- 2020年10月29日 15:09
犬164匹が8畳2間にすし詰め 急増するペット多頭飼育崩壊の件数は“コンビニ並み”か
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猫や犬などのペットが繁殖し、飼育できない状況に陥ってしまう「多頭飼育崩壊」の現場がコロナ禍を機に増加している。行政対応は整備されておらず、保護団体も頭を抱えている。
島根県出雲市の民家で8畳2間の空間に犬164頭が飼育崩壊状態でいたことを受け、公益社団法人「どうぶつ基金」が11月10日から不妊手術などを行うことを決めた。緊急支援物資や寄付を募集している。
【関連リンク】多頭飼育崩壊 犬164頭 ! 緊急支援のお願い。(どうぶつ基金)
これまで犬猫の殺処分ゼロを目指し活動してきたどうぶつ基金の佐上邦久理事長が「一般家庭における犬の多頭飼育崩壊の中では、間違いなく史上最悪」とする今回のケースや、コロナ禍で増加しているペットの多頭飼育崩壊の現状を取材した。
最初は1頭から始まった史上最悪のケース

どうぶつ基金によると、出雲市の民家では164頭の雑種犬と飼い主家族が8畳2間の屋内で一緒に生活しており、数年前から市の保健所に近隣住民から相談が持ち込まれていた。
保健所は指導のみを行っていたが、多頭飼育状態は解決しなかった。今年になって近隣住民から相談を受けた地元の動物愛護団体が犬たちの飼い主を説得。同団体のアドバイスを受けた保健所が10月、どうぶつ基金に無料で不妊手術などを行ってくれないかと協力要請をしたという。
どうぶつ基金の佐上理事長は、民家を訪問した際、床やベッド、台所などいたるところに犬たちがひしめきあっている様子に驚いたという。エサの不足から犬たちはお互いの排泄物を食べるなどして生活。近親交配の影響で身体が弱っている犬もいた。

佐上理事長は「飼い主の悪意ある行為がこういった事態を招いたわけではない」と話す。飼い主家族は当初、1頭の野良犬を保護。その犬が子犬を産んだことから徐々に頭数が増加し、飼育が不可能な状態に陥ってしまったという。
「最初の1頭の時点で不妊手術をきちんとしておけば、犬も人も苦しむこのような事態に陥ることはありませんでした。猫の多頭飼育崩壊は非常に多いですが、犬のケースは珍しい。164頭が8畳2間にすし詰め状態になっているというのは間違いなく史上最悪のケースです」と佐上理事長は話す。
飼い主が不妊手術をせずに飼育 指導のみの行政対応

多頭飼育崩壊の問題点について、佐上理事長は「行政の対応」も指摘する。佐上理事長によると出雲市のケースでは、30〜40頭の時点で保健所が把握していたものの、指導のみに留まっていたという。多頭飼育崩壊の現場では、行政機関から「飼い主のいる犬や猫の不妊手術費用を税金から捻出することは難しい」と言われることが多い。
「もちろん、不妊手術をしなかった飼い主に責任はありますが、もっと早い段階で行政が対応することはできなかったのか…」と佐上理事長は悔しさをにじませる。
今回、どうぶつ基金は島根県からの協力要請を受け「1頭も殺処分をしない」ことを条件に、手術可能な約140頭の不妊手術やノミダニの駆除を無料で行う予定だ。
手術費や虫の駆除にかかる費用は通常、1頭5万円ほど。今回はどうぶつ基金に普段から協力している獣医らが手術を行うため、費用は多少抑えられるものの、負担は大きい。手術費などに加えて、糞尿によって汚染された民家内や庭の洗浄・消毒費などの費用が嵩むため、募金への協力を呼びかけている。
手術は11月10〜12日の3日間を予定。手術後は犬たちを洗浄した元の民家に戻し、里親を募集して数を減らしていく予定だという。