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障害者制度改革の流れ - 青木志帆

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 当事者のための難病政策を考えるシンポジウム

申請の窓口にすら立てない人がいる社会はおかしい困っている人の問題ではなく、困らせている社会の問題として谷間をなくす試みを、新しい谷間を作ることで終わらせないために

◇制度と制度の谷間から


兵庫県弁護士会の弁護士をしています、青木志帆と申します。弁護士が一人も参加していないシンポジウムというのははじめてです。しかも、東京で思い切り関西弁で失礼します(笑)

一応、私も難病当事者ですから、このシンポジウムにシンポジストとして呼んでいただいたわけですが、私のタニマーな状況について、とりあえずどういう病気があるかということだけ、ご説明させていただきます。私は六歳の時に頭蓋咽頭腫という脳腫瘍が発見され、二度手術をしました。

頭蓋咽頭腫というのは脳腫瘍なものですから、本当に小さい腫瘍だったのですけれども、結構色々な障害が残りました。中でも一番大きいのが下垂体機能低下症というものです。下垂体、すなわち、脳から分泌されるホルモンについて、出てこないホルモンがあるという内分泌系の機能に障害が発生しました。単純に体力がないとか、気圧が低いとどうも体調を崩してしまうとか、そういうところが障害といえば障害という形で残っています。

ですから、体のどこかが動かないとか、そういうことではないので到底身体障害者手帳をもらえるという発想にはならなかったわけです。ただ、小児期の特定疾患には入りましたので、医療費の助成は受けていたのですが、それだけです。ちょっと体力のない子、ということで育ってきました。

私の疾患は手帳取得者が本当に少ないんです。たぶん、たまたま脳腫瘍の手術を受けた時に、麻痺が残ったとかで身体障害者手帳を受け取った人ではないかと思いますが、およそ手帳がもらえる疾患ではありません。

 

◇視野が三分の一でも視覚障害ではない

視神経も脳腫瘍が触れたものですから、視野狭窄障害といって視野が同心円状に普通の方の大体三分の一程度であると言われています。そこまで見えないのであったら、視覚障害くらいとれるだろうと思って申請をしてみたことがあるのですが、認定基準の視野範囲の計算方法が基準とずれているというよくわからない理由で、貴方は視覚障害ではありません、と言われて、「本気ですか?」という感じでした。

車の運転も当然出来なくて、交通手段が公共交通機関を利用するしか仕方がないのですが、だけれども、障害者ということにならないので交通運賃の割引とかは受けられないわけです。見た目に何か障害があるかと言われたら、ホルモンの関係で太っているということと肌が若干白い、栗毛である—地毛ですが(笑)、色素が薄めであるのが私の疾患の特徴かなというくらいで、見た目で「障害者ですね?」と言われたことは一回もありません。

下垂体機能低下症であるとか、頭蓋咽頭腫の中でも、私は非常に軽度であったものですから、わからないようになっていますが、重症の方であれば見るからに病的に太っておられる方が多い。そういう意味では、私は随分「マシな方」であるということが言えます。

ですから、私のタニマーな状況というのは主に医療費助成の制度のところであらわれてきます。難病の関係の制度というのは非常にややこしいので、ご存じない方がはじめて聞いても本当にわからないと思うのですが、ざっくりとしたところだけご説明させていただきます。後は、ご自身で調べていただければと思います。





◇法の下の平等? 

私の場合は、原則十八歳以下の方が受けられる小児慢性特定疾患の対象の病気でした。月々結構な医療費がかかるのですが、それは無料でした。ところが、二十を過ぎた途端に、ものすごく高額な医療費を請求されたわけです。

一回受診するあたり最初は三万円だったんですが、途中から新しい治療法が入ってきて最大十八万請求されたことがあってびっくりしたことがあります。どうして私は生きるためにこんなにお金がかかるのか? 私に法の下の平等というのはないのではないかと強く思いました。それが、弁護士になろうとしたきっかけです。

一応、平成二十一年に大人の方の公費助成の制度については対象の疾患になったのですが、でも、やはりあの十八万の請求を受けた日の衝撃というのは忘れられないものです。ですから、特定疾患の対象に入った後もこうして難病患者の制度の谷間を一人で勝手に研究しています。

今回のシンポジウムにおいて「難病」という単語が多数出てきますが、難病のことをよくご存知の方であれば特定疾患制度の対象疾患であると取られる方が多いのではないでしょうか。実際、そういう使われ方をしている場合もあるのですが、今回は、難病というのはどういう制度の状況にあるのだろうということもあるんだろう、とはじめて聞きに来られた方を対象として考えています。ですから難病という場合は一般的に治療困難な病気なんだなと捉えていただければと思います。

現在、私自身は弁護士として主に重度訪問介護の長時間介護支給量訴訟を担当しています。最近、結構、画期的な判決が出て有名になったのが和歌山のALS訴訟です。ALSも特定疾患に入っている難病ですが、全く体が動かなくなっていくので身体障害者の類型に入ると思います。ALSに先んじて提示された和歌山石田訴訟というのがありました。これも大阪高裁までいって非常に画期的な判決をいただいています。

現在、提訴したばかりの訴訟として香川県まんのう町複数介護訴訟があります。知的障害者の方の二十四時間、そして複数名で介護することを求めてしている訴訟です。札幌で同じように身体障害者の方で長時間介護を求めている、札幌鬼塚訴訟というのがありますが、これも控訴審の段階から代理人をしています。

私自身は難病ではありますが、割と普通に弁護士をしていますので、一番この中では制度の谷間、見えない障害なのかなという気がします。

 

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