- 2020年10月30日 07:43
どうする菅外交:アメリカと中国の狭間で国益を守れるか?
11月3日のアメリカ大統領選は、わが国の外交にも大きな影響を及ぼす。また、習近平独裁体制を強化しつつある中国は、10月26日に始まった5中全会で新たな経済モデルを提示し、アメリカとの対立に備えようとしている。
これからの世界は、米中対立を軸に展開していく。パックス・アメリカーナ(アメリカの平和)を維持しようとするアメリカと、パックス・シニカ(中国の平和)を確立しようとする中国の争いである。
初の外国訪問として選んだベトナムとインドネシアでは、菅外交は大過なく終わった。しかし、これからは難問が待っている。
日本外交の基軸は良好な日米関係であるが、日米防衛負担や貿易摩擦などは、トランプ、バイデン、いずれが当選しようとも、基本的には今後とも問題となり続ける。
しかし、バイデン勝利の場合、国際社会への対応について、パリ協定(地球温暖化対策)やイランとの核合意にアメリカが戻るかどうかが焦点となる。日本としては、アメリカ第一主義の弊害を説き、覇権国としてのアメリカの責務について力説すべきである。この問題では、ヨーロッパと連携することが肝要である。
今の世界の最大の問題は、アメリカと中国の覇権争いであり、両国の競争が激化していることが世界の不安定要因になっている。
中国は海軍力を強化し、太平洋への進出を加速化している。先の菅首相のベトナム、インドネシア訪問も、それに対抗する意味があった。アメリ、日本、ASEANインド、オーストラリアが協力して中国の封じ込めを狙っている。
米中、豪中関係は悪化しているが、日印ASEANは、中国との関係悪化を望んでいるわけではない。貿易のパートナーとしては極めて重要であるし、米中関係が悪化して利益になる国はない。菅首相に今後求められるのは、両国の仲介である。
自由と民主主義、自由経済を守り抜くという姿勢を堅持するとき、基本的人権を守らない中国、保護主義に傾きがちなアメリカと対立することになるが、GDP世界第3位の大国として、主張すべきは堂々と主張しなければならない。
ロシアとの関係については、プーチン政権が今後とも盤石かどうかは疑問のであるが、憲法を改正して領土の割譲を禁じるなど、ロシアの態度は硬い。容易には北方領土問題は解決されそうもないが、対話路線は継続していく必要がある。
韓国との関係については、文在寅政権が続く限り、懸案の問題の解決は極めて困難である。菅首相が下手に妥協をすれば、日本国内での反発が強まるであろう。文化交流などで、解決の糸口を見出すしかないのが現状である。
拉致問題についても、金正恩体制下では進展の見込みはあまりないが、水面下での接触を含め、何らかの打開策を模索する努力は続けるべきである。
コロナ対策をはじめ、内政の重要課題が山積している。外交は、焦らずに出来るところから、少しずつ進めていけばよい。