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米中大激突で日本が独り勝ちする方法がある

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米中対立が激化する中、日本はアメリカにつくべきか、あるいは中国につくべきかという二者択一の議論が目立つ。しかし、日本には第三の道がまだ残されている。新総理、いま日本は漁夫の利を得る千載一遇のチャンスです!

米中大激突!菅JAPANのとるべき進路

【渡瀬】米大統領選は一進一退の様相です。当初は、今回は追われる立場のトランプ陣営が苦しい状況でした。前回の大統領選は資金も組織もないトランプが、段階が進むにつれて保守派の人たちが支持に参加し、ヒラリーがあまりにも嫌われているので勝てましたが、今回はめちゃくちゃ資金を持っているトランプが劣勢に置かれていた。

かと言って、バイデンも積極的に支持されているわけではなく、「トランプだけは勘弁だ」と言う人たちがバイデン支持と言っているだけなんです。バイデンは人気がなく、献金も集まらない状況でした。しかし正式な大統領選候補になって、バイデンの資金がトランプを上回るようになってきた。体制が整ってきたために、一時バイデンがトランプを上回る支持率になりました。

【中川】前回は、ヒラリーが嫌われすぎてトランプが勝った。バイデンはヒラリーほど嫌われていない、と。

トランプ大統領の支持率の推移

バイデンは可もなく不可もなく

【渡瀬】米大統領選はつまるところ、「どちらが嫌われているか競争」。トランプの嫌われ方からすると、バイデンは可もなく不可もなくという評価です。

しかも若干、ボケの入ってきているバイデンに対し、彼の陣営はコロナ禍の影響を理由にバンカー戦略、つまり外に出さないで家から発信させる方針をとっています。これによって、バイデンの失言が少なくて済んでいる。

一方トランプは出ずっぱりですから、話せば話すほどバイデンが票を稼いでいる(笑)。ただしトランプも民主党支持層を動かして、ミネソタ州の民主党市長6人がトランプ支持を表明しました。これによりトランプが一気に巻き返す可能性が出てきています。

【中川】対中政策に関しては、「バイデンになると対中対決姿勢が弱まる」という指摘もあります。

パシフィック・アライアンス総研所長 渡瀬裕哉氏
パシフィック・アライアンス総研所長 渡瀬裕哉氏

【渡瀬】基本的にはアメリカ政府の方針は米軍の対中抑止政策に表れています。その原則はどちらが政権をとっても変わりません。米軍の対中方針は、中国の軍事拡張を抑止しつつ、米国の経済力を高めて米軍の強化に転嫁し、ハイテク分野でも中国の追随を許さないよう、徹底的に制裁して、というものであり、誰が大統領になっても変わらない。その軍を動かすために民意が必要だというだけのことです。

ただし、やり方は違っていて、共和党は軍事費も増やして自前でやるので、外交でも表立って中国と対立する真っ向勝負。特にトランプはそういう手法をとっています。一方、民主党は軍事費を減らす傾向にあり、自由民主主義の尊重、などとかっこいいことは言うけれど、対応能力がない。だから人権問題を盾にするなどして水面下で仕掛けるしかない。

【中川】表立ってわかりやすく中国を叩いてくれるトランプは、中国にとっては相手にしやすい。中国は「等価報復の原則」を貫いています。これは、相手が何かやってきたら、同等のことをやり返すということ。アメリカ国内で中国人をスパイ容疑で1人拘束すれば、中国も1人拘束する。同じようにやり返せばいいだけですし、真っ向勝負で来てくれれば、やり返したことを国民にも伝えやすい。それを民主党のように水面下でじわじわやられると、中国としては煩わしいですね。

【渡瀬】バイデンが発表している対中政策方針には「就任1年目に民主主義国だけを集めたサミットを開催する」と書かれています。要するに中国やロシアを呼びたくない。民主党は共和党以上にロシアが嫌いですから。さらには民主主義を促進するための市民団体なども参加させると言っていますから、香港も入る。

【中川】こうした国際的な枠組みをつくられてしまうと、中国はかなりしんどい。等価報復をやると言っても、北朝鮮やロシアを集めてサミットをやるわけにいかないですからね(笑)。

【渡瀬】バイデンは一応世界に通用する自由主義と民主主義を大義名分として掲げられますが、トランプはそういうことは言わない。内政と経済だけにしか関心がなくて、「香港の人権」と言われても、議会に言われたから承認しただけで、本人はまったく興味がない(笑)。そういう意味では、トランプのマインドは実に中国的です。

誰も知らない米中対立激化の真相

【渡瀬】一方で今回はかなり雰囲気が変わってきています。ワシントンD.C.でも中国人が出入りするのは結構難しくなってきていて、中国人というだけで警戒される雰囲気があります。

戦略科学者 中川コージ氏
戦略科学者 中川コージ氏

【中川】とはいえ、昨今の米中関係を「新冷戦」と呼ぶのはどうもしっくりこないんです。中国側はアメリカを今は敵視していない。超えるべき相手だとは思っているけれど、ガチンコで戦争して負かす、なんてことは考えていない。建国100年を迎える45年までにアメリカを凌駕しよう、血を流さずに勝とうというのが中国の戦略。「戦いません、勝つまでは」が中国の一貫した方針です。

現状は「新冷戦」と言うよりも、いわば「米中新混沌」と言うべきで、その中で日本がどう生きるかが大事なのではないでしょうか。新冷戦と言うなら欧州も完全にアメリカ側について初めて成り立つものであって、今はまだ不完全で混沌としている。それなのに日本が「冷戦期のように、どっちにつくかの踏み絵を迫られている」ととらえてしまうと、間違えるんじゃないかと思います。

【渡瀬】そうですね。少なくとも「どちらか一方としか付き合えない」というような思い込みは間違いです。勘違いした識者が「米中新冷戦だ、デカップリングだ」と言っています。要はアメリカと中国が完全に分断されて、2つの経済圏ができるという見通しなんですが、アメリカの公式文書にそんなものが出てきたことは1度もないんですよ。むしろ、「デカップリングはしない」とアメリカは言い続けているんです。

アメリカがやろうとしているのは、ハイテク分野に関しては制裁をします、技術を盗むのをやめてください、強力な軍事力を持たれると困ります、人権も大事にしてください、と言いながら、「それでも通商貿易はやめません」ということなんです。デカップリングどころか、むしろ、「もっと金儲けさせろ、門戸開放しろ」と20世紀初頭と同じことを言っている(笑)。

【中川】そういうアメリカの状況を含めて考えると、日本の言論だけが突出して「どっちにつくんだ」という議論になるのは危ない。当然、日米安保があるからアメリカ側だという意見が多いのですが、アメリカ自身が中国と完全に断絶する気がさらさらないのに、日本では「断交だ」「中国と貿易するな、取引するな」という声があるのは非常に気がかりです。

「やられた分だけやり返す」。これが中国のメンツ外交の基本だ。写真左は、華春報道官。
「やられた分だけやり返す」。これが中国のメンツ外交の基本だ。写真左は、華春報道官。 - 写真=AFLO

中国からの報復措置も脅威ですが、国内からの「中国と関係を持っている企業に対してボイコットしよう」というような動き……例えばユニクロやトヨタに対して「中国市場から手を引け」というような言論はいかがなものかと。それって長期的にも短期的にも、単にわが国の企業を貶めているだけです。

【渡瀬】アメリカ人は馬鹿じゃないので、中国に巨大な市場があることは十分理解している。その利益を安全に取らせろというだけの話です。アメリカの人たちは非常にドライですから。日本みたいに「中国と断交だ」なんて本気で言っている人はまったくいない。

尖閣問題をめぐる議論

【中川】日本は非常に危ない傾向ですね。尖閣問題をめぐる議論がまさにそうで、2020年6月に茂木敏充外相が「中国は尖閣周辺で1つずつステップを踏んで現状を変更し、新たな既成事実を作る『サラミ・スライス戦略』に出ている」などと発言しました。これはかなり問題です。

尖閣だけを見てしまうと、確かに中国がじわじわと、サラミを薄くスライスするように尖閣を取りにきているように見えてしまうのですが、実際には中国は「戦いません、勝つまでは」戦略をとっている。今、尖閣という無人島を巡って事が起きると一番損をするのは中国自身です。だから本気で取りにきているわけではない。中国の狙いは、中国の動きに対して日米がどんな反応をするかという情報です。

もっと大きな版図で見れば、米中対立の中で日本はどう出るのかを知るために情報収集をしているにすぎないことがわかる。「サラミ・スライス戦略」とかいうとバズワードっぽく聞こえてしまうので使いたがる人も多いのですが、それによって概念が縛られることの弊害も踏まえておかないといけない。

中国は資源パーティショニング戦略と言って、アメリカが退いたところに出ていくという戦略をとっています。トランプがWHOから脱退すると言えば、中国の華春瑩報道官が「われわれはアフリカのために補助金を出す」と即座に返す。

尖閣はこれには今のところ当てはまらない。こうした中国側の論理を理解せずに「尖閣を取りにきている!」「日本が狙われている!」と言いすぎると事態を見誤ります。本当に中国が尖閣を取るという動きを見せれば、日本はもちろんアメリカも動く。そんな状態を中国はさらさら望んでいません。

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