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《警視庁が容疑者逮捕》「オイこらっ!」ヤクザ100人が街中で殴る蹴る【新宿スカウト狩り】発端は美人女性をめぐる”掟破り” - 尾島 正洋

 新宿・歌舞伎町で6月、「夜の店」に女性を紹介するスカウトの男たちが、暴力団関係者とみられる集団に追いかけられ、殴る蹴るの暴力が繰り広げられた“スカウト狩り”事件。

 この事件について、警視庁は10月28日、暴力行為等処罰法違反や傷害などの容疑で、指定暴力団住吉会系組員4人と、スカウトグループの3人を逮捕した。

【画像】関係者の間で流出した歌舞伎町の「スカウト狩り」とみられる動画の一部

 この事件が発生した当時、“スカウト狩り”の詳細を報じた「文春オンライン」の記事を再公開する。(初出:2020年7月5日)

◆◆◆

「おい!こらっ!」「この野郎!」

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「東京アラート」が発令中だった6月上旬の深夜、国内最大の繁華街である新宿・歌舞伎町で怒号が飛び交った。

 その乱闘の様子を捉えた動画が流出し、話題となった「スカウト狩り」だ。キャバクラをはじめとした「夜の店」に女性を紹介するスカウトの男たちが、暴力団関係者とみられる集団に追いかけられる姿が、動画には写っていた。

 事態を重く見た警視庁は、すでに新宿署に捜査本部を設置した。捜査の展開次第では、次の局面を迎えることにもなりそうだ。


「スカウト狩り」は繁華街のど真ん中で起きた(写真はイメージ) ©︎iStock.com

怒号飛び交う深夜の歌舞伎町

 この騒動が起きたのは、多くの飲食店が軒を並べる歌舞伎町の「区役所通」。スカウトを見つけた暴力団関係者とみられる男たちが殴る蹴るの暴力を繰り広げた。現場では怒号が響き、スカウトを追いかけ回し取り囲む男たちは次第に増え続け、100人ほどに膨れ上がった。

 こうした騒動は区役所通だけでなく、6月上旬以降も歌舞伎町の各所で発生している。暴力団関係者の男たちが十数人で歌舞伎町を練り歩き、スカウトを見つけては取り囲んで暴力を加えた。

 暴力団関係者が問題にしているのは、歌舞伎町でも最大規模のスカウト会社Aだ。A社は、歌舞伎町で10年以上にわたりキャバクラやガールズバー、クラブなど、接待を伴ういわゆる「夜の街」の飲食店に若い女性を紹介し、巨額の利益を得てきた。

 飲食店だけでなく紹介先には風俗店もあり、A社には数百人のスカウトが所属し、歌舞伎町で若い女性に声をかけ続けていたという。

 歌舞伎町の飲食店業界に詳しい関係者の男性が、最近のスカウト事情について明かす。

「歌舞伎町には夜の街で稼ごうとする若い女性が、首都圏だけでなく地方などから多くやってくる。それをスカウトが待ち構えて声をかけてキャバクラなどに紹介する。銀座の高級クラブのホステスではないので、知性や教養が備わっているかどうかなんて関係ない。要するに美人だったらそれでよし。客はたくさん付いてくれる」

 これまでスカウトは、かなり旨みのある商売だったようだ。

「キャバクラ店とスカウト会社の間の取り決めによって違いはあるが、紹介した女の子が働いている限り、その子が稼いだ売り上げのうち、ある店では3%、別の店では5%などと個別の取り決めで紹介料がスカウト会社に自動的に入ることになっている。これは『スカウトバック』というシステム。かなりの儲けになるいい商売だ。 

 キャバクラの料金は通常1時間で1万円とか1万5000円とかが相場。2万円以上という店もある。このほかにウイスキーのボトルを入れるとなると当然、別料金となる。中には1本で100万円というシャンパンを置いている店もある。

 女の子たちの稼ぎはピンキリだが、月の売り上げが500万~600万円というかなり稼げる女の子もいる。このような女の子が結構な数いるから、スカウトバックのシステムによる利益は莫大になる」

 夜の街の仕組みを一通り説明し終えると、関係者の男性は「要するに、女はカネになるということだ」と締めくくった。

コロナ禍で夜の街に変化が

 賑わいが絶えず不夜城とも称された歌舞伎町だが、コロナ禍による営業自粛要請には抗し切れなかった。

 客足が遠のき、看板を消灯し入り口ドアにカギをかけて、常連客の予約を取りつけてこっそりと「闇営業」で稼いでいた店があったほか、キャバクラ店の人気女性を常連客の求めに応じて居酒屋などに派遣して料金を取る「ギャラ飲み」なども行われていた。

 ジリ貧状態のなか、客を呼び込むには稼げる若く美人の女性をさらにスカウトすることが重要視されるようになり、より腕の良いスカウトを囲い込むことが業界の最大テーマになったという。

 新宿の暴力団業界に詳しい関係者が実態を明かす。

「キャバクラが闇営業をしていることが知れ渡ると、売れっ子のかわいい女の子がいる店には、客がこっそりとやってくる。平常時以上にかわいい女の子をいかにスカウトするかで、スカウト会社の売り上げに響くようになった」

 このような状況で、歌舞伎町で手広く仕事をしている前出の最大規模のスカウト会社Aが“掟破り”の行為に乗り出したのだという。関係者が続ける。

「A社が同業他社の優秀なスカウトの引き抜きを始めた。これは業界では許されることではない。すぐに問題になった。A社のトップは双子の兄弟で、身長は190センチぐらいのマッチョタイプのコワモテ風。少々強引で、スカウト引き抜きも1度や2度でなく次々と起きて後を絶たなかった。引き抜かれたスカウト会社とすぐにトラブルとなり、もめ事が起きた」

 トラブル解決へ向けて関係者が集まり話し合いが持たれたが、折り合いがつくことはなかった。解決に向かうどころか、話し合いが決裂したことで問題は肥大化。波紋を広げる一方、トラブルをめぐる関係者も増加していったという。

 そして、この揉め事の調整役として解決に乗り出したのが、それぞれのスカウト会社とつながりのある暴力団関係者たちだった。しかし、トラブルの中心に登場するようになった暴力団関係者に、スカウト会社は強い抵抗を示し、火に油を注ぐことになる。

 その結果、暴力団関係者の男たちが歌舞伎町の街中を練り歩き、トラブルの発端となったA社所属のスカウトを発見すると、数十人で取り囲み暴力を振るう事態となった。

 前出の飲食業界に詳しい関係者がつぶやく。

「このスカウト会社は歌舞伎町で10年以上とキャリアが長く、多くのキャバクラ店からも信頼が厚かった。なぜこのようなことになってしまったのか」

 A社とは全く無関係のスカウトたちにも被害が及ぶケースが多くあり、スカウト業の男たちは震え上がっている。

組対4課と新宿署が捜査本部を設置

 歌舞伎町に吹き荒れる暴力に対して、警察当局は事態を懸念しすでに捜査を始めている。

 冒頭でも触れたとおり、警視庁組織犯罪対策4課と新宿署は暴行や傷害事件として、捜査本部を新宿署に設置。すでに防犯カメラなどで撮影された歌舞伎町各地の暴行現場の画像を収集、分析し暴力行為に及んでいた人物たちを特定し、実態解明を進めている。

 デジタル・フォレンジック(鑑識)に詳しい警察庁幹部が解説する。

「防犯カメラの画像は、夜間で街灯などの照明が暗い場合や、登場人物が多く、動きが激しい場合には乱れがあるが、画像を鮮明化するソフトを使うと、人物の動きや顔を識別できるようになる。そればかりでなく、表情までしっかりと認識できることもある」

 これまで、歌舞伎町では長年にわたり事件やトラブルが絶えず、業を煮やした当時の石原慎太郎知事が防犯カメラの設置を進めた経緯がある。

 前出の幹部は「歌舞伎町については、ほぼ全域にわたって防犯カメラ網が張り巡らされており不審な動きがあれば把握できるはず」と指摘している。警視庁はスカウトに対して殴るなど、直接的な暴力を加えた実行行為者を中心に捜査しているものとみられる。

 歌舞伎町では、新型コロナの感染拡大に歯止めがかからない状態だが、「スカウト狩り」は警視庁の本格捜査によって、大きく事態が進展しそうだ。

(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))

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