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「正気ですか?」かつての盟友が思わず杉田水脈衆院議員を問いただした瞬間 『保守とネトウヨの近現代史』より #1 - 倉山 満

「同性愛の子どもは、普通に、正常に恋愛できる子どもに比べて自殺率が6倍高い」「実際シングルマザーはそんなに苦しい境遇にあるのでしょうか?」「女性はいくらでもうそをつけますから」……さまざまな差別的・女性蔑視的価値観で世間を騒がせる杉田水脈氏。

 国立大学を卒業後、上場企業に就職、その後公務員を経て結婚・出産を経験するなど、一見順風満帆に見えるキャリアを歩んできた彼女は、なぜ国会議員に当選した途端、極端な思想を抱くに至ったのか。

 かつては杉田の盟友としても活動していた倉山満氏による書籍『保守とネトウヨの近現代史』(扶桑社)より、彼女の問題発言の背景を紹介する。

◇◇◇

強姦も正当化した「ネトウヨ」の情緒

 当選翌年の平成30(2018)年、杉田水脈は4回の炎上騒動を起こす。

 1回目は、リベラル勢力が発信源の流行語「保育園落ちた日本死ね」に対し、杉田は「保育園に入りたい子供なんかいるのか、みんな、お母さんと一緒にいたいんだ」と反駁した。

 2回目は、「どうして反日の学者に科研費が使われるのか」と主張し、物議をかもした。

 事の是非は問わない。私は政治家杉田水脈の真意を伝える場として、『チャンネルくらら』で火消し番組を行った。それでリベラル勢力が納得などするはずがないが、とにもかくにも世間は忘れてくれた。

 ただ同じ話を、同時期に杉田が出演した、櫻井よしこ「言論テレビ」は褒めそやした。「文化人放送局」に至っては現職国会議員の出演者に酒を飲ませ、地上波ならば間違いなく放送できない暴言を吐かせるのがウリの番組である。

 杉田はサービス精神旺盛に答えた。結果、両番組での発言が問題視され、現在裁判継続中である。もちろん、『チャンネルくらら』での発言は訴訟の対象にはなっていない。


©iStock.com

 かくして、「ネトウヨ」に引きずられて炎上し続ける杉田を、私が『チャンネルくらら』を通じて火消しする構図が続いた。

 ただし、3回目のやらかしは突き放した。

“憎悪”の一心でレイプ疑惑の男性を庇う

 安倍御用言論人として名を馳せていた山口敬之が、ジャーナリストの伊藤詩織への準強姦をしでかしたとして問題となった。この事件は刑事では不起訴だったが、民事(一審)では事実が認定されている。この件に関し、杉田は山口を庇った。よりによって、イギリスのBBCのインタビューに答えてまで。

 過去2回の炎上は杉田の政治信条を尊重した私も、この件に関してだけは「正気ですか?」と問いただした。杉田の答えは、「選挙の時にお世話になったので……」と語尾を濁した。長い付き合いなので、わかる。

 いくら政権要人に近づいているとはいえ、一介のジャーナリストに過ぎない山口が、杉田の自民党公認獲得に決定的な役割を果たせるわけがない。では、杉田は何故、そこまで山口を庇うのか? 多くの可能性を考えたが、結論は一つしかない。伊藤詩織への憎悪だ。

泥酔する女性をホテルに運び込む

 裁判で認定された事実は簡明だ。ジャーナリストとして仕事を欲していた伊藤は、山口に言われるままに酒席を共にした。伊藤は意識を無くすほど、呑むこととなった。山口は泥酔する伊藤をホテルに運び込んだ。

 伊藤は「気持ち悪い」などと体調不良を訴え、実際に嘔吐した。その伊藤に対し、山口は性行為に及んだ。その際、伊藤の同意は無かった。よって、裁判所は山口の伊藤への準強姦を認定した(山口は控訴中)。

 以上は法律の問題だが、要するに山口は伊藤の同意無くして性行為に及んだ。法律用語において、相手の意識がある時に同意無くして性行為に及ぶことを強姦と呼び、相手の意識が無い時に同意無くして性行為に及ぶことを準強姦と呼ぶ。同じことなのだ。

 そして道徳の問題だが、就職相談に訪れた異性を二人っきりで酒席に誘う時点で、マトモな会社ならコンプライアンス違反になる。何より、山口は妻帯者なのだ。娘もいる。

 だが、「ネトウヨ」の論理は違う。「伊藤詩織は仕事欲しさに色仕掛けの枕営業で近づいた」「山口さんはハニートラップに引っかかった被害者だ」などと決めつける。「ネトウヨ」にとって、山口は安倍さんに近い味方、その山口を傷つける伊藤は敵なのである。

 伊藤の支援者にはリベラル系の言論人が揃ったことで、「保守」は結束しなければ! との、身内を結束させる大義名分が発生した。

杉田の姿勢に喝采をあげる“ネトウヨ”

 こうした風潮は、杉田の支持者にも蔓延する。つられて杉田はネット番組で、伊藤をおちょくったイラストを提示されて笑い転げた。迂闊では済まない。

 ところが、杉田の姿勢に「ネトウヨ」は喝采をあげた。それどころではない。「保守」言論誌では山口を弁護すべく、伊藤への人身攻撃がなされた。曰く、「伊藤は挑発的な服装、そして下着で山口を挑発した。それが枕営業の証拠だ」「行為はあったが、合意の有無を問題にするのはパヨクの陰謀だ」云々。

 ここで「強姦や準強姦に思想の左右など関係なかろう」と諭しても無意味だ。「山口は安倍さんと近い味方、伊藤は敵」以外の結論を、「ネトウヨ」は認める気はないのだから。そうした人々に囲まれて、杉田も明らかに正気を無くしていた。

 見るに見かねた私は、「杉田さん! 今のあなたは、ただのネトウヨ言論人じゃなくて自民党衆議院議員ですよね。ここで山口を庇って政治生命を無くしていいんですか?」と詰め寄った。場所は神楽坂だった。共同講演会の始まる前、控室で二人きりになれる空間なので言える会話だ。

 ここまで言えば、杉田も我に返る。以後、沈黙してくれた。

 杉田が、山口を庇った件は、「パヨク」は騒いだが一般には広まらなかったので、ほどなくして収束した。

 ただし、これが終わりではなかった。

「なぜ私が人殺しの差別者といっしょに…」杉田水脈が泣きながら電話をしてきた日 へ続く

(倉山 満)

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