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「相方がネタを書かないの、どう思ってる?」オードリーのトークが今、抜群におもしろい理由 『あちこちオードリー』がスゴい - 三宅 香帆

 たまに、不思議だと思う。テレビのトーク番組で、「どんな女の人がタイプなんですか?」「恋愛するとどんな感じ?」など、芸能人がプライベートについて聞かれているのを見ると、ちょっと違和感を覚える時があるのだ。 

【画像】オードリー・春日の鍛え上げられた上半身

 その人が楽しそうに答えていたらいいのだけど、実際、私たちがよくテレビで見る芸能人なんてよっぽど忙しくて仕事ばっかりしているだろうに、なんでそんなにプライベートのこと聞くんだろうか……? と。 

 もちろん芸能人のファンには、プライベートの話題のほうが喜ばれるから……という需要の問題なのかもしれない。でも同時に、その人が熱心に語れそうな、仕事の話をもっと聞いてもいいのになあ、と思ったりもする。 

 テレビ東京で放送している『あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~』(火曜深夜1時35分。以下「あちこちオードリー」と略す)という番組が、今、話題を呼んでいる。毎回3人ほどの芸人・タレントを迎え、オードリーのふたりがホストとなって、いままでの仕事や人生についてあれこれ聞いていくトーク番組だ。

「あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~」HPより

『アメトーーク!』組で面白いバラエティとして紹介されていたこともあり、 2020年10月28日には、番組開始1周年を記念して初の有料オンラインライブが開催される。

テレビを見ない友人らが「在宅勤務の間に見る」理由

 本編では「事前に打ち合わせもアンケートもないので好きなことを喋ってよい」とされ、「ラジオのような番組」と呼ばれるほど、ゲストとオードリーのざっくばらんな会話を見られることが特徴だ。 

 私の周囲では、なぜか「普段あんまりテレビ見ないけど、『あちこちオードリー』は在宅勤務の合間になんとなく見てる」という人が数人いる。私もまたバラエティには詳しくないし、『あちこちオードリー』に登場するゲストの方を全員知ってるわけでもないのだけど、面白く見てしまうのだ。 

 なぜ、よく知らない芸能人の裏話でも、なんとなく見てみると、面白いのか? それは、『あちこちオードリー』が、数多の芸能人たちの「仕事のやりかた」に注目しているからではないだろうか。   

これまでのトーク番組の構成と違うのは?

 たとえば『徹子の部屋』や『A-Studio』のような、ホストがゲストの芸能人について掘り下げ、インタビューしていくトーク番組はこれまでもあった。『徹子の部屋』では、ホストの黒柳徹子さんがゲストの家族や生い立ち、デビューのきっかけなどについて質問していくさまが番組になっている。

 バラエティの中でもトーク番組というものは、ふだん知ることのできない芸能人のプライベートや、仕事の話といっても経歴を中心に掘り下げるのが、一般的だったのかもしれない。 

 しかし『あちこちオードリー』は、ゲストのプライベートや経歴よりも、どちらかというと、彼らの「仕事のやりかた」に重きを置いて話題を展開する。

 トーク番組だけど、オードリーとゲストの芸人やタレントが語るのは、いわゆる、ぶっちゃけた仕事論。――そこが今までのトーク番組と一線を画するところで、また、見ていて新鮮に面白いな、なんだかもっと聞きたいな、と感じる理由になっている。 

略歴でもプライベートでもない、「舞台の裏側」の感情が聞ける

 雑誌のインタビューで、俳優が演劇論を語ったり、芸人が漫才論を語ったりすることはあるけれども、「どうやってバラエティ番組でいまの人気を獲得したのか」「狙って今のポジションに就いたのか、それともなりゆきだったのか」「これからやっていきたいことはあるのか」など、バラエティで活躍する芸能人の戦略や野心といった「舞台裏の設計」を視聴者が聞くことはあまり、ない。 

 しかも、オードリーという芸能界で長く活躍しているコンビが興味をもって話を投げかけるからこそ、芸人やタレントが、舞台の裏でどうやって自分を設計してきたのか、という話を聞けたりもする。

 たとえば「ぶっちゃけ、コンビで売れたけど片方はネタを書いていないことに対してどう思っているのか」「バラエティの収録が終わった後、一人で反省会をして苦しくなるタイプなの?」「今でさえこんなに忙しいのに、40歳になってもまだ自分たちは頑張らなきゃいけないんですか……」といった、舞台上の略歴でも舞台にいない時の話でもない、舞台の裏側の感情を聞くことができるのだ。 

 もちろん仕事の話だけでなく、ゲストのプライベートについて掘り下げることもある。だけどそれもまた、オードリーの興味に沿って聞いているから、なんだか無理がなくて見ていて心地がいいな、と感じたりもする。 

異業種の友達の苦労話を聞く気分

 もちろん芸能人のプライベートの話を聞くことを否定したいわけではないけれど、同時に、『あちこちオードリー』のように、おそらく仕事熱心な若林正恭さんと春日俊彰さんが、「アンケートをどれくらい熱心に書くか」「ものすごくあこがれている先輩の仕事でどうやって緊張をいなすか」「自分のキャラ設定をどういうふうに作ったらこの先もやっていけるのか」といった質問に答えたり質問し返したりするのを見ると、ああやっぱり仕事の話ってみんな熱心だから面白いなあ、と思えたりする。

 ふだんテレビを熱心に見ていない人間ですら、異業種の友達の苦労話を居酒屋で聞いた気分になる。 

 密着取材ほど意識の高い状態でもなく、従来のトーク番組ほどプライベートに偏らず。『あちこちオードリー』は、仕事の苦労話をわいわいしているのを見ることができるからこそ、そこに出ている芸人さんやタレントのことを、より好きになることができる。 

 プライベートのことを発信しようと思えば、SNSでもブログでもYouTubeでもいくらでも自分で発信できる時代だ。だからこそ、仕事のことでも、趣味のことでも、なんでもいい、その人が熱心に語れることを、知りたい、と思ってしまう。

『あちこちオードリー』を見ると、その人が人間として面白い、「こういう人だったんだ~」と笑えてしまう面が切り取られている。だからこそ、来週も見よう、と思ってしまう人が多いのだと思う。 

(三宅 香帆)

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