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アナウンスメント効果狙いの日銀と市場への影響

日銀は31日の金融政策決定会合で、追加緩和策を決定した。まず資産買入等基金の規模を11兆円増額する。内訳は長期国債が5兆円(2013年6月末までに+2.5%、2013年12月末までにさらに+2.5兆円)、短期国債が5兆円(2013年6月末から12月末まで+5兆円)、リスク資産が1兆円程度となる。リスク資産はETFが5000億円(2013年12月末まで)、REITが100億円(同)、社債が3000億円(同)、コマーシャルペーパーが1000億円程度(同)。

これは長期国債と短期国債で10兆円、そこにリスク資産の増額も加わるとの事前に報じられていた予想とほぼ一致する。市場ではここに何がプラスアルファされるかが、ひとつの注目点となっていた。

そこで取られた手段のひとつが、貸し出し増加を支援する無制限の資金供給の枠組み創設であった。貸出支援基金と名付けられた資金供給の総額の上限は設定せずに「無制限」とし、貸付金利は貸付実行時の誘導目標金利(現在は0.1%)による長期固定金利で、貸付期間は最長4年までロールオーバー可能。

これは既存の成長基盤強化の資金供給の進化バージョンとみられ、それほど新鮮味のあるものではない。ただし「無制限」というところが注目ポイントになる。ECBやFRBの追加緩和でも「無制限」との表現が意識されており、日銀としても緩和策の中この言葉を組み入れたかったのではないかと思われる。

そして今回の追加緩和の大きなポイントとなりそうなのが、「デフレ脱却に向けた取組について」と題された政府と日銀の共同文書である。政府と日銀が一体となってデフレ脱却に向けて最大限の努力を行うとしているが、「一体」となってとの表現がアコードを意識させる。

ただし、このアコードというのは、本来の意味のアコードではない。1951年に米財務省とFRBとの間でのアコードにより、国債管理政策と金融政策が「分離」され、これによって低金利政策は廃止され、FRBは政府からの「独立性」を強めた。これが金融市場でアコードと呼ばれたものである。

今回の共同文書はアコードではないと白川総裁が会見で語ったようだが、たとえば日銀出身の民主党の大塚耕平議員は、マクロ経済運営で中央銀行当局と財政当局間で共通価値観、何らかのアコードはあり得ると述べており、米国流のアコードではなく、共通認識という意味合いでのアコードのようなものとなった。

今回の共同文書では、今後の物価動向について「デフレ脱却等経済状況検討会議」において定期的に報告するとの表現もある。政治家の一部からはイングランド銀行方式のインフレターゲットを求める声も出ていたが、そのイングランド銀行ではインフレ目標値から1ポイント以上乖離した際に総裁が、金融政策委員会の議長として財務相あて公開書簡を作成しなければならないとされている。

今回の日銀の金融政策については、経済対策を打ち出した政府からの意向が強く働いていたことが伺える。IMFのラガルド専務理事が「日銀はさらなる金融政策に踏み切る準備ができると確信している」と述べたことも影響していた可能性もある。それが結果として異例ともいえる2か月連続の追加緩和策となった。さらに無制限の資金供給(実際には限度はあるが)も加えた上、今後も政府の意向が強く反映される可能性のある共同文書まで出してきた。

これは日銀としても今年2月の物価の目途の設定と同様に、大きな政策変更であると言って良いのではなかろうか。すでにいろいろなところで今回の追加緩和の効果について論じられているが、実質的な効果よりも、今回は日銀がデフレ脱却という目的に向けてさらに一歩踏み出したことに注目すべきか。そこには財政ファイナンスが意識される懸念などの将来のリスクも存在するが、よりアナウンスメント効果も意識して日銀は踏み込んだ。

展望レポートでは、2014年のコアCPIの見通しが0.8%となった(消費税率引き上げの影響を除く)。実質的な物価目標の1%を設定した以上は、それに向けての政策を取らざるを得ない。それには日銀が単独でできるものではないことで、政府との共同文章の発表という格好になったともみられる。

今年2月の日銀による物価の目途の発表で、為替市場は円安で反応した。円安株高がデフレ脱却の道ではないものの、日銀の政策変更によるアナウンスメント効果により円安とそれによる株安修正の動きが強まれば、市場のマインドも好転しよう。これが中央銀行としての適切な金融政策かどうかは判断も分かれるかもしれないが、個人的には特に為替や株式市場に対して、それなりの効果は見込めるのではないかと思う。

ただし、日銀が危険に領域に踏み出しつつあるところに、今後の注意が必要であるのも確かであろう。その意味では債券相場については緩和効果そのものよりも、円安株高の動きや、将来の物価上昇、日銀の財政ファイナンスへのリスク等を意識すると、特により期間の長い債券には買い要因とはならなくなるものと予想される。

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