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経団連とともに自民党との蜜月関係を優先――JA会長、実は脱原発に弱腰

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実は脱原発に弱腰な萬歳章全国農業協同組合中央会会長。(撮影/横田一)

 自民党の安倍晋三総裁が、多くの国民が望む「原発ゼロ」を阻む最大の“障害物”になりつつある。総裁選後の新執行部人事で、同じ核武装論者で「核の潜在的抑止力を維持するために原発を止めるべきではない」と考える原発維持派の石破茂元防衛大臣を幹事長に起用。政調会長にも、党内有数の原発推進派で電力会社に甘いことで有名な甘利明元経済産業大臣を抜擢した。安倍総裁の兄・寛信氏が勤める三菱グループなどの原子力・軍事関連業界が大喜びするような面々で党幹部を固めたのだ。

 しかも脱原発の民意を無視する安倍総裁に対し、有力な支援団体は「次期総選挙で自民党の政権復帰と安倍首相誕生は確実」とみて、すり寄り始めている。

 一〇月一一日、安倍総裁は野田佳彦首相ら与野党幹部とともに、東京都内で開かれた全国農業協同組合中央会(JA全中)の全国大会に出席した。この大会で初めてJAグループは、将来的な脱原発を活動方針に決定。このことは事前に発表されていたのに、来賓挨拶で安倍総裁は、原発事故やエネルギー政策の食い違いについて一切触れなかった。その後に挨拶をした福島みずほ社民党党首ら野党の出席者が次々と脱原発を訴えたのとは、あまりに対照的だった。

 マイクの前に立った途端、会場から「総理!」との掛け声が飛んだ安倍総裁が熱弁をふるったのは、TPP(環太平洋戦略経済連携協定)について。「自由な貿易活動は日本にとって必要だ」としながらも、「聖域なき関税撤廃を要求されるのであれば、TPPを締結することはあり得ない」と強調した。

 すると、会場からは大きな拍手がわき起こり、TPP交渉参加への意欲を改めて示して「異議あり」とのヤジを浴びた野田首相との反応の違いを見せつけた。

 しかし、放射能汚染の被害に苦しんだ農家にとって、TPP反対も大切だが、脱原発も同じぐらい重要なはずだ。当然、安倍総裁に対し、「原発維持とは何事だ!」といったブーイングが起きても不思議ではないが、異論はまったく出なかった。これでは、JAグループは「脱原発の実現より自民党との蜜月関係構築を優先している」とみられても仕方がないだろう。

 そんな本音は、全国大会の六日前に開かれた記者会見で透けて見えた。多くのメディアではJAグループが脱原発の方針を表明したと報じられている。しかし筆者が「JAの方針と自民党の原発維持の政策は食い違っている。安倍総裁が政策を変えない限り、次期総選挙では自民党候補を応援しないのか」と聞くと、萬歳章会長からは「総選挙では脱原発について候補者への縛りはしない」という拍子抜けした回答が返ってきた。

 脱原発が本気なら選挙前に「原発ゼロに政策転換をしないと、自民党を応援しない」と迫らないとおかしい。そこで、「安倍総裁と直談判をしないのか」とも聞いたが、萬歳会長は「安倍総裁と近々、直に話し合う機会を持てる状況にはない」という弱腰の答えに終始した。TPPについては「農業が壊滅する」と特別決議をして、萬歳会長も「総選挙で争点化、支援する候補者の条件にする」と明言した。脱原発が同じ扱いにならないのは、自民党を支援したいとしか考えられない。

 一〇月九日、安倍総裁ら党幹部は日本経済団体連合会・米倉弘昌会長ら幹部との政策対話に出席し、原発ゼロの見直しで意気投合した。米倉会長も、内閣改造を終えた政権与党の民主党新執行部よりも、野党の安倍総裁との対話を先行させたのだ。そして両者は、二〇三〇年代に原発ゼロを目指す野田政権の方針について「無責任だ」と批判。ここでも安倍総裁は「原発の安全神話に立っていたことは反省しなければならないが、経済成長に必要なエネルギーについては責任ある対応が必要」として、原発維持を訴えた。

 次期総選挙は脱原発が争点になるのは確実だが、JAグループや経団連が支援する安倍総裁率いる自民党と、本気で脱原発の実現を目指す政治勢力との対決の構図になりそうだ。

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