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製造王国としての中国は破綻した - 相田和宏

基幹産業の「世界の製造国」としての中国は、完全に破綻した。いわゆる「作った製品を輸出して稼ぐ」という日本型モデルの産業は、今後衰亡する。売り先の欧米市場が悪化して、稼ぐ場所がなくなったのだ。

中国企業は生き残りを模索する以前に、自社の半数以上を廃棄しないとならない。産業としては、鉄鋼、製紙、造船、重工業、機械、家電等、さらに太陽光パネルも含む。石油化学も増強を続けているので、数年後に同じ運命をたどる。

戦後日本が「輸出加工立国」として、海外輸出で稼ぎ、貿易収支の大幅な黒字を実現した。これは85年9月のプラザ合意による円高不況まで続いた。

80年代末、円高不況に陥った政府が、内需拡大に注力したため、過去の輸出で貯めこんだ富が、国内市場に還流して、バブル経済を引き起こした。その 破綻後、日本経済は暗黒の20年に入った。現在も暗黒状態は進行中である。内需は拡大しなかったのだ。現在もデフレと人口減によって、市場も給与も下がり 続けている。

成功した日本型の貿易収益モデルを、まず真似たのが韓国。外資による投資を呼び込む形の改良モデルでは、タイ、マレーシアがある。日本を真似した各国は、90年代に大幅に経済成長をとげ、自国で巨大な企業グループを育成することに成功した。

日本、韓国やアジア諸国のモデルを真似したのが中国である。92年から改革開放を進めた。ただ韓国同様に外資規制をして、国内産業を保護した。2000年以降は、主に先進国の技術を導入(不正コピーがほとんど)して、中国内の企業を巨大化させていった。

90年代の中国は技術も資本もなく、あるのは「人」と「土地」だけだった。その後、外資の製造業を呼び込むために日欧米企業を競わせ、有利な条件で最新技術を中国企業に出させていった。

日本企業は、当初は中国を警戒していて、香港や台湾の企業と組みながら、中国市場に出て行ったので、欧米や韓国企業に遅れを取る事になった。また新幹線技術やリニアモーターカー技術は盗まれている。

中国の2000年代は、日韓折衷型の貿易モデルがとても機能して、世界の製造工場となった中国は富を蓄えていった。だが日本を研究していた中国は、外圧による「日本のプラザ合意」を拒否し続け、中国元の為替を操作しながら、現在まで来てしまった。

実力以上に安い通貨中国元によって、さらに輸出貿易を続け、安い製品を世界各国に売っていった結果、デフレを世界輸出している。

また貿易収支の黒字を、米国債やEU各国の国債購入に充てた。更に国内の製造業への融資を続けて、更なる製造設備の増強を目指して投資を続けた。

結果として、製造国として中国一人勝ちを実現したのだが、固定した為替や政治体制、企業システムでは、貧富の格差が広がってしまった。日韓ように富の分配ができなかったのだ。

この結果が多くの惨状を引き起こしている。

不動産投資であまったカネを各省が各々の地元企業に投資するので、製鉄、製紙、太陽光パネル、家電が中央政府の統制の利かないところで増強するので、製造設備で世界規模の6割強の設備を抱えることになってしまった。

国内市場の数倍の設備を持つため、輸出先がなくなればすぐに企業が維持できなくなる。現状の中国の減速の主な理由は、作ったモノを売るところがないのである。

太陽光パネルメーカーは、国内市場依存度が数%しかない。ほとんどが欧州への輸出と米国向けである。米国では、アンチダンピングになり、販売を止められ、EUも審査中であるため、販売先の9割以上を失う可能性がある。

中国のこの産業では1000社、40万人が働いている。今は倒産の危機に瀕して、地方政府が太陽光パネルメーカーにつなぎ融資をしている。企業も政府丸抱えの様相を呈している。

製鉄も世界中に安売りしているが、世界経済の減速で需要自体がないので売れない。

日本は「輸出加工立国」と言っても、国内市場も大きく、製鉄の場合、新日鐵の国内販売率は7割であった。韓国は輸出立国であるが、国の規模が小さいので、中国のように世界の6割の製造CAPAをもつ企業は存在しない。

韓国企業も投資する際、市場分析がいい加減。売上と収益に「気合」と「やる気」が入るため、無茶な投資をたくさんしてきた。そして潰れると政府が救 済して、立て直してから、入札で売却する。造船や半導体、ステンレスや特殊鋼メーカーがこの恩典を受け、いまも名前を変えて運営されている。

この韓国型救済方法を現在の中国が真似ると、本来は倒産して設備が廃棄される企業が存続して、将来復活して「ゾンビ化」するため、世界に悪影響を及ぼす。

自国の内需を拡大できない上に、政府の融資で存続させている企業を、国ぐるみの為替操作で、製品を安売り輸出させるなど、中国の行為は国際ルール違反である。このような状態を続けることはできない。

中国は為替操作をやめるか、倒産しそうな企業は破綻させるか、生産設備の半分以上を各企業に廃棄させるしか生き残りの方法はない。

5年前に行った製鉄企業の合併等、全く設備に手をつけなかったので、設備削減の効果が全くなかった。

無計画の投資の典型的な例である中国製造業は、倒産ラッシュを迎えてもらうしかない。このままの設備を抱えていても、売り先の欧米市場は、あと数年は復活しない。

輸出で稼ぐという古いスタイルは、もう世界では通用しないのである。

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