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「老害」とは、新しい物が理解できないのではなく、新しい物を「自分が理解できない」という理由で悪く言う人間のこと - カレー沢薫

この連載をまとめた「カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~」という本がある。

今思えばすごいタイトルであり、まるでソシャゲにハマったことにより借金苦に陥り、夫と離婚し、今は「ぐだ美」という源氏名で熟女イメクラで働くA子さんの手記みたいだが、残念ながらそういう内容ではない。

簡単に言えば、中年オタクの「おちんこでたりもしたけど、推しがいるおかげで私はげんきです」という内容である。
つまりジャンルを問われたら「ジブリ」と答えても良いぐらいだ。

今その本を来年文庫化する計画がある。
内容は特に変わりなく、「この時は楽しそうでしたが、今は鍵付きの病室でこれを書いています」というような面白いあとがきも申し訳ないが、つく予定がない。

ちなみに、この本が出てからすでに約3年経っている。

この時ハマっていたFGOは未だにやり続けているし、刀剣乱舞もゲーム自体はあまりやらなくなってきたが、推しに動きがあれば戻るし、無料公開を機に、ミュージカルや舞台を鑑賞するなど、未だに好きなジャンルである。
飽きっぽい私にしては大分続いている方だ。

しかし逆に言えば3年もの間、新しくハマるようなものに出会わなかったとも言える。

今若者を中心に人気のヒプマイやツイステなどもかじってはみたし、楽しくはあったがハマると言うほどではなかった。
現在、社会現象にまでなっている鬼滅の刃も未だ未見であるが、ここまで人気だと嫉妬すら起きないので機会があれば読んでみたいと思っている。

30代後半以上の人ならもうわかっていると思うが中年の言う「機会があれば」と言うのは「来世で見る」という意味であり、永遠に見ないケースが多い。

まず、新しいものを追う体力とフットワークが落ちているのは確かなのだが、それに加え、もしかしたら新しい物を理解する感性も落ちてきているのかもしれない。

よく老が「昔の曲は良かった、今のは全部同じに聞こえる」と言うのは、テニプリの「バレンタイン・キッス ハッピー・バレキス・ザ・ベスト」を聞いてしまったからではない。それにバレキス自体は昔の曲だ。
今の曲がみんな同じなのではなく、己の耳と脳と感性が劣化したせいで、もはや新しいものを聞き分けたり、良さを理解するレベルにまで到達できなくなっているのだ。

よって三十代半ばぐらいから、新曲を聞くのを止めて逆に中二のころ聞いていた曲に返り咲きはじめるというのは良くある現象である。

確かに作家として、今流行っているものを参考にできない、理解出来ないというのは致命的であるし「ボケ防止」という観点から見ても、古い物や、慣れた物ばかり見続けるというのはあまり良くなく、出来ればちょっと無理してでも新しい物を見て刺激を得た方が良い。

しかし、ただの一オタクとして考えた時、新しい物についていけない、というのはそこまで悪い事ではない気がする。

大事なのは、感性の新旧ではなく、自分の感性をどれだけ信じられるかである。

私の友人に、我々が中学生ぐらいの時大ブレイクしていたが、当時は特にハマらなかったバンドに、三十路を過ぎて、しかもバンド自体はすでに休止している状態の時にハマった、という者がいた。

それを聞いた時、私は開口一番「何故、今更?」と言ってしまった。
もうブームは去っているのだから、同志もそこまでいないし、何より活動してないんだから、今更好きになっても仕方がないのではないか、と思ったからだ。

しかし、友人は昔のCDやライブビデオなどを集めて非常に楽しそうであった。

つまり趣味というのは、古いとかオワコンとか、世間の評価ではなく「自分が今これを良いと思っている」という己の感性を信じた方が絶対楽しいということである。

大手ジャンルに居ても時間が経てば、新しいジャンルも生まれ、そちらに流れる人間も増えて来る、しかし自分がまだそのジャンルに楽しさを感じているのだったら、他人の感性に引きずられて行くより、そこにいた方が絶対に楽しいのだ。

もちろん新しいものにチャレンジするのも良い事だが、新しい物をかじってみて「自分の口には合わない、古い物の方が美味い」となっても別にそれは悪いことではないし、感性が劣化したと嘆くことでもない。

「老害」というのは、新しい物が理解できない人間のことではなく、新しい物を「自分が理解できない」という理由で悪く言う人間のことであり、自分の理解できないことで楽しそうな人間に「BB(ブスババア)がタピオカの写真撮ってはしゃいんでんじゃねえよ」と良く分からない理屈で文句を言っている人のことである。

よって、PS5が発売されようかという今に、何故かドリキャスのソフトにハマってしまったという人は、ぜひ世間の風潮より、自分の感性を信じてシェンムーとかを楽しんでほしい。

私も、この3年、新しいものにハマれなかったことを嘆くより、未だにFGOの土方歳三が大好きで、先日の土方さんが活躍するイベントで無事死亡できたことを喜びたいと思う。

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