- 2020年10月29日 09:18 (配信日時 10月28日 19:15)
女子アナがいまだに「有力者との接待」に利用される本当の理由
1/2民放キー局の女子アナが大手外資系企業幹部との食事会に応じていたと写真週刊誌が報じた。こうした会食接待はなぜなくならないのか。元テレビ朝日プロデューサー鎮目博道氏は「テレビ業界が相変わらずの男社会であることが原因だが、それに加えて『会社員であって会社員ではない』というアナウンサーの特殊な事情も関係しているだろう」という――。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu
「女性であることを武器に」という発想の古さ
民放キー局の女子アナが、大手外資系企業幹部と食事会をしていたと、写真週刊誌「フライデー」(10月16日号)に報じられた。「まだ女子アナはホステスみたいなことをしているのか」と話題になっているようだが、なぜこうしたことがいまだに起きるのか。編集部から解説を依頼され、私の胸には二つの異なる思いが浮かび、複雑な気分になった。
ひとつの感情は、美しくて知名度のある女性を、あたかも切り札のように使って商売をしようとする放送局の男性幹部たちの発想が、今も全く変わっていないことに対する「怒り」とか「呆れ」である。
一昨年、テレビ朝日の女性記者に対する財務省事務次官によるセクハラ事件が明るみに出て、大きな社会問題となった。多くの女性記者たちが声を上げたが、いまだにその程度の認識でビジネスを行っているのであれば呆れてものが言えない。まさに「やれやれ」である。
確かに今でも他の媒体の記者などから、「テレビ局はやっぱり若くて美人の女性記者さんが多いですもんね」といった話を聞くことも多い。それが報道志望の女性たちをどんどん現場に登用していった結果であればなんの異存もない。
しかし、「若い女性記者が相手なら、男性政治家や捜査関係者も簡単に口を開くだろう」「女性であることを武器にネタを取ってこい」といった発想で続いているとすれば、やはり何も変わっていないのだなと暗い気持ちになる。
「相変わらずの男社会」女子アナが直面する事情
テレビというメディアは、広告的に考えれば、女性をメインターゲットとしている。女性向けのコンテンツがどちらかといえば望まれているのに、いまだに民放各局の幹部に女性は少なく、女性社長に至ってはほぼ皆無に等しい。この現状が物語るように、テレビ業界は相変わらず「男社会」なのだろう。
だから「大事な商談は女子アナを同席させれば、相手方のお偉いさんが喜ぶから有利に進む」という発想で、今夜も当然のように女子アナたちはホステスの如く重要な飲み会の席に同行させられることになるのだ。
しかし、私の胸にはもうひとつ、異なる思いも浮かんだ。
それは、「女子アナが現在のあり方であり続ける限り、飲み会の席に同行させられるというより、むしろ喜々として自発的に飲み会の座に行っている場合も多いのだろうな」ということである。
「なぜ女子アナがあたかもホステスのように飲み会に連れ出されるのがなくならないか」という問題の背景には、2つの理由がある。ひとつはこれまでも述べたように「美しくて知名度のある女子アナを切り札の如く使うおっさんの存在」だ。
そして、もうひとつの理由は「そうしたおっさんからの誘いをむしろ喜んで受ける女子アナたち自身のメンタリティ」があるのではないかということである。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu
喜んで飲み会に参加する女子アナの動機
女子アナは「会社員であって会社員ではない」とでもいうべき複雑な立場に置かれている。彼女たちは放送局の局員であるという意味では会社員に間違いはない。
しかし、同僚であるプロデューサーなどの制作系の局員からお声がかからないと基本的に仕事を得ることができない。その意味では多分にタレント的で、局内で営業活動的なものを行わざるを得ない側面からすれば「会社員であって会社員ではない」ような感じでもある。
あたかも個人事業主であるタレントのように「自分の仕事は自分でゲットする」ことが求められている部分があるからだ。
そうした意味では、自分に仕事をくれる可能性がある「局内の有力者」の申し出は断りにくい。局内有力者とは友好な関係を維持しなければ「発注」が来ないのだ。
まして欧米などと違い、日本の女子アナは「30歳を過ぎると極端に仕事が減る」と当事者たちが語るように、いまだに実力本位というよりも「若くてキレイな女性」としての役回りを求められている面がある。
本来そこが非常に問題なのだが、発注先である局内有力者からの「会席へのお呼び」に積極的に応じないと、たとえ人気絶大な女子アナであっても若い後輩女性アナウンサーたちにいつその座を取って代わられるかもしれない危険性が常にあるわけだ。
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