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「鬼滅の刃」は興収100億突破でも映画界を救わない? “キメツノミクス”に配給会社の悲喜交々 - 「文春オンライン」編集部

「『鬼滅』が映画界の救世主というような報道も目にしますが、映画館はともかく配給会社としては逆にめちゃくちゃ厳しいですね。いまはほかの作品で何をやっても霞んでしまう」

【画像】コラボも多い「鬼滅」。群馬の鉄道文化むらには映画で人気のこの人も

 そんな風に“鬼滅旋風”に白旗を上げるのは、国内のある配給会社の社員だ。

「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の最新の興行収入が10月26日に発表され、初日から10日間の興行収入が100億円を越えたという。公開から10日間での興行収入100億円突破は、日本国内で上映された映画の中で最も速い日数となる。これまで1位だったジブリ映画の「千と千尋の神隠し」の25日での100億円突破を大幅に更新し、まさにロケットスタートを切った格好だ。


©時事通信社

 映画史に残る人気を見せている「鬼滅」だけに、本作以外の作品の配給会社は冒頭のように頭を抱えている状況なのだそうだ。

「野球で言えばヤンキースが独立リーグに落ちてきたような状態です(笑)。『鬼滅』は上映館数も回数もケタ違いに多いので、ほかの作品が入り込む余地がないんです」(前出・配給会社社員)

ファンの動き方次第で興行収入新記録の可能性もある

 巷間言われている「映画界の救世主」という状況とは少し異なるのが実情のようだが、それでも過去のメガヒット作と比べても異例と言えるスピードでの100億円突破だ。世間の話題にのぼることも多く、トータルでの興行収入ランキング1位に輝いている「千と千尋」の308億円も窺う勢いだ。

「最終的な興収ランキング1位まで伸びるかはちょうど微妙なラインですね。『千と千尋』は最後にアカデミー賞を獲ったことでの一波があったのが大きかったのですが、『鬼滅』はファンによる『興行収入1位にしよう』というムーブメントがSNSなどで巻き起こっています。そういった動きの盛り上がり次第という感じでしょうか」(同前)

国内のヒットを受けて海外展開も視野に

 さて、国内でこれだけのヒット作となった作品だけに、次に配給元が考えているのが海外マーケットへの進出である。

 配給元のアニプレックス関係者が言う。

「北米では2021年春の公開に向けて宣伝・広告の準備を進めているところです。特にアメリカでは日本のジャンプマンガの人気が年々高まっている。例えば『ドラゴンボール』などはもとが古い作品ということもあって、原作が日本の作品ということを知らないファンも増えています。ほかに現在連載中のものでも『僕のヒーローアカデミア』のような作品は、日本以上にアメリカでヒットとなっている。

 原作を読んだことは間違いなくないだろうお爺さんとかが、キャラクターのTシャツを着ている姿も目にしますし、NFLの選手がタッチダウン後のパフォーマンスで必殺技を真似たりしている。要するに、日本のアニメ作品のなかにはそれがある種の“クールなカルチャー”として根付いているものもあるんです」

 そんな“アニメ大国”アメリカで、「鬼滅」は再びのメガヒットを狙うことになる。

「前述の作品と比べると北米では『鬼滅』人気はまだ“日本のアニメ好き”というファン層が多く、一般化まではしていない感じです。ただ、2019年春からのアニメ放送で認知度は大きく上がりましたし、可能性は大きく感じる。日本では小学校で『「鬼滅」を見ていないと話についていけない』という話も聞きますが、アメリカでもそういう大きなマーケットを目指したいところです」(前出・アニプレックス関係者) 

 実は近年、アニメ・ゲーム系の作品を持つ配給元はこれまで以上に海外展開に力を入れている。そこにはビジネスモデルの転換期が関係しているのだという。

「ここのところアニメやゲームに関しても収益構造が大きく変わって来ています。ひと昔前まではDVDやブルーレイの売り上げが一番の収益の柱だったので、どうしてもコアなファン層が多い国内マーケットに注力せざるを得なかった。

 ところが最近はネットフリックスなどの配信系の会社がコンテンツの独占配信契約にかなりの金額を出してくれるようになりました。そうなれば単純に視聴者数が多い海外展開の方が、いろいろな広がりが期待できます。そういう背景もあって社としても海外事業へ力を入れるようになっているんです」(同前)

 アニメそのものだけでなく、スマートフォンのゲームアプリと連動したビジネスで収益を上げる作品も出てくるなど、世界を舞台に新たな広がりを見せているのだ。

中国での公開には意外な障害も……

 ちなみに海外のもうひとつの巨大マーケット・中国での「鬼滅」展開事情はどうなのだろうか。

「実は中国での映画公開準備には少し時間がかかっています。というのも、作品の主人公・炭治郎の耳飾りが旭日旗を連想させるということで、中国公開前にはアニメ版もすべて修正を入れているんです。映画版も同様の手直しをしなければならず、かなりの作業が必要になります。なるべく早く公開できるようにとは思っているのですが……」(同前)

 今回のメガヒットを受けて、配給元では「鬼滅ボーナス」も検討されているという。

 最強コンテンツの勢いはまだまだ止まりそうにない。

(「文春オンライン」編集部)

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