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WFPのノーベル平和賞受賞は食料安保の重要性を示唆

今年も平和賞には318もの個人団体が推薦されていた。SDGsでは17の目標のうち、貧困対策に次いで2番目の目標に30年までに飢餓ゼロを設けている。そうした中で、2020年にはWFP(世界食糧計画)がノーベル平和賞を受賞した。歓迎すべきことであり、日本もこうした問題にある程度関心を持っていくきっかけになればいいと思っている。

<世界に普遍性がある日本型農業>

農林水産省に入ってから2年間(1976~8年)のアメリカ留学の機会を得、中西部の大規模農業を実体験し、いろいろ考えさせられた。
世の大半の人々は、アメリカ型の大規模農業こそ世界の見本となる農業だと勘違いしている。私は、アメリカの持続性がない環境破壊的農業には疑問を感じ、むしろ自然と調和した日本型農業の方が世界に普遍性があるという確信を持つに至った。そしてこれを世界に広め飢餓から救う国際協力に貢献したいと考えるようになった。

<スペイン語を学び中南米でも働けるように準備>

その対象の一つが中南米である。すでに多くの日本人移民がブラジルの野菜や果物あるいはジュートなどについても、きめ細やかな栽培方法により農業生産力のアップに貢献していた。そういう意味では日本型農業には実績があるのだ。
そこで留学中に時間を割いてスペイン語を勉強した。ポルトガル語のブラジル以外はすべてスペイン語が公用語になっていたからである。

<食料安保担当で内閣の総合安保担当室に出向>

帰国して2年後の1980年、鈴木善幸内閣が発足した。岩手の漁村の網元に生まれ、漁民のために尽くせが家訓の鈴木首相は、当時のタカ派的傾向が著しくなったことを懸念し、安全保障は軍事力よりも平和外交、食料安全保障、エネルギー安全保障等総合力が必要だとして、総合安全保障関係閣僚会議担当室を設置した。私の健気な心掛けが天に通じたのか、同担当室に食料安全保障担当で出向することになり、ここで2年間食料と安全保障(平和)についてとくと勉強し、考える機会を得た。私の視点に安全保障が加わり、国会議員になってからも外務委員会に4年、安全保障委員会に1年所属し、外交・安全保障の問題を追いかけている。そうした中で何よりも追及し続けているのは、食料と平和(安全保障)のことであり、農政もここにすっぽり入り込むテーマなのだ。

<国際機関で働くために博士号も取得>

その後OECD代表部勤務(パリ1991~4年)の時に、またもう一つ国際協力に思いを馳せるきっかけが生じた。河野前外相が盛んに言い始めたが、日本は多くの拠出金払っている割には国際機関に人を出していない。なぜなら国際機関には博士号が採用の必須の要件だが、日本人で社会科学の分野の者はあまり博士がいないのも一因である。
そこで仕事で関わりのあるEUの農業交渉のノウハウをネタに博士論文にまとめ、京大農学部から農業経済で博士号も取得した。

<FAO勤務に備えるも人生は思うように行かず国会議員へ>

私の念頭に置いた行き先は、前述のとおり、日本型農業の伝道(?)であり、農業問題を広く扱うFAO(世界食糧農業機関)である。WFPもちらっと考えたが、下痢体質で180cm、60kgのきゃしゃな体は、紛争地域や衛生状態の悪いところで耐えられる自信がなく、WFPは対象からはずれていた。
ところが人生はうまくいかないもので、羽田孜首相等にさんざん勧められて衆議院議員になってしまった。国会では博士号など何の価値もなく、スペイン語など使う機会はほぼなし。青春時代の夢の計画はどこかにすっ飛んでしまった。しかし、私の頭の片隅には常に世界の食料生産に貢献し、世界から飢えをなくしたいという思いは今も続いている

<飢餓撲滅が平和に繋がると認めたWFPノーベル平和賞>

WFPのノーベル平和賞の受賞は遅すぎた。何故なら国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も国連児童基金(ユニセフ)も既にもらっている。私はいつかWFPにも順番が回ってくるだろうと確信していたが、それが今回実現して喜ばしい限りである。1961年に発足し、63年から活動開始し、世界80ヶ国以上での献身的活動が評価されたのである。
安倍内閣になり、日本ではますます軍事の安全保障だけが強調されてきた。そうした中、1980年に鈴木首相が食料安全保障も含む総合安保の必要性を強調してから40年の歳月を経た今、食料と平和のつながりが世界で認知されたのだ。

<紛争・戦争と飢餓の悪循環を断ち切る>

ノーベル賞委員会は、「「紛争と戦争は食料不足、飢餓を引き起こし、食糧不足と飢餓は戦争を起こし、暴力の仕様の引き金となる」と指摘し、その上で「食料の安全保障を高めることは世界の平和の可能性を高める」と説明している。食料が十分でないところに紛争が発生するということであり、紛争が食糧不足を招いているということでもある。
この今回のWFPのノーベル平和賞の受賞が、コロナ禍を機に食料そして農業にもっと目を向けるべきだと教えてくれたのである。世界には食料難にあっている約1億人の子どもたちがおり、今回コロナ禍の中満足な輸送もできなくなり、さらに多くの人たちが食糧難にあえいでいる。今年は過去最多の1億3800万人の食糧支援を行ったという。こういった現実は日本ではほとんど知られていない。

<健気なボランティア活動への評価>

今年の4月から6月の国際線の運行が92%も減少した中、WFPは今年5月から8月アフリカ中南米などに1,184便を独自に運行し、計338の支援組織のスタッフ、2万1,166人を輸送している。2019年には過去最高の約80億ドル(8,470億円)の資金を集め、世界の紛争地域に食料を届けまくった。ノーベル賞委員会はコロナ禍の中「医療的ワクチンを得る日まで、食べ物が混乱に対する最大のワクチン」だとも述べている。

<日本も飢餓を我が身と考え、世界の飢餓にも関心を>

ノーベル平和賞受賞の新聞記事に、今まで100人以上の人たちが紛争地域でテロの犠牲になっていると小さく書かれていた。死と隣り合わせで働いた人たちの犠牲のもとにいただいたノーベル平和賞である。日本の国会では、紛争地域に自衛隊を送った、送らないといった浮世離れした審議で時間を浪費していたが、WFPの人たちは、その間にもイエメン等とんでもなく危険な地域で汗を流している。日本も国際貢献するなら、もっと違った分野でできることがたくさんあるのだ。
ノーベル平和賞が誰でも知っている政治家だったらもっと大きく報じられただろう。ところが、地味なWFPの受賞については、どの新聞も一応は報じてはいるが、残念ながらたった一回で終わってしまい、掘り下げはほとんどない。
食料不足問題は決して日本にとって対岸の火事ではなく、マスク不足はいつ食糧不足になるかもしれないのだ。我々日本人も「飢え」を我が身と考えると同時に、世界には貧しくてまともに食べ物にありつけない多くの子供たちがいることに思いを馳せなければならない。

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