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コロナで路上に出たロスジェネへの、あまりにも意地悪な対応。生活保護を巡る、杉並区・謎のローカルルール。の巻 - 雨宮処凛

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「やっとだね!」
「本当によかった!」
「でも、長かった……」

 10月22日午後4時、私たちは杉並区・高円寺の福祉事務所でそう言い合った。この日、ここに揃ったのは立憲民主、共産党、無所属などの超党派の杉並区議が5人。応援のために駆けつけた他の地区の区議、市議、そして生活困窮者支援をする人々、約20人。当事者が2人。

新型コロナ災害緊急アクション」からは瀬戸大作氏、稲葉剛氏、そして私が参加した。メディアの取材も数社入っている。

 この日行われたのは、新型コロナ災害緊急アクションによる、杉並区への申し入れ。その内容は、一言で言うと「アパート転宅させてほしい」というものだ。


杉並区との話し合い

 新型コロナ災害緊急アクションでは、4月以来、コロナで失業した人々の支援をしていることはこの連載でも書いている通りだが、生活保護申請にも同行している。

 私も同行しているのだが、例えば第518回で書いたAさんの場合、コロナで日雇いの仕事がなくなり、それまで寝泊まりしていたネットカフェも閉鎖して所持金13円となり、支援団体に連絡をくれた。

 そうして4月13日、私が生活保護申請に同行したわけだが、5月6日にはアパートに移っている。その間は、都が用意したビジネスホテルに泊まっていた。ゴールデンウィークを挟んでいたのに、3週間ほどでアパート生活を始められたのだ。

 その後、Aさんは生活保護を受けながら働いている。コロナで仕事はまだまだ十分にはないが、この調子でいけば、生活保護を廃止できる日も近いと思う。

 さて、これが特別なケースかと言えばそうではない。コロナ禍の中、厚労省は生活保護に関して、迅速に保護を始めるように通知を出している。

 また、住まいがない状態で生活保護申請をすると、無料低額宿泊所などの相部屋、大部屋の施設に入れられることもあるのだが、厚労省はコロナ禍を受け、原則個室に案内するよう通知を出している。

 このようなこともあって、コロナ以降、住まいがない状態で申請した人々は比較的すみやかにアパート生活に移行しているのだが、なぜか杉並区はいろいろと難癖をつけてアパートに移行させないのだ。しかも現時点で何人かがアパート移行を阻まれている。

 10月13日、そのうちの一人・Bさん(41歳男性)の面談に同席した。Bさんとはその少し前にも会っていて、杉並区がなかなかアパート転宅を認めてくれないことを聞いていた。しかし、どこかで半信半疑の自分がいた。

 今はどこの区でもアパート転宅してるんだから大丈夫だろう、しかもBさんは若いし、就労意欲も非常に高い。

 一方で、気になることもあった。それは所持金がほぼない状態で生活保護申請をしたBさんに、杉並区は2週間で5000円の一時金しか出さないと言ったこと。他の区であれば一日あたり2000円ほど出されるが、この場合、一日あたり360円ほどだ。

 このことについて難色を示すと、相談員は「こう言っちゃなんですけど、Bさん、路上生活してますよね?」と言ったという。これは完全に差別だ。

 さて、ここでBさんが杉並区の福祉事務所に至るまでの経緯を書きたい。

 41歳、ロスジェネのBさんはこれまで製造派遣や警備の仕事をしてきた。勤務先は全国各地。多かったのは「寮付き・日払い」の仕事。コロナが流行り始めた頃はやはり寮付き・日払いの警備会社で働いていた。しかし、コロナの影響で仕事がなくなる。建築や工事の現場が止まったことが原因だった。

 寮を出たのは、特別定額給付金の10万円が出た6月末頃。貯金と合わせて20万円はあったのでシェアハウスに入ろうと思い、ちょうどいいシェアハウスが見つかった頃、駅ビルのトイレに全財産が入った財布を置き忘れてしまう。

 慌てて戻ったものの、お札はすべて抜かれており、交番に駆け込んだが「お札だけ抜かれたらなんにもできない」と言われてしまう。

 そこから一ヶ月ほど、都内の公園でやむを得ず野宿した。そのうちに季節は夏になりどんどん暑くなる。日中はエアコンが効いているパチンコ屋の休憩室で過ごし、一週間500円ほどで生活したという。

 銀行にある数千円が最後のお金だったので、それで数本入りのパンを買って3日持たせたり、水は公園で飲んだり。そんな中で見つけたのが、仕事の紹介をしてくれるNPO。そこで宮城県に派遣の仕事があると知る。しかし、すぐにでも働きたいのに面接は5日後。

 ちょうどお盆明けの頃だった。この頃、Bさんは「新型コロナ災害緊急アクション」と一度目の接触をしていた。仕事を紹介してくれたNPOに支援団体の情報を教えてもらったのだ。連絡を受けた「新型コロナ災害緊急アクション」の瀬戸大作さんは、その日のうちにBさんのもとに駆けつけた。

 瀬戸さんはこの時、住まいも所持金も乏しいBさんに対して生活保護という手もあることを伝えたという。が、「自分でなんとかしないといけない」という思いがあったBさんは宮城に。交通費は会社が出してくれた。

 そうして宮城のある市について寮に入ったが、そのまま2日待機となった。この時点で、所持金は尽きていた。3日目、やっと仕事に入れることに。一日働けば、とりあえず仕事の後に2000円もらえると聞いていた。そうして朝、マイクロバスに乗る前に検温。この時点で36.6度だった。

 しかし、バスが工場に着いて検温したところ、37.1度。37度以上だと仕事に入れず48時間待機と言い渡されてしまう。48時間経過後、体温を測って熱がなければ働けるという説明。しかし、この時点で所持金ゼロ。これでは生活できない。

 そのことを派遣会社に訴えるも、「3日後に確実に働けるかわからない人を寮にいさせるわけにはいかない」と出されてしまった。

 こうしてBさんは、縁もゆかりもなく、知り合いもいない宮城で住まいを失ってしまう。お金がないのでここから動くこともできない。交通費がないので東京にも戻れない。近隣で仕事を探してもコロナの中、見つからない。

 仕方なく役所に行くと、「自立支援センター」のようなところを紹介すると言われたが、「東京から来て3日で、熱が37度以上ある人とは会えません」と施設の人に言われてしまう。

 そこで役所はPCR検査を進めてきた。が、検査はタダだが診断書にお金がかかるということで、生活保護の利用を進められた。

 生活保護を利用することにして、検査。結果は陰性。その日のうちに市営住宅に入ることができた。が、8月後半でまだ気温は34度あったというのに、部屋にはエアコンがなかった。また、役所の説明では、この市営住宅にいられるのは2週間で、「寮付きの仕事を探して出ていくしかないですね」とのこと。

 このような説明は非常に雑で当事者を不安にさせるものだと思うが(別に市営住宅にいられる期間が法的に区切られているわけではないし、寮付きの仕事を探せと指示をする権利は役所にはない)、「素人が言葉では勝てないし、他に泣きつくとこもないから」、それから5日間、必死で仕事を探したという。

 猛暑の中、30分歩いて毎日ハローワークに行き、帰ってからもネットで調べ、保護費が少しまとまって出てからは、勤務先を東北6県に広げ、製造派遣だけでなくリゾートバイトも探した。

 しかし、コロナの影響でいくら探しても仕事はない。これからの不安がどんどん大きくなり、一睡もできない日もあったという。

 そんな時、思い出したのが「新型コロナ災害緊急アクション」の瀬戸さんだった。メールすると、瀬戸さんは知り合いもなくコロナで仕事もない宮城にいるより東京に戻ってくることを勧めた。そうしてBさんは役所に事情を話し、そこでの生活保護を廃止して東京に戻る。

 運良く杉並区にある支援団体のシェルターが空いていたので、そこに入ることにした。そうして9月なかば、生活保護申請をしたのである。

 生活保護申請は無事に認められた。が、前述したように、所持金がない場合、他の区では一日あたり2000円程度出る一時金が、Bさんの場合、一日あたり360円しか出なかったのだ。

 それに対して「ちょっと厳しくないですか」とBさんが言ったところ、役所の人の口から出てきたのは、前述したように「こう言っちゃなんですけど、Bさん、路上生活してますよね?」という言葉。コロナで仕事を失ったBさんは確かにひと月ほど野宿をしていた。

 野宿をしていたんだから300円ちょっとで生きられるだろ? というのは確実に、誰が聞いても差別である。

 これについては同席した瀬戸さんも抗議し、結局10日で7000円が出ることに。一日700円は他区と比較して少ないと思うが、とりあえずこの額で決着したようだ。

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