきではないか。

聞くところによれば、環境省には、こうした関連の予算は1.7 億円ほどしかなく、それも全国の愛護センターの改修費用として、何年分も使い道が全て決まっており、裁量の余地のある予算は何もない、という。今回のような規制が変わったことによるコスト増の激変緩和措置導入のための予算などに回す余裕もどこにもない、という。

殺処分をなくす政策は、今や多くの国民に支持される政策となりつつあるが、残念ながら、殺処分を長く続けてきた日本社会では、まだまだ国全体の意識変革が追いついておらず、予算制度や規制政策など随所に不合理、不整合な点が残ってしまっている。われわれ立法府にいる者は、デジタルに限らず、絶えず率先して社会のトランスフォメーションを推し進めていかないといけない。

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