- 2020年10月27日 14:10
麻生太郎財務大臣 今度は「お金に困っている方の数は少ない」 いやいや困っている方ばかりです
麻生太郎財務大臣「お金に困っている方の数は少ない」
麻生太郎財務大臣が今度は「お金に困っている方の数は少ない」と発言した。
新型コロナ禍で困っている方たちからの相談は相次いでおり、「明日は我が身」と感じている方も多い。
共同通信の世論調査(10月19日)でも、新型コロナウイルスの感染拡大による生活不安に関しては「感じている」と「ある程度感じている」を合わせると72.9%に上った、という。
市民の大半が生活不安を感じている最中での発言である。
麻生太郎副総理兼財務相は24日、新型コロナウイルス対策で配られた一律10万円の「特別定額給付金」の多くは貯金に回り、景気浮揚効果は限定的だったとの認識を示した。
福岡市で開いた自身の政治資金パーティーで「(個人の)現金がなくなって大変だということで実施した。当然、貯金は減ると思ったらとんでもない。その分だけ貯金は増えた」と述べた。
同時に「お金に困っている方の数は少ない。ゼロではないですよ。困っておられる方もいらっしゃる。だが、現実問題として、預金、貯金は増えた」と語った。
麻生氏は、リーマン・ショック後の2009年、自身の首相在任時に実施した1人当たり1万2000円の「定額給付金」は失敗だったとして、当初、新型コロナ対策での現金給付は対象を限るべきだとの見解を示していた。
出典:麻生氏「お金困っている方少ない」10万円給付語る
庶民感覚がない財務大臣で大丈夫か
そもそも特別定額給付金である10万円は、もともと借金がある生活困窮者の場合、その返済に一瞬で消えた。
失業中や休業中の場合には、日々の生活費にも使われたことだろう。
また夏の賞与、ボーナスが減額された場合には、その穴埋めにも使われたかもしれない。
麻生氏のいうように、実際には失業や休業、収入減少という将来不安から、未だに銀行口座へ入金されたまま、寝かせている方もいるかもしれない。
麻生氏が代表を務める資金管理団体「素淮会」の最新の収支報告書(2018年分)を日刊ゲンダイがチェックしたところ、交際費などに関わる「組織活動費」の「会合」名目のうち、1回で10万円を超える支出はナント73回、金額は計約2075万円にも上った。
例えば、2月14日に東京・銀座の有名寿司店「すきやばし次郎」に約26万円、7月11日は赤坂の高級うなぎ店「重箱」に約15万円を支出。高級クラブへの数十万円単位の支出も目立つ。
過去に再三、政治資金を使った高額飲食についてメディアで批判されてきたのに改めないのは、麻生氏の金銭感覚が庶民と乖離している証左。
「10万円くらいパパッと使えよ」という感覚なのだろう。
出典:給付金に文句タラタラ麻生太郎氏「10万円超え飲食」年73回の浮世離れな金銭感覚
麻生氏のようなお金持ちは別として、多くの人は給付金が不要なのではなく、使いたくても使えない状態なのだろう。
家計への支援が目的の10万円の特別給付金。終わりの見えないコロナ禍への対応のためちょっとづつ家計に使うのが庶民。
— ひろゆき, Hiroyuki Nishimura (@hiroyuki_ni) October 24, 2020
10万円を直ぐ使い切れるのは、生活不安がない家庭。https://t.co/6flevIXbTy
まぁ、使い切る人が多かったら、「ほら、家計に使ってないじゃないか」って言うんでしょうね。
庶民感覚から乖離(かいり)が著しい政治家には生活実態がなかなか伝わりにくいものである。
増え続ける貯蓄ゼロ世帯と隠れ貧困
そもそも、日本では「お金に困っている方は少ない」のだろうか。そんなはずないだろう。
例えば、貯蓄ゼロ世帯(2人以上世帯)は、1995年は7.9%だったが、2005年は23.8%に急増し、2010年22.3%、2017年には31.2%(日本銀行「金融広報中央委員会」)となっている。
20年ほど実質賃金が上がらないだけでなく、少子高齢化に伴い、年金支給額の減少、各種税金や社会保険料負担は上がっている。
可処分所得として手元に残る生活費が恒常的に不足しても仕方がない状態だ。
昔は貯蓄がないことは珍しかったが、現在ではその状態が広く見られるようになった。
無計画な人が増えたのではない。いかに賢明な生活をしようとも、貯蓄をする余裕がない環境が広がった。
消費も大切だけど、貯金せざるをえない国民の将来不安にこたえてください。。→麻生氏「カネに困ってる人もいるけど、貯金が増えた」10万円給付の効果を疑問視 https://t.co/dYHu2iCXWQ
— 長野智子 (@nagano_t) October 26, 2020
例え、貯金額の総体が増えていたとしても、それがどこの所得階層で増えているのかが大事だし、将来不安のため、貯蓄せざるを得ない世帯も多いことだろう。
さらに、日本における相対的貧困率(2018年)は15.4%であり、子どもの貧困率も13.5%と相変わらず高く、「お金に困っている方は少ない」とはいえない。
ひとり親世帯の貧困も顕著だ。2018年はひとり親世帯の貧困率が48.1%と相変わらず改善が見られない。
高齢者の貧困も同様で、2016年の65歳以上の相対的貧困率は27%である。
公的年金制度があっても、単身高齢男性のみの世帯では36.4%、単身高齢女性のみの世帯では、56.2%の異常な貧困率である。
どの年代でも生活に苦しい人を探すことは難しいことではない。
社会保障に詳しい都留文科大学の後藤道夫名誉教授は「丸裸になるまでは自助努力に任せるのが、日本のセーフティーネットの現状だ。最後のセーフティーネットの網にかからず、福祉の手が届かない人々がたくさん存在している」と指摘する。
言わば、「隠れた貧困層」だ。
後藤氏の推計によると、世帯収入は生活保護の基準以下なのに実際には保護を受けていない人は、少なくとも2千万人を上回る。
高齢化が進めば、その数はさらに膨らむ。
出典:「隠れ貧困層」推計2千万人 生活保護が届かぬ生活
そもそも、わずか一回限り10万円の特別定額給付金について、麻生氏がゴチャゴチャいう資格などあるのだろうか。
市民生活を支える第一義的な責務は国にある。
具体的な生活保護基準で見ても、国の責務が機能しているとは言い難い実態だ。
この責務を十分に果たすことなく、隠れ貧困は2000万人だという専門家の指摘さえ、真正面から理解しようとしない。
麻生氏の目には「お金に困っている方の数は少ない」としか写っていないようだ。
日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
新型コロナ禍によって、多くの市民が「明日は我が身」だと気づいている今こそ、政治や国の役割を見直していきたいものである。
その際に麻生財務大臣がその任務に適任なのかどうか、多くの方が考えて欲しい問題だと思う。
※Yahoo!ニュースからの転載