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焦点:投資家見通し映す「鏡」は債券から通貨へ


[ロンドン 22日 ロイター] - 投資家の見通しを映す「鏡」の役割を、債券市場に代わって外国為替市場を担いつつある。

世界中の債券市場は、中央銀行が新型コロナウイルスのパンデミック対応により大規模な買い入れに動いている影響でボラティリティーが極端に下がり、今や何らかのシグナルを発する機能が弱まっている。

各国が積極緩和で足並みをそろえ相対的な金利差がなくなれば、為替レートの変動も小さくなりそうなものだが、投資家によると、むしろボラティリティーが高まっているのが実情だ。

本来、投資家は経済動向や重要イベントがどうなりそうかといった見通しを、債券市場を通じて示してきた。また中銀にとって、債券市場は大事な金融政策の効果の波及経路という意味を持つ。その債券市場が壊れてしまったため、通貨がその位置についたと投資家は話す。

BNPパリバのチーフ・クロス資産ストラテジスト、ロバート・マカディー氏は「顧客とは以前なら、債券市場が何を予告しているかを話し合ったものだが、最近の一部顧客とのやり取りからすると、彼らは通貨のほうに、市場トレンドを占う資産クラスとして目を向けつつある」と変化を口にした。

こうした流れを受け、ステート・ストリートが算出する指数は、ドル、中国人民元、ユーロ、ポンドなどのボラティリティーが上昇している様子を示している。

またドイツ銀行通貨ボラティリティー指数<.DBCVIX>は、7月終盤に記録した1年半ぶりの低水準から持ち直している半面、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが算出する債券ボラティリティー指数(MOVE)<.MOVE3M>はなお今年の最低圏付近にとどまったままだ。

<好対照のボラティリティー>

金利がほとんど動かなくなり、中銀の物価目標設定が緩くなっている以上、今後は外為市場がマクロ経済動向や米大統領選などの重要イベントに基づく大きな取引で、真っ先に矢面に立つことになり、通貨の振幅が拡大する場面がより普通になってくるだろう。

5280億ドルを運用するMFSインベストメント・マネジメントの機関投資家債券ポートフォリオマネジャー、オーウェン・マーフィン氏は、金利よりも外為のほうが「市場参加者の見方を反映させる上で、ずっと柔軟性がある」と指摘。自身はノルウェーの景気回復について強気姿勢のため、クローネ買い/ドル売りを「かなり活発」に手掛けているとした上で、ノルウェーの債券市場にそうした考えを織り込ませようとしても、規模が小さすぎるし、流動性も乏しく、ボラティリティーは低いと説明した。

HSBCアセット・マネジメントのシニア・債券ポートフォリオマネジャーのオリバー・ブーリンド氏も同意見のようだ。同氏はこの夏、チリペソやメキシコペソ、コロンビアペソといった中南米通貨のリスク量を、それぞれの債券市場向けよりも増やした。

政策担当者の関心も債券より通貨に移っている。例えば欧州中央銀行(ECB)は最近、ユーロ高に関する言及が増えている。背景には欧州連合(EU)欧州委員会が新型コロナからの復興基金構想を打ち出した5月18日以降、ユーロ/ドルが10%強上昇したことがある。一方、復興基金の調達が主に債券発行であるにもかかわらず、金利はほとんど変化していない。

中国人民元も、厳格な管理相場の下にありながら、投資家の米大統領選を巡る思惑によって今週27カ月ぶりの高値を付けた。そして中国の債券利回りはやはりほぼ横ばいで推移している。データプロバイダーのセンティフィによると、中国政府がパンデミックに比較的うまく対応したことも、人民元高の要因だ。

<債券投資家の参入>

通貨は1日で1-2%変動するのが当たり前で、もっと小幅な値動きに慣れた債券投資家にとって決して扱いやすくはない。

それでもバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのデータを見ると、同社のプラットフォームにおける外為取引フローと通貨変動の相関性が高まっており、債券の低ボラティリティーがより多くの債券投資家を外為市場に追いやっていることが分かる。

「平穏」な債券市場と「緊迫」した外為市場の取り合わせにより、いわゆる「キャリートレード」のパターンも変わってきている。通常なら米国債を買う海外投資家は、コストが高いため通貨リスクはヘッジしない。ところが先進国で金利がゼロ近辺に沈み、ボラティリティーが消えた中で、米国と欧州の債券を購入する日本の投資家は、通貨リスクのヘッジを積極化するようになった。ヘッジ後でも投資した債券のリターンがプラスになるからだ。

今月4-10日の週には、日本の投資家は差し引きで1兆9460億円相当の米国債を買ったことが財務省のデータで判明した。これは週間ベースで今年2番目の規模だ。

(Tommy Wilkes記者、Saikat Chatterjee記者)

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