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ウォルマートの陳列から銃が消えた米国 - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

(artran/gettyimages)

米小売大手ウォルマートは、10月29日に同社の全店舗の陳列から銃、ライフルなどを撤去する、と発表した。販売をやめるのではなく、店頭陳列のみを停止する。その理由は暴動による盗難を恐れてだという。

米国では今年に入り、各地で暴動が起きるケースが目立っている。最大の動きは5月に起こった黒人男性が白人警官に首を押さえつけられて殺害された事件を受けたもので、BLM運動に基づいた暴動は全国に広がった。このとき商店の打ち壊し、略奪などが起こったが、ウォルマートは今後こうした暴動がさらに広がり、店舗から銃などが奪われることを警戒している。

というのも選挙を前にまたもやペンシルバニア州で黒人男性が白人警官に射殺される事件が起き、抗議デモが一部暴徒化した。今の米国は何かの事件をきっかけに、人々の行動が暴発しやすい状況になっている。

最大のものはいよいよ数日後に迫った大統領選挙だ。現状でも各地でMILITIAと呼ばれる熱狂的なトランプ支持者、極右の武装団体が市民と小競り合いを起こしている、と報道されている。これに対抗する形でANTIFAと呼ばれる極左団体もあり、こちらはトランプ大統領がBLMの抗議デモ、暴動を煽った、と非難している。

米国では選挙当日に様々な小競り合いが予想されている。現時点でも各地で投票用紙の事前投票箱が放火される、破壊される、といったニュースがある。選挙当日はMILITIAが一部の投票場で主に民主党支持者の投票を妨害するのでは、という予測も流れている。

また選挙当日の夜、開票結果で僅差でジョー・バイデン氏が勝利した場合、トランプ大統領は敗北宣言を行わず、それを支持する熱狂的なトランプファンらが集結し、それを非難する民主党支持者との衝突がおこなる可能性もある。

こうした衝突、小競り合いが乱闘や暴動に発展することを考えると、銃器を店頭に陳列することでそうした銃器目当てに店舗が襲われる、また奪われた銃器が犯罪につながることを懸念し、ウォルマートが店頭からの撤去という決断を行った。ウォルマートでは6月にもBLM運動による暴動を受けて一時的に銃器を店頭から撤去したことがある。

しかし今年の米国での銃器販売は昨年比で8割近い上昇を見せている。3月に各地でロックダウンが行われたとき、人々はトイレットペーパーと銃を買い込んだ。社会が不安定になると自衛のために銃を購入する人は増える。

さらにその後のBLM運動の一部暴徒化などで、自分の身を守るために銃が必要だ、という考えは広がった。そして選挙当日を控えた今も、選挙後の混乱を見越して銃を買う人が増えている。

筆者は米国人の知り合いに「銃を持っているか」聞くようにしているが、大体8割の人が銃を所有している、と答えた。ごく普通の主婦が夫に「そろそろ銃の練習をしておきたいからシューティング・レンジに連れて行って」と言うのが米国社会なのだ。

しかも今年に限っては、「初めて銃を購入した」という人が購入者全体の4割近くを占めているという。若い世代は銃離れが進んでいる、と言われていたが、今年の混乱の中でついに銃購入に踏み切った、という人が増えている。

社会を不安にさせる事件が起こると銃が売れる

過去の米国における銃販売を見ると、社会を不安にさせる事件が起こると銃が売れる、という傾向が見える。例えば1カ月に100万丁以上の銃が販売されたのは、2013年1月、コネチカット州のサンデーフック事件の後のことだった。この事件は2012年12月に発生、サンデーフック小学校で26人の教師、生徒らが無差別に射殺された。

また2016年1月にも100万丁を超える販売が記録されたが、これもカリフォルニア州サンバナディーノでの銃乱射事件を受けてのことだ。この事件は死者14名、重軽傷者17名という惨事となった。

しかし今年に入ってからの銃販売はこれらを超えるペースで、しかも継続的に増えているのが特徴だ。大統領選挙後に大きな混乱が起きれば、それが市街戦のような大掛かりなものに発展する、と予測する人もいる。選挙が引き金で銃社会米国の恐ろしさを世界に知らせることになる、という事態だけは避けてもらいたいものだ。

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