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【読書感想】認知バイアス 心に潜むふしぎな働き

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認知バイアス 心に潜むふしぎな働き (ブルーバックス)
作者:鈴木 宏昭
発売日: 2020/10/22
メディア: 新書

Kindle版もあります。

認知バイアス 心に潜むふしぎな働き (ブルーバックス)
作者:鈴木宏昭
発売日: 2020/10/21
メディア: Kindle版

「なぜあの時あれを見逃してしまったのか」「なぜこんなものを買ってしまったのか」「どうしてあんな簡単な問題が解けなかったのか」---誰しもが日常的に経験しているであろう、なぜか誤って認識したり、いつもならするはずのない判断や行動。それはなぜ起こるのか。このようなふつうの行動に現れる心の働きの偏り、歪みのようなものである「認知バイアス」について、わかりやすい事例を挙げて解説します。

認知バイアスという言葉は、一般的にも時々使われるようになってきて、なんだかよくわからないけど間違ってしまった、おかしなことをしてしまった、というときに認知バイアスという言葉で片付けようとする安易な解決も見られがちですが、著者は、「知」を身体、社会、感情、環境なども取り込んでトータルな人間の理解を深めようとする認知科学に基づき、理論的に分析しています。また、なぜ誤るのか、そして誤ることには意義があるのか、それは何なのかを解き明かします。

認知メカニズムは、ある状況では賢い判断をするように働き、ある状況では愚かな判断を生み出す。つまり人間は賢いようで愚かで、愚かなようで賢いものであるということがわかる1冊

 「認知バイアス」という言葉はけっこうよく耳にするのですが、どんなものか説明してほしい、と言われると「思い込みによる誤解や間違い……って感じかなあ……」という、頼りない答えしか僕には浮かんでこないのです。

 人の判断や行動はよく考えるとまったく合理的でないことがよくある。読者も「なぜあんな簡単なことに気づけなかったのか」「なぜ、こんなものを買ってしまったのか」「どうしてあの時同僚の愚かな意見に同意してしまったのだろうか」などの経験は数え切れないほどあるだろう。むろん私も例外ではない。後悔に苛まれながら毎日を送っている。また周りの人たちのおかしな、あるいは愚かな行動に出会うことも少なくない。

 通勤、通学のバスや電車でこんなことを感じることはないだろうか。「自分はいつもアンラッキーだ。反対方向のバス(電車)はよく来るのに、こちらはいつも待たされる」。あなたが野球ファンだとする。こんなことを思ったりしたことはないだろうか。「うちの四番は打率3割だけど、ここ数試合ヒットがない。今日はガツンとやってくれるだろう」。

上司から冷たい言葉を浴びせられたとする。すると、「あいつは超有名大出身のエリートだからな」と考えたりしないだろうか。日本経済の停滞を新聞で読んだとする。その時「日本の企業はイノベーションを起こせない、もうダメだ」と慨嘆したりしないだろうか。仮に自分はそうでなくても、このように感じたり考えたりする人を思い浮かべることは簡単なのではないだろうか。

 これらの背後には認知バイアスが働いている可能性が高い。

 こういう例を挙げられると、「認知バイアス」と無縁な人間なんているのだろうか?と思えてくるのです。
 この新書では、「認知バイアス」と呼ばれているものをいくつかのタイプに分けて、実際に行われた実験やデータも採り上げながら解説されています。

 人間の「記憶」の不確実性についての話。

 自動車事故の動画を見せて、その後にその自動車が時速何キロメートルくらいのスピードだったかを推定させる。この時、ある参加者には「自動車が『衝突』した時、時速何キロメートルくらいのスピードでしたか」と尋ねる。別の参加者には「自動車が『激突』した時、時速は何キロメートルくらいのスピードでしたか」と尋ねる。もちろんどちらの参加者も見たビデオは同じである。

しかし「激突」と聞かされたグループは、「衝突」グループに比べて15キロメートル程度その速度を多めに見積もってしまう。さらに「自動車の窓ガラスは割れましたか(実際には割れていない)」と聞くと、「激突」グループの1/3程度が割れたと答えてしまう(衝突グループは10パーセント強)。

 ここでは、後から来た情報と整合的になるように、記憶の書き換えが生じているのだ。時速30キロメートルと激突は整合的ではない、激突と車が無事も整合的ではない。そういうことから、記憶を書き換えられているのである。実は、実験参加者はこうしたことを意図してやっているわけではなく、ほぼ自動的にそうしたことが行われてしまう。そこが怖いところだ。
 ずいぶんと古い実験だが、有名なものを紹介したい。これは実際のテレビ番組を用いた、2000名以上の参加者からなる、かなりコストのかかる実験である。番組の中では、廊下を歩いている女性が突然現れた男性に突き飛ばされ、バッグから財布を盗まれる場面が13秒間放送される。その中の3.5秒間には犯人の顔がしっかりと映されている。

この放送の後、視聴者にはあなたたちが目撃者である、と告げられ、2分後に6人の被疑者が1から6の番号札を持って並んでいる写真が見せられる。そして一人ずつはっきりと映された後に、報告用の電話番号が伝えられ、自分が犯人だと思う人の番号を電話で伝えるように指示される。ちなみに6人の中に犯人はいないという選択肢もあり、これは0の数字で答えるようになっていた。

 これは7択の問題なので、ランダムに答えても14.3パーセントが正解する。さてどのくらいの人が正しく答えられたと思うだろうか。なんと正解したのは14.7パーセントに過ぎない。つまりでたらめに答えたのと変わりがないのである。また犯人は6人の中に存在したが、この中にはいないと答えた人(つまり0と報告した人)が1/4程度も存在した。

 これはどのように考えれば良いのだろうか。ふつう目撃者が存在して、その人がある人を犯人だと証言すればほぼ有罪は確定と考えてしまうだろう。しかしこの結果は、そうした私たちの常識を覆す。

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