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交付金と消費税

ひとつめの話。地方交付税交付金について、9月分について道府県に配分するものを一部延期したのに続き、11月分については市町村に配分するものについてもさらに延期の対象に加えるとのこと(「地方交付税 市町村分も交付延期へ」NHK NewsWeb)。特例公債法案が成立していないことの影響だが、このため収入計画が狂った道府県の側では基金の取り崩しや銀行からの借り入れによってしのいでいるところ、そのために生じた金利負担と逸失運用益が、すでに8千万を超えているらしい(「交付税遅れ、地方を直撃 借金や基金崩し6千億円」asahi.com)。

上述の通り今後はこの問題が市町村にも及ぶことが予測されるところ、財政規模が小さいところではかなりの問題になる可能性があるし、財政状況が悪くて借りられないところとか出かねないのではないか。また、以前に書いた通り国立大学法人に対する運営費交付金も一部が(大学によってはかなりの部分が)延期されており、大学の体質によっては人件費まで影響が出る可能性があるのだが、皆さんご存知の通り12月には冬のボーナスがあって3ヶ月分以上の額を一挙に手配しないといけないわけであってですね

ふたつめの話。でまあこれを受けて自治体首長としてはみなさんお怒りであるところ、橋下・大阪市長も同様である点についてはごく当然。「こういうドタバタに地方全体が巻き込まれるとかは、もう勘弁してほしい」などと30日の囲み取材で発言したのは非常に理解できるところなのであるが、しかし前後に以下のように述べているあたりがちょっとよくわからない。

「地方交付税制度は廃止すべき。国と地方の役割分担の中で、税財源は分離独立させるべき。国が国民全体からお金を集めて、そして地方に配分するということは、もうね、もたないですね」(......)「消費税の地方税化、これに尽きますね」

細かい話だが、消費税率は現在一般的に5%と言われているところ、実際には国税たる消費税(4%)と地方税たる地方消費税(1%)の合計であり、後者はすでに地方自治体の財源となっている(正確には、さらに国税たる消費税の29.5%も地方交付税交付金として地方に配分される)。しかしなぜ我々がそれを意識していないかというと、第一に消費者として払う場合に意識するのは合計税率(5%)だけという事情もあるだろうが、第二に納税者(事業者)としても消費税(国税)と合わせた額をまとめて管轄の税務署(国の機関)に納める制度になっているからだろう。

問題は課税方法にある。消費税というのは消費にかかる税金であるから、本来は消費の発生した土地の自治体に(地方税分の)税金が入るのが正しい。ところが相当する金額を消費者から事業者が一旦預かってまとめて納税するところ(間接税)、事業者は自治体ごとに分かれて存在していたり会計を分割していたりするわけではない。やむを得ないので法人税などと同様、企業であれば本店の所在地(を管轄する税務署)に納税することとした。このため、たとえばトヨタの本社所在地に・全国の消費から発生した税が一括して納入されてしまうことになる。

この問題を是正するため、地方消費税は一旦その全額を国が集めた上で消費関係の統計数値に基づいて各都道府県に配分する制度になっている。都道府県はその半額をさらに内部の市町村へと分配する。要するにここにも「国が国民全体からお金を集めて、そして地方に配分する」仕組みがあるわけ。

もちろんこれは純粋に税の回収・配分を国が代行するという制度で、地方交付税交付金のように自治体間の財政力を是正する機能は持っていない。まあ一応推定できる範囲でではあるが、実際に生じている消費に応じた額の税金を配分するわけだからね。逆に言うと国がまとめて税金を徴収・配分することと、その際に財政力調整をするのは別のことなので、区別して議論する必要がある。

今回のケースでは回収・配分を国が行なっていること自体が問題で、というのは現に国の財布にカネがないのが原因だから。国立大学法人に対して約束した運営費交付金すら払えない状況なら、自治体の代わりに集めた税金だって払えないかもしれない。その意味で地方交付税交付金に固有の問題ではないので、橋下氏の主張のように消費税を地方税化しても徴収方法を変えないのであれば発生する危険があるのではないかと思われる。

もちろん徴収方法を変える気があるのかもしれず、するとしかし前述の納税地と消費地(本来の課税地)のズレという問題をどうするのかなあと思ったところ、このような報道があった。「税収格差調整分は6%=消費税の地方税化で具体案-橋下氏」(時事ドットコム)。地方交付税交付金制度を廃止し・消費税全額を地方税にするということだろうが、第一にズレの問題をどうするかはわからないし、第二に5~6%を自治体間の財政調整にあてるという話であるところ、誰がどう計算して配分するのかがよくわからない。

まあ計算については「いくつかの基準でしっかり配分」ということで、現在のように総務省の内部でいろんな基準に基づいて計算しているのだろうがなんか外からはよくわからないという制度をやめて客観的・単純な基準にするという趣旨だろう。主張としてはわかるが、やはりどこかで誰かが日本全体の税収状況や各自治体の財政力を確認して実際の配分額を決める必要があるだろうし、納税者から集めたカネをそれに基づいて移動させる必要もあるだろう。それが明らかにならないと「具体策」とは言わないんじゃないかと思ったことであった。

ごく索漠とした話をすると、結局納税先は税務署のままなのか、たとえば県税事務所なのかという話である。前者であれば国の財布を一旦は経由する以上今回と同様の問題は起き得るだろうし、後者は消費税を集めてチェックする仕組みを各都道府県に作る必要があり、かつ集めた額を全国規模で調整するという・現在は総務省がやっている仕事(に相当するもの)もどこかに残るはず。結局仕事とコストを増やすだけなんじゃないかというのが現時点での疑問である。詳細はこれから公表とのことなので、それを見ないと評価できないわけではありますが。

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