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急ぐ安全指針と避難計画から透ける小手先解決

 原子力規制委員会が原発の再稼働を判断する根拠になる安全指針と防災・避難計画を巡って慌ただしく動いています。新安全指針は来年3月末まで、防災計画は年内の策定が求められ、基本から考えて網羅的に議論するには時間が足りません。どうやら事務局側は落とし所を用意してあり、小手先の解決策で済ませるつもりと見え始めています。福島原発事故の反省に立つ根本的な見直しではなくなりそうな予感がします。

 原子力規制委は31日の委員会で事故時に放射性物質の放出前に直ちに避難する予防的措置準備区域を原発から半径5キロ圏に、緊急時に避難や屋内退避ができるよう備えておく緊急防護措置計画区域を半径30キロ圏に設定しました。30キロ圏で十分か議論があるものの、従来より大幅に避難範囲が広がった結果、東海第2原発で93万人、浜岡原発74万人、島根原発44万人、柏崎刈羽原発43万人など膨大な数の住民が避難対象になりました。このほか20万人以上が5原発もあります。

 これだけ多数の住民の足を確保して避難させるには、相当に長い時間を見込まざるを得ません。ほぼ同時に安全指針検討チームに出た《原子力規制委、事故踏まえ新基準 検討チームにたたき台》(西日本新聞)を見て、気が付きました。《現行は、短時間の全交流電源喪失への対策を求めているが、素案は「一定時間の冷却確保」を求めた。「一定時間」をどの程度の長さとするかは、今後議論を続ける》とあって、電源喪失してもある程度長い時間を稼ぐことが新安全指針の骨格になりそうです。

 福島原発事故では、事故発生翌日には高まる格納容器圧力を逃がすベント操作で20キロ以上も北側に高濃度の放射能雲が流れました。これを起こした1号機のように電源喪失後の安全装置が旧式で劣っている原発は除外し、安全装置が自動起動して長期に冷却を維持できる原発だけに再稼働を認めれば、安全確保面でも防災・避難計画でも整合させられると考えている可能性が高いように感じます。もちろん非常用電源の改良なども加わります。

 従来の安全指針の考え方「安全確保の仕組みがあるから大丈夫」を、安易にぎりぎりにしていたから、もう少し安全側に振って済ませる思想と言えます。しかし、福島事故の3号機では起動していた安全装置を運転員が止めてしまいました。また、2号機で安全装置依存から海水注入に切り替える判断をすべきだったのにずるずると流されて、結局は炉心溶融に至りました。過酷事故は地震・津波だけで起きるとは限りません。小さな異常に人間系の判断ミスが加わって拡大していく方がありそうと考えられてきました。福島事故の反省に立つならばこうした人間系の見直しが欠かせないと考えますが、検討チームの議論はもっと平板なものです。

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