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福島に寄り添うとはなにか(1/2)

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             大野更紗氏

大野 東日本大震災から16ヶ月がたちました。ニュースでは日々、原発問題がホットな話題として扱われていますが、実際にその原発がある福島で暮らしている人たちが、どのように暮らし、いまなにを考えているのかは、あまり知られていないように思います。

第3部のテーマは「福島に寄り添うとはなにか」です。今日は、様々な分野の方にご登壇いただき、この16ヶ月間それぞれがなにをされてきたのか、なにができなかったのか、今後なにを目指していくのかをお話いただきます。福島に寄り添うことについて、改めて考えることができればと思います。

「論点整理」による相対的な弱者の弱者化

大野 まずは皆さんの簡単な紹介をさせていただきます。最初に開沼博さんです。開沼さんは2011年6月に『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』を出版されました。開沼さんは現在も毎週、福島県に通われて研究を続けていますね。

開沼 まず今日までにどんなことが行われてきたのかをお話させていただこうと思います。この16ヶ月間進んできたことを一言で言い表すならば、それは「論点整理」です。これは複雑な問題を整理し、よりよい社会を繋げていくための必然的な流れである一方で、より複雑化している現実を見過ごしてしまうという可能性もあります。

一例を出しましょう。福島市に1時間程度で通える場所にある米沢市は、福島市に比べて放射線量が少ないため、米沢市に移住して福島市に通勤されている方がいます。このとき、例えば母子避難をされた方の場合、いままでは1つの家で暮らしていましたが、新しく家を借りることで賃貸料や光熱費、生活費が余計にかかることになります。すると経済的な負担が大きくなるため、お母さんや若い人はバイトやパートを始めて、生活基盤を堅固なものにしようとします。一見すると、ここにはなんら問題がないように思えます。しかしもとから米沢市に住んでいた方からすると、震災前から、衰退しつつある町のなかでなんとか守ってきた雇用が、避難してきた人たちに取られてしまっているわけです。

また震災以降、「今後は中絶や生まれてくる子の障害が増えるだろう」「大学入学者が減るだろう」という言説がよく聞かれましたが、実際は現時点において、中絶や障害において統計的に有意な増加は見られませんし、福島大学にいたっては入学者に微増が見られます。具体的な数値データが集まるに従って、徐々に実際になにが起こってきたのかがわかりつつある一方で、いまでも実情とは異なる言説が飛び交ってしまっているのが現状です。福島の状況も情報も見ようとせず、わけ知り顔で「福島は危険だ。福島で子育てする親は人殺し同然だ」と話す人がいる。センセーショナルに危険を煽れば、多くの人の注目を集められる状況が続くなかで、過剰な「言い切り」の言説が広まっている。そして、それは、いくら「善意」から出ていようと、少なからぬ被災者にとってハラスメントでしかない。

そもそも社会的、経済的に避難できない人もいる。母子避難の場合なら、避難した家庭のなかで、すぐに働ける人がいるか、家族に高齢者がいないかなど、様々な条件の差によって、その障壁の高さは極めて多様に変化する。課題は極めて個別的・重層的です。そのようなグラデーションがある現実がある一方で、あたかも課題が一枚岩であるかのように、つまり例えば「福島の問題=避難支援が重要」という、重層的に存在する課題の全体から見たら一部の問題しか解決できないところに、「論点整理」されてしまう。実情とは異なる言説によって、新たに生まれている問題が見過ごされ、相対的な弱者の弱者化が進んでしまっている。

中央の議論は、どうしても原発や放射線の話に集約されがちです。原発の問題も重要ですが、福島から県外に避難している人は県民人口全体の3~4%、多くの人はいまだに福島で暮らしています。原発問題のほかに、被災地ではなにが問題になっていることをしっかりと捉えることこそ必要でしょう。

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             開沼博氏 

福島と東京のギャップを埋める

大野 次に、医療ジャーナリストの藍原寛子さんのご紹介をさせていただきます。

藍原さんはもともと、福島県の地方紙である「福島民友新聞」の記者をされていらっしゃいました。その後、フリーのジャーナリストとして、海外、東京、福島と非常に広範囲を行き来しながら活動をされていらっしゃいます。今日は、震災後の福島に関するジャーナリズムの動き、特に、原発震災という未曾有の出来事に対して、ジャーナリズムの役割がこの間どのように変容してきたのかについて、お話いただければと思っています。

藍原 医療ジャーナリストをしております。藍原です。

被災時、私は国会議員の秘書として永田町にいました。そのときにはすでに、ジャーナリストに戻るために秘書を辞めることが決まっていました。震災以降、政府のあまりの危機管理のなさに絶望し、一刻もはやく辞めたいと思い、暇をもらって現場を歩き始めました。

枝野官房長官(当時)が記者会見で、浪江町や双葉町を「なみえちょう」「ふたばちょう」と読み上げたり、津波がいままさに押し寄せている様子をテレビのアナウンサーが「いわき港に津波が到来しています」と話しているのを見たとき、今後リアリティーの欠けた情報が広がっていくのだろうという予感を抱きました。浪江町、双葉町は「なみえまち」「ふたばまち」と読みます。そしていわき港はありません。小名浜港、あるいは久之浜港の間違いでしょう。

東京では現在、毎週反原発デモが行われています。しかし福島でそのような動きはほとんどみられません。あるミニコミ誌の編集長は「東京の人たちは原発に関するものを読むが、福島では食品汚染や育児に関するものが読まれている」と言っていました。私は、両方のテーマを取り扱いながら、福島と東京のギャップを埋めていきたいと思っています。

大野 どのようなギャップがあるのか、そしてどのようにギャップを埋めていくのか、お話いただければと思います。

さて今日は、事前の告知にはありませんでしたが、スペシャルゲストとして遠方からもうお二人をお呼びしております。

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            藍原寛子氏

ボランティアコーディネート

大野 一人目は龍谷大学からおいでいただきました、筒井のり子さんです。日本のNPOやボランティア団体が、実際に災害支援の現場で本格的な活動を展開するようになったのは、1995年の阪神淡路大震災が契機であると言われています。筒井さんは、1980年代の非常に早い時期から、日本のNPOやボランティア団体の創成期に携わってきていらっしゃった方です。

筒井 龍谷大学で教員をしております筒井です。同時に、NPO法人日本ボランティアコーディネーター協会の代表理事もしております。

昨年の4月20日に、京都から夜行バスで初めて福島県に入りました。明け方の会津の雪景色や福島市内をピンク色に染める桜の息を飲むような美しさと、悲惨な状況とのギャップ。そしてそこに住む人たちと話をして、うまく言うことができませんが、研究者といった肩書を取っ払って、絶対にこの土地に関わり続けていこうと思いました。それから金曜日の授業が終わってから出発し日曜日の最終の新幹線で帰るといったかたちで、20数回、被災地に足を運んでいます。

皆さんもおっしゃられているように、福島に関して原発のニュースが流れることはあっても、避難所の様子やボランティア活動についての報道はあまりされませんでした。とても悔しい思いをしていたときに、福島県内から発信していこうという声があがって。福島県社会福祉協議会と地元のNPO法人、そして全国組織である日本ボランティアコーディネーター協会で「福島県災害ボランティアセンター通信」を始めました。4月下旬から7月までは毎週、その後今年の3月19日まで2週間に1回、毎号2万部発行し続けました。内容はてんこ盛りで、県内各地の災害ボランティアセンター紹介、ボランティアへ伝えたいこと、被災された方向けに仮設住宅の情報や精神科医による寄稿など、多種多様なものを掲載していました。

大野 筒井さんには、ボランティアコーディネーターが支援の現場で実際なにをつないでいるのか、また、福島県でのボランティア活動の現状と課題についてお話しいただければと思います。

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