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PC遠隔操作事件 家裁の異例の保護観察取り消し処分にあたり、お父さんがコメントを発表されました

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(父と息子の愛を描いた名作映画「チャンプ」より)

 他人のパソコンにウィルスを送り込み、遠隔操作で自由に脅迫状を送ってしまうという犯罪が多数起こった事件で、横浜市のホームページに市内の小学校への襲撃予告を書き込んだなどとして逮捕され、保護観察処分となった、19歳の男子大学生の方について、神奈川県警と横浜地検は、この大学生の方やご家族に謝罪し、地検がこれまでに明らかになった証拠を家庭裁判所に提出して、保護観察処分を取り消すよう求めていました。

 これを受け、静岡家裁浜松支部は、事件とは無関係だったとして、2012年10月30日、処分を取り消す異例の決定をしました。家裁の決定が抗告審で取り消されるのではなく、家裁自身が取り消すだなんて、前代未聞です。

 しかし、自らの決定が間違っていたから取り消すのに、裁判所から謝罪の言葉はありませんでした。

 そして、その少年のお父さんが、家裁の保護観察処分取り消しを受け、以下のコメントを発表なさいました。

 マスコミの皆様へ

  今回の誤認逮捕の件につきまして、一言述べさせていただきます。大学生の息子は、学業半ばにして深夜突然、連行・逮捕されました。当人の強い否認にもかか わらず、十分なパソコンデータの解析も行われないまま取り調べが続きました。警察・検察双方からの不当な圧力を受け、理不尽な質問で繰り返し問い詰められ続けました。勾留期限が迫り、また家族への配慮と自分の将来を考え、絶望の中で事実を曲げ「自分がやった」という自供をし、保護観察処分となりました。無実である証拠が出てくることを切望し待ち続けながらも、諦めざるを得なかった息子の心情を思うと、やりきれないものがあります。そして、真実を封印しなが ら生きていくことを選んだ息子の胸中を察すると、親としては、断腸の思いです。

 こうして警察・検察が誤認逮捕を認め、家庭裁判所が保護処分取り消しを行うという結果にはなりましたが、逮捕されてからの息子本人と家族の苦悩と心の痛みは決して癒えることはありません。最も悲しいのは、親が息子の無実を疑ってしまったことです。

 この件は、警察の構造的な問題、体質的な問題であり、本来国民を守るべき警察が、捜査の怠慢によって無実の国民、しかも少年を誤認逮捕し、冤罪に至らしめるという最もあってはならない事態です。真犯人の方が遙かに警察当局よりも優れたコンピュータの技量をもっているのを指をくわえて見ている情けな い状況です。このようなことが二度と起きないように徹底的な検証と意識改革をするべきだと思います。

 保護観察処分取り消しとなった息子には、心と体をゆっくりと休め、落ち着いた生活をさせたいと思います。マスコミの皆さんには、過日のような加熱した取材を厳に謹んでいただきたいと思いま す。この書面が私と息子、および家族の今回の件に関するすべての意見です。今後の取材にはいかなる形でも一切応じませんので悪しからずお願いいたします。

   平成24年10月30日   少年の父親

 同じ人の親として、胸が詰まるような思いです。

「勾留期限が迫り、また家族への配慮と自分の将来を考え、絶望の中で事実を曲げ「自分がやった」という自供をし、保護観察処分となりました。」

「無実である証拠が出てくることを切望し待ち続けながらも、諦めざるを得なかった息子の心情を思うと、やりきれないものがあります。そして、真実を封印しながら生きていくことを選んだ息子の胸中を察すると、親としては、断腸の思いです。」

「最も悲しいのは、親が息子の無実を疑ってしまったことです。」

 なんという痛切な心情の吐露でしょうか。

 しかし、私は言いたいです。疑ってしまったのは親の罪ではないと。

 IPアドレスが一致したと言われれば、素人はまるで指紋やDNAが一致したかのように思います。現に捜査のプロであるはずの警察・検察もそれで息子さんを完全にクロだと決めつけたのです。

 そのような予断を抱いた結果、警察・検察は息子さんに自白を強要しました。お父さんは警察からお聞きになったでしょう。息子さんは、「楽しそうな小学生を見て、自分にない生き生きしたものを感じ、困らせてやろうと思った」と自白していますよと。だから犯人に間違いないですよと。

PC遠隔操作なりすましウィルス事件は自白強要による冤罪が問題だ

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 無実の人間が自白したり、動機を供述したりするとは、誰も思いません。警察が自白をでっち上げたかもしれないなどと想像するのは一般人には無理というものです。

 たとえ、我が子であっても。

 捜査機関がでっちあげた自白の内容は酷すぎます。署名させられたご本人も内容を聞かされたご家族もどれだけ傷つかれたでしょうか。

 今回の事件では、無実の方が4人逮捕され、1人は大阪地検によって起訴までされました。全員が身に覚えのあるはずもなく、犯行を否認されたのですが、その中のお2人はすぐに捜査機関に犯行を認める供述をさせられました。今、私も少年のちかん冤罪事件に取り組んでいるのですが、警察にとってやってもいない人から自白を取るなんて自由自在です。これまでの冤罪事件もほとんど自白を取られてしまっています。まして、相手が少年ならなおさらです。

 警察・検察、そして息子さんを保護観察=「有罪」にしてしまった家庭裁判所は、お父さんが言われるように今回の過ちを徹底検証すべきです。

 いや、やるべきことは何度も何度も指摘されているのです。見込み捜査と自白偏重をやめよ、取り調べの過程を全可視化(全部録音録画)せよと。

 全面可視化をしないのは、捜査機関の体面保持のためでしかありません。今回の事件では、検察が、否認すると身柄拘束期間が長くかかると息子さんを脅しました。そういうことが明るみに出ないように可視化に抵抗しているのが警察と検察です。この息子さんとご家族のような国民の人権を踏みにじって、自分たちの利益だけを考えているのです。

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 もちろん、今回の事件で最も許せないのは、自己の快楽のために脅迫して人を恐怖に陥れ、犯人とされた方々とそのご家族を苦しみのどん底に落とした真犯人です。絶対に許せません。徹底的に捜査して、逮捕して裁判にかけ、厳罰に処すべきです。

 ですが、その真犯人の手にまんまと乗って冤罪事件にして自白をでっち上げた捜査機関と裁判所、捜査機関の垂れ流す情報のままに報道したマスメディアも「共犯者」です。

 今回の事件で疑われ、取り返しのつかない被害を受けた方々へのせめてもの罪滅ぼしとして、捜査機関は絶対に取り調べの全面可視化に踏み出さねばなりません。それが本当の謝罪の気持ちを表すということです。また、警察・検察をそう追い詰めていくことがマスコミの最低限度の責任です。

 そして、この息子さんとお父さんとご家族に、他の巻き込まれた方々に、平安と安らぎが再び訪れますように、心からお祈り申し上げます。必ず、前以上に温かい家族になれると信じています。

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